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3.貴族と平民の待遇差

 

「お~い、キヨドォ~ルとマ~ティン~。ここで騒ぎを起こすなよぉ~? めんどクセ~からなぁ~」


 気付けば列は掃け、報告の順番がきていた。

 声の主は交通整理隊の隊長の声。50歳を超えているが精悍な顔つき。だけど、ボサボサの頭髪と無精髭がそれを台無しにしている。

 椅子にだらしなく背を預け事務机に脚を投げ出した体勢で、鞘におさめた剣の(つば)で自分の肩をトントンと叩きながら気怠(けだる)げに声を発する。

 空いてる手の小指で耳をほじり、カスを確認してから吹き散らしている辺り、いつも通り本当に怠いのだろう……。


「チッ! 場所が悪かったか……。まぁいい。次は許さんからな!」


 キヨドールが毒突くと、俺をポルトの方に突き飛ばして自分の班員を連れて隊長へ報告に行く。

 さらっと割り込みしやがった……。


「あのクズがマーちゃんをアタシに突き飛ばしてきたのは、神様がアタシとマーちゃんが結ばれるべきとお示し下さったに違いないわぁっ!」


 ポルトが自分の世界に入り込んで、勝手に頬を赤く染めている。

 俺を掴む手にも力が入って……苦しい!


「なに言ってんのよアンタ! そんな訳ないじゃないっ! マーちゃんに相応しいのはあたしよっ!」


 今度はサンドが俺の両頬を手で挟んで、ポルトから俺を引き離そうとする。

 首! 首が抜けるって! 


「ぐ、ぐるじい……」


「やめないか先輩方! 班長は我らみんなの物だ」

「んっ!」

「次はわたしの番だ!」

「んっ! んっ!」


 エヴァとベルジャナも身を乗り出して加わろうとしてくる。――っなんで?

 結局俺は班員4人に揉みくちゃにされそうになるが、そこに救いの手? が。


「お~い、最後の19班ん~。早く報告しろぉ~? めんどクセェな~」



「第19班班長マーティンです。本日午後のギルド街通りの交通整理、滞りなく終えたことを報告致します!」

「はい~。ご苦労さ~ん。明日は午前現場の午後訓練だ」


 俺が隊長の机の前に直立し、班員4人がその後ろに横並びで直立して報告をする。

 隊長は、いつも通りサラリと返事と業務連絡をするだけ。――と言っても、隊長とは週に一度くらいしか顔を合わせる機会は無く、普段は嫌味な副隊長へ報告することがほとんどだ。


 交通整理隊の隊長・副隊長は貴族。

 それに第1~第8までの班は、班長だけでなく班員も全員が貴族家の人間。

 俺達より格段に給料が高く、勤務に就く日数も少ない。

 第1~第3班に至っては現場に出ることを免除され、勤務日の大半は訓練場で上位の隊や騎士の異動試験に備えた訓練だけしている。非常時には「邪魔しやがって」的な顔をしながら援護出動してくる。



 隊長・副隊長という役職には貴族しか就けず、役職とは別の『階級』は衛視長。

 “貴族の”班長は衛視副長。

 班員でもベテランは衛視副長で、その他は衛視班長。

 ややこしいが、役職の班長と階級の『衛視班長』は別物。平民の俺は班長でも階級は衛視班長の下、最下級の『衛視』のままだ。

 平民は、どうやっても『衛視』以上の階級には成れないし、貴族家の人間は『衛視班長』以下の階級には成らない。


 それでも国に仕える公務員。給料は商会勤めよりも高いし安定しているから、待遇差はあるが“良い仕事”なのもまた事実だ。


「さっ! 装備を返して、食堂で飯食って帰るぞ?」

「「アタシ達はお家でご飯食べまぁ~す!」」

「お伴致します。班長!」

「ん!」


お読み頂きありがとうございます。

短編小説ですが、話数があります。

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