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恋人じゃなくて妹です!  作者: にとろ


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44/52

「妹と円盤」

「おにーちゃん! 一緒に芸術作品を見ましょう!」


 茜が自宅で突然芸術鑑賞に目覚めたらしい。ロクなものでないであろう事は予想が付く。


「何を見るんだ? 宗教画か?」


「これです!」


 妹はバーンと箱を掲げる。どこからどう見ても円盤のBoxであり、タイトルには『妹だったらお兄ちゃんと添い遂げても普通だよね?』と書かれている。そしてリビングにはプレーヤーが置いてあり、大型テレビもちゃんとある。


「その作品に芸術要素あるか?」


「妹を扱ったものは等しく芸術作品なのですよ!」


「ちなみにその箱何話入ってるんだ?」


「人気アニメですからね! 二クール二四話がフルに入ってますよ!」


「確かに明日は休みだから時間はあるけどさあ……一日で見るようなものじゃなくないか?」


 一話三〇分としてもおよそ半日がノンストップでかかる計算だ。茜は暇なのかな?


 俺はさすがにそこまで贅沢な時間の使い方はしたくない。素直に数日かけて鑑賞するのではダメなのだろうか……


「お兄ちゃん、作品との出会いは一期一会なんですよ! 今日見ることが出来るからといって明日もそれができるとは限らないんですよ?」


「分かったよ……耐久視聴するなら飲み物を持ってくる」


 現在午後五時、普通に見ると徹夜コースだ。茜は円盤をプレーヤーにセットしている。本当に全編視聴マラソンをする気のようだ。


 冷蔵庫の中にはコーラとサイダーがある。炭酸が入っていれば眠気覚ましにもなるしこれは眠くなったときに飲むことにしよう。紅茶の入ったペットボトルとグラス二つを用意して茜のところに戻る。コーヒーかエナドリでカフェインを摂取しないと起きていられないかもしれない、残念ながらどちらもストックは切れていた。


「お兄ちゃん! こっちの準備はできてますよ!」


「今行く!」


 俺はテレビのところへ飲み物を持ってき、二杯グラスに入れる。茜の方は再生ボタンを押すだけのところで準備完了しているようだ。


 茜の隣に座ってテレビを見る。美少女がきわどいポーズをして微笑んでいる。


 紅茶を受け取った茜はリモコンを手に取り再生ボタンを押した。


 一話アバンが始まる、主人公の紹介と妹が三人いるという紹介をされる。どうやらこのアニメはヒロインが全部妹しかいないらしい。


「お兄ちゃんは誰が好みですか? 私は王道ヒロインの桜ちゃんが好きなんですけど」


 そもそも実妹ヒロインが王道ではないような気がするのだが……


「俺は黄色の子かな」


「むぅ……やはりおっぱいですか……」


「人を勝手に巨乳フェチにするんじゃない! ただ性格がいいから推したいだけだ」


 いや、実際そのキャラの胸は大変揺れるくらいには大きいのだが……しかしけなげキャラと言うのはそそる物がある。


「お兄ちゃん……その……いえ、三〇分後に分かることなので言わないでおきましょう……」


 茜が何やら意味深なことをつぶやいてアニメはどんどん進んでいく。突然の災害、そして黄色の子は紫の子を助けて死んだ。予想外のハードな展開だがリアタイで見ていた人はどんな感想を抱いたのだろうか?


「ぐずっ……やはり妹が死ぬというのは悲しいものですねえ……」


 人が死ぬのは悲しいものだと思うが妹限定にするのは主語が小さくないだろうか?


「なんだか話が重くないか? もっとキャッキャしているような話を想像したんだが……」


「そこがいいのではないですか! 登場キャラが抱えた心の闇とか大好物ですよ!」


「結構な趣味だな」


 可哀想なのは見ていて辛いのでできれば日常の話を見たい。物語は佳境に入り、皆が兄に告白をして巨悪と戦っていった。傷つきながらも最後は死んでしまった仲間の力を借りてラスボスを撃破した。


 正直に言おう。とてもいい話だったと思う。最後のパンチは感動的なものがあった。


 そして窓の外を見るとくらくなっていたはずの窓の外にかすかに光が差し始めていた。


 最後のスタッフロールが終わり、茜は俺に聞いてきた。


「ね? いい話だったでしょう?」


「ああ、正直よくあるハーレムものかと思ってたがこういう作品もあるんだな……」


「そうですよ! まだ何作か集めているので別な作品も今度見ましょうね!」


 どうやら妹と作品鑑賞はまだ続くようだ。俺はうつらうつらとしてきたかと思いソファに寝転ぶ。達成感は感じるところがあった。

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