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恋人じゃなくて妹です!  作者: にとろ


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「妹と独占欲」

 その朝、なんだか体が重かった。起きようと思っているのに重しが自分の上に乗っているような妙な感覚だった。体が動かしづらいので目をこすって開くと茜が俺の上に乗ったまま寝ていた。


「何をやってるんだお前は……」


「ふぁ……ああはい、お兄ちゃんを起こしに来たのですがあまりにも気持ちよさそうに寝ているのでご相伴にあずかろうかと思いまして」


「とりあえずどいてくれないか? 重くて起き上がれな……」


「は? お兄ちゃんは私が重いと……?」


「そういうことを言ってるんじゃないよ! 朝から人の上に乗っかられたら誰だって重いよ!」


 俺の言葉に渋々起きて俺の上からどいてくれた。茜は何を考えているんだ?


「ふぅ……お兄ちゃんと一緒に寝るというのは気持ちが良いですね!」


「誤解を招くような言い方はやめてくれよ……だいたいお前がこの部屋に来てたのは俺が寝てからだろうが」


「でもお兄ちゃんと私が一緒に寝ていたのは事実ですよね?」


「夜這いって知ってる?」


 茜は心外だと言った風に答える。


「合意の上であればそれは夜這いではないですよ!」


「俺の意志が1ミリたりとも考慮されていないような気がするんですがそれは?」


「お兄ちゃんが私と合意してくれないなんてあり得ないじゃないですか! 私がお兄ちゃんを好きと言うことはお兄ちゃんも私を好きということでしょう!」


「俺に自由意志はないのかよ……」


「少なくとも私との関係においては無いですね」


 ここまで唯我独尊だと交渉は無駄と思える。どこかのガキ大将だって劇場版では聖人になっていたというのに、コイツは常時自分の欲望に忠実すぎる。


 俺の妹としては自分が世界の中心でなくてはならないらしい。好き放題するのもまったく悪いと思っていないようだ。メンタルが強いとかそういう可愛い話ではなく自己中心的という意味だ。俺はコイツが将来サークラにならないか不安になってしまう。なまじ見た目は可愛いだけに調子に乗りそうな気がしてしょうがない。


「しょうがないやつだな……朝飯にするか」


 茜が俺の上で寝ていたので朝食を作っていないのだろう。毎日作ってもらうのも悪いし今日はカロリーブロックですませよう。


 机の引き出しから朝食をとりだして食べ始めると茜がこちらをじっと見てきた。


「なんだ?」


「お兄ちゃん、それを私にもわけてくれませんか?」


「ああ、別にいいぞ」


 二パックになっていたものを一パック茜に渡す。それを美味しそうに食べているのを見てしばらくはこれでも文句が出そうにないなと思う。


「お兄ちゃん! お昼ご飯もコレにしましょう! まだ残ってますよね?」


「ああ、別にそれは構わないが……珍しいな?」


「お兄ちゃんと私が同じものを食べるということは同棲していることを匂わせることができるじゃないですか!」


「誰でも知ってることを知らしめなくていいから!?」


「誰でも知っているというのは思い込みですよ? 常識というものほど人の目を曇らせるものはありません! つまり折々に触れてアピールしていかないと皆さん忘れてしまうんです!」


「触れなくていいから……平和に暮らしていこうって気は無いのか?」


「お兄ちゃんと一緒ならそれも悪くないですね……お兄ちゃんと一緒なら」


「分かったから、学校ではもうちょっと自分を抑えような? お前は本能のままに生きすぎなんだよ」


 本能に忠実な妹、マズローの欲求段階説とかご存じですかね……


「お兄ちゃん! いいからカロリーブロックを私にくださいよ!」


「はいはい、ほら、どの味にする?」


 引き出しを開けてストックから味を選ばせる。茜は無難にバニラを選んでいた。俺はチョコを手に取った。


「じゃあ着替えるから出て行ってくれるか?」


「私は気にしませんよ!」


「気になるんだよ!」


 生まれたときから兄妹ならあるいは気にしなかったのかもしれない。しかし最近同居するようになった少女の前で着替える度胸は俺には無い。


「お兄ちゃんは恥ずかしがりですね」


 そう言いつつ嫌々出て行った。今日も騒々しい日になるだろうな……

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