「妹とティータイム」
「おはようございます、お兄ちゃん」
「おはよ」
「お兄ちゃん? 私はお兄ちゃんとモーニングティーをしたいと思っているのですがそんな乗り気じゃない返事をされたら可愛い妹が傷つくんですよ?」
ああ、そういえば真っ白なティーセットが置いてある。わざわざ用意したのかビスケットまで一緒に置いている。
「俺はお茶会の作法なんぞ知らないんだが……」
「大丈夫です! 私も知りません!」
ドヤ顔で宣言する茜に呆れながらも椅子に座った。
「お兄ちゃん、お湯が沸くまで少し待ってくださいね!」
「ああ、じっくり待たせてもらうよ」
電気ケトルでこぷこぷとお湯の沸く音がする。目の前にはティーポットが置いてある、茶葉の種類は分からないが気にしたことも無かったな。
「アールグレイで良いですよね?」
茜は立ち上がりながら俺に問いかけた。
「それが何なのかは分からんが良いよ」
「お兄ちゃんはもう少しいろんなものに興味を持った方が良いですよ……」
呆れながらティーポットに湧き上がったお湯を注いでいる。紅茶の香りがふわりと広がる。俺はビスケットに手を伸ばそうとして紅茶が出来るまで待つことにした。
「お待たせ! さあ飲みましょうか!」
「そうだな」
前に置かれたティーカップに口をつけると紅茶の風味が鼻に抜けた。
「美味いな……」
ビスケットをかじって紅茶を飲むと、その二つの味が混ざり合って口の中を紅茶が洗い流し居にビスケットがたまっていく。
「ふふふ……」
茜が笑うので俺はおかしいことを言ったかと不安になった。
「なんだよ?」
「いえ、お兄ちゃんも大分素直になってきたなと思いまして」
「そりゃあ兄妹だからな」
義理であっても確かに兄妹なんだ。何もおかしなことはない。そう、兄妹として一般的な関係を目指すべきだろう。
「ねえお兄ちゃん?」
「なんだ?」
「私は……いいえ、何でもありません」
「言いかけてやめると気になるんだが……」
「いいじゃないですか、お兄ちゃんが私を気にかけてくれるというのはいいことですよ?」
気にかける……か。兄妹なんだから当たり前のことではないだろうか。しかし当然のことであってもきっと当たり前になりつつあることはいいことなのだろう。俺は確かに茜のことを信頼し、友情と愛情を感じているのだから。




