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最後のゴブリン

作者: ▲■▲



「ゴブリンを見るのは初めてか?」


「はい。剥製は見たことありますが、実物は初めてです。確か、この子が世界最後のゴブリンなんですよね?」


 新人飼育員が檻の中にいるゴブリンをしげしげと眺めている。それに「この子って呼べるほど、可愛いもんじゃないぞ」と言っておく。


「ゴブリンは危険な存在だ。お前みたいな若いエルフは知らんだろうが、ゴブリンはかつてこの星を滅ぼしかけた存在なんだぞ」


 新人は「当時の事は知らなくても、知ってる事もありますよ」と言って苦笑している。


「ゴブリン達はおぞましい環境破壊兵器を多数作って、ゴブリン同士で殺し合っていたんですよね? 見た目は……毛の少なくなった猿みたいなのに驚異的というか、なんというか……」


「ただの愚かな存在だよ。下等生物のくせに、自分達を人族の一種だと騙っていたんだ」


 ゴブリン達は文明を築いていたが、人族らしい品性がない。


 異種族相手でも発情する節操のない存在だった。神に遣わされた我々エルフがこの世界に来る以前に、ゴブリン達が残した文献には、エルフとゴブリンが愛を育んで淫らな行為をするというモノまであったほどだ。……思い返しただけで吐き気がする。


「ゴブリンの性欲は底無しだ。頭もおかしい。機械と竜が性行為をする絵を描いていた者もいるほどだ」


「それは性行為として成立しないのでは……?」


 あるんだから仕方ないだろう。多くの者がゴブリンの下劣な文明は全て滅却すべきだと言ったが……結局はそうならなかった。後世にゴブリンのおぞましさを伝えるため、一部は博物館に納められているはずだ。


 ウチの動物園でもその一環とし、ゴブリンを飼育している。


「お前は俺と共に、このゴブリンの飼育も担当する。覚悟しとけ」


「最後の1匹を世話できるなんて光栄です」


「バカ。どこが光栄なものか」


 仕事だから仕方なくやっているが、名誉なんてない仕事だ。言葉を喋る糞を飼育しているようなものだ。


「ところで、この子はなんて名前なんですか?」


「ゴブリンだ」


「他の動物みたいに名付けないんですか?」


「最後の1匹なんだ、必要ないだろ。自分では、やまだたろうとか名乗っているけどな」


「ふーん……変な名前ですね」


「だな」


 ゴブリンのセンスはよくわからん。





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