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恋人じゃなくて妹です!  作者: にとろ


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「妹と食事に行く」

「お兄ちゃん……その……」


 茜が何か言いにくそうに俺に話しかけてきた。


「なんだ?」


「今日はしんどいので外食で済ませたいのですが……構いませんか?」


「なんだそんなことか。外食でも問題無いし俺が作ってもいいぞ?」


「いえ、お兄ちゃんの料理よりは外食の方が安心です」


 なんだか地味に失礼なことを言われている。


「挽き肉を買ってきて皿に移してレンジにかけてそれをおかずだと言い張るのはどう考えても無茶だと思うのですが?」


「火を通すのに一番手軽で買ってきたものを皿に移してレンジに入れるだけで済むんだぞ? まったくもって合理的なこと極まりないじゃないか」


「ファミレスにしましょう! お兄ちゃんのご飯はワイルドすぎます!」


 そうか? 平均的な料理だと思うんだが……


「しんどいときは肉を食べたいだろう? 俺がしっかり肉料理を……」


 茜は渋い顔をして言う。


「お兄ちゃん……ちなみにどんなものを作るつもりですか?」


「冷しゃぶだな。アレは肉を買ってきてレンジに入れて冷やすだけで作れる。しかもそれで満足いくまで肉が取れるというスタミナのつく料理だ」


 茜は首を振った。


「素直に外食しましょうね? 食事には文化的な側面があるんですよ? 肉を買ってきて加熱して完成とはいかないんですよ」


 どうやら俺の料理についてこられないらしい。文明の利器を使っているのだからむしろ文化的な料理だと思うのだが、肉を出してそれだけというのは不合格のようだ。


「じゃあノンフライヤーとかオーブンで焼けばいいのか?」


 茜は心底呆れたように俺の顔を見る。


「意地でも手間のかからない方法を提案するのはやめてください。加熱方法の問題じゃないんですよ、米とお肉だけで料理と言い張ることが問題だと言っているんです」


 どうやら人間の技術というのはまだまだ気軽に料理と満足させるものを作ることが出来ないらしい。というか肉があれば満足できる俺は文化的な料理を食べていなかったのだろうか?


 茜が妹になる前に学校に持って行った弁当を思い出すとご飯に梅干しを載せて肉を焼いたものを半分詰めたものや、ご飯とソーセージを一袋ギチギチに詰めたものを食べていた。どうやらそれらは料理としては不満の残るもののようだ。俺は美味しさを突き詰めた料理だと思っていたんだがな……


「じゃあ食べに行きましょうか。『ロイヤルテンプル』でいいですか?」


「ああ、茜が構わないなら俺に異論は無いよ」


 こうして俺たちは自転車に乗り十分くらいのところにあるファミレスに向かった。スマホで専用アプリを見るとドリンクバーのクーポンが来ていたので使わせてもらうことにしよう。


「いらっしゃいませ! 二名様ですか?」


「はい」


「お席ご自由にどうぞ」


 俺たちは窓際の席に座った。茜は窓から見える夕焼けを見ながらいつになく真剣な目をしていた。


「どうした、メニューで悩んでるのか?」


「いえ、違いますね。お兄ちゃんといつまでこうしていられるのかなって夕焼けを見ていたら考えちゃいまして」


 いつになく悲しげな目をしているのはそんなくだらない理由だったのか。俺の答えは初めから決まっているし、そもそも兄妹の関係なんて無くなることは絶対に無いんだ。


「とりあえず食事にしよう。俺はサイコロステーキで、茜は何にする」


「私はハンバーグですかね」


 店員さんを呼んで二人分の食事を注文しておいた。茜は俺に話しかけることもせず窓の外を見ている。


「茜、深く気にしてもしょうがないぞ。どうしようもないことは確かにあるがな、たいていのことは本気になればなんとかなるもんだ」


「私とお兄ちゃんもですか?」


「ああ、国が出来てから何回法律が消えたり出来たりした? ルールでさえもそういう風に案外動くものなんだよ。何を悩んでいるのかは知らないがな、時間が解決する問題だって多いんだぞ」


 俺がそう言うと茜はようやくいつも通りに笑った。


「お兄ちゃんは案外メンタルが強いんですね?」


「お前ほどじゃないさ」


 そう言って笑い合っているところへ夕食が運ばれてきた。俺たちはそれを食べてからドリンクバーで席を確保しつつ茜とお話をした。そして、そろそろ会計というところで茜が俺に尋ねてきた。


「お兄ちゃん、明日の日曜日は空いてますか?」


「ああ、日曜なんて暇なのが当然だろ?」


「では、私と遊園地でデートしてくれませんか?」


「ああ、構わない。デートと呼んでいいのかは分からないがそのくらいは余裕だよ」


 茜は夕焼けよりも顔を赤くしながら席を立った。俺と一緒に会計を済ませて、帰宅となったのだが、何故か茜は機嫌が悪いという感じでもないのにフラフラと歩いていた。


 危なっかしいので俺は茜の手を取って隣に並んで帰宅した。


 その日、茜は帰宅するなり早々シャワーを浴びて僅かな時間でパジャマに着替え自室に帰ってしまった。機嫌が悪いというわけでもないのに妙な話だ。


 俺はどこか釈然としない物があるものの、急に入った明日の予定のためにスマホにアラームをセットして早めに寝てしまった。

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