表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋人じゃなくて妹です!  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/52

「妹と学校でイチャつく」

「お兄ちゃん! 今朝のご飯はいかがでしたか?」


「美味かったよ。ところでなんでそれを教室で聞くんだ?」


 俺の妹は胸を張ってドヤ顔で答える。


「そりゃあ私とお兄ちゃんが同棲しているってところを強調するために決まってるじゃないですか!」


「心底くだらない理由を説明してくれてありがとう。学校でトラブルを起こすのはやめてくれるかな? あと兄妹が一緒に暮らしていることを同棲とは言わないぞ」


 一緒に住んでいれば問答無用で同棲扱いするのなら親子でも同棲となるぞ? 本当にそれでいいのか?


「お兄ちゃんもつれないですねえ……もっと一緒に暮らしているのですからアドバンテージを利用しましょうよ!」


「一緒に暮らしているのがどうアドバンテージになるんだよ……」


「とうぜんお兄ちゃんに媚びようとしている皆さんへの圧力ですよ!」


 えぇ……俺に媚びようとしている奴なんていないだろ。俺に人気が無いのは言われなくても分かっている。


「お兄ちゃんは私との特別性をもっと大事にしてくださいよ! せっかく美少女と同じ屋根の下で暮らしていることを幸運に思って欲しいんですが!」


 誤解を受けそうな発言はいつものことだと理解しているのでいちいち文句を言いたくはないのだが、今日はなんだか言いたい放題だ。


「茜、頼むから少し抑えようか……ビッグマウスも結構だがどこまでも好き放題言っていると後に退けなくなるぞ?」


「お兄ちゃんとの関係なら前進あるのみですよ!」


 どこまでもまっすぐなやつだ……この前向きさをもうちょっと生産的なことに使えないのだろうか?


 俺は呆れながら一限目がそろそろ始まってくれないかな、などと考えていた。俺のクラス内の立ち位置が非常にマズいことになりかねないので頼むからもう少し後先考えてから発言して欲しい。


「お兄ちゃん! 素直に私との関係を公表しちゃいましょうよ!」


「関係も何も兄妹ってだけだろうが……」


「ちっ……」


 非常に態度の悪い妹の相手をしていると一限目のチャイムが鳴った。


「お前ら席に着けー……英語を始めるぞ」


 やる気の無さそうな教師が入ってきて授業が始まる。授業の方が休憩よりよほど平和だ。


 他愛のない日常会話程度の英語をやって次は数学なのだが……


「お兄ちゃん! 英語って難しいですね! さっぱり分かりません、ですので二人きりでのレッスンを……」


「お前は普通のことを話すのにいちいちもったいぶった言葉を使わないと話せないのか?」


「叙述トリックという言葉がありましてね……」


「それは匂わせであって叙述トリックではない!」


 その調子で午前の授業が終わったところで昼休みに入った。当然のごとく食堂に向かう俺についてくる茜。


「お兄ちゃんはお昼何にするんですか?」


「ん……? カレーかな」


「じゃあ私もカレーで!」


 さすがに食事中に問題発言はしないだろうし、昼休みは食堂で過ごすのが一番の安全策ではないかと思う。財布に痛いのと、茜が弁当を作りたがることを無視すればの話ではあるのだが……


 食堂に着いたのでカレーを二つ注文して席に着く。とびきり美味しいというわけではないが不味くもない無難な味のカレーが俺と茜の前に並ぶ。


「お兄ちゃん! ここのカレーと私の作ったカレーでどっちが美味しいと思いますか?」


「黙って食え、どう答えても角が立つような質問をするな」


「お兄ちゃんはシスコンなんですから当然私が作った方が美味しいって言いますよね?」


「人の話聞いてる?」


 人の話を聞かないといつか酷い目にあいそうで心配になる。妹の考えはさっぱり分からない。ブラコンと言う人もいるようだが、茜のそれはそんな単純な言葉では片付かないような執念めいたものを感じる。はっきり言ってそれはもはや狂気すれすれのラインにたどり着いていると思う。俺が知らないこともたくさんあるのだろう。それでも知らなくていいことは知らないままでいいと思う。『寝た子を起こすな』という日本の格言があるではないか。


「じゃあお兄ちゃんはこのカレーの方が私のお手製より好きですか?」


「好みの問題で言えばお前の作った方が好きだよ」


「じゃあよしとしましょう、お兄ちゃんに評価されれば私に文句は無いですからね!」


 茜の問いかけたときに目が据わってハイライトの消えた目で圧力をかけてくるのに答えも何も無いだろう。選択肢の無い質問がとことん好きなやつだ。


「ねえお兄ちゃん」


「なんだ?」


「いずれお兄ちゃんを私なしでは生きていけないようにしますからね!」


 とびきりの笑顔でそう言う茜の顔はどこからどう見ても狂気をはらんでいる。俺に選択肢はないようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ