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恋人じゃなくて妹です!  作者: にとろ


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18/52

「妹とコイントス」

「お兄ちゃん! ちょっと私と勝負をしませんか!」


「勝負?」


「そうです! お兄ちゃんが勝てば私が夕食を奢りますよ、負けたときはお兄ちゃんが私とデートをしてもらいます!」


 なんだか勝っても負けてもあまり変わらないような気がするんだが……


「俺がそれに乗るメリットってあんまり無くないか?」


「可愛い妹に食事を奢ってもらうチャンスですよ!」


 自分でそれをメリットと言い切るとはなかなかいい根性をしている。


「じゃあ勝負しましょうか! 百円玉をトスして表が出たら私の勝ち、裏が出たらお兄ちゃんの勝ちです!」


「オーケー、一勝負してみようか」


 こういう賭け事は嫌いではない。負けたところで大した問題は無いのだから勝負に出ない手はない。賭けるものが金じゃないのは残念だが、賭博罪もあるししょうがないね!


「いきます!」


 ちゃりんとはじかれた百円玉が宙を舞い、パシッと茜の手の甲に押しつけられた。


「では勝負です!」


「いいだろう!」


 茜が手をどけたとき「100」という数字の面が上になっていた。


「よっしゃあああああ! 私の勝ちです! お兄ちゃん、デートデート!」


「いや、俺の勝ちだろ」


「へ?」


 もしかして茜は……


「なあ、百円玉の表って模様になってる方だぞ?」


 茜が驚愕の声を上げる。


「え!? じゃあこっちが裏なんですか!?」


「そうだよ、日本の硬貨は額面が書いてある方が裏、勉強になったな」


「しょうがないですね……お兄ちゃん、ラーメンで良いですか?」


「ああ、ただ無理しなくてもいいぞ?」


 茜だって経済的に二人分支払うのはキツいだろう。無理をしなくてもいいという言葉に茜は首を振った。


「いいえ、私の負けですからね、そのくらいはさせてください。近所の『天下無双』でいいですか?」


「ああ、でもあそこは少し高くないか?」


「妹の財布を舐めないでいただきたいですね! そのくらいよゆーですよよゆー!」


「分かったよ、じゃあ行くか」


「はい!」


 そうして俺たちはラーメン屋へと足を向けた。『天下無双』はひたすらに濃いスープと山盛りのもやしやキャベツと行った野菜が乗っているので有名な店だ。


「しかし、ラーメンか……意外だな、茜ならもっと映える店を選ぶかと思った」


「お兄ちゃんの好みに合わせてるんですよ。どうせ食べるなら見た目より相手がどう思うかでしょう?」


「そういうものかねえ……」


 コイツの考え方というのはよくわからない。とはいえ奢ってもらう側がどうこう言うのも違うな。ありがたく奢ってもらおう。


「じゃあ行きましょう!」


 そして玄関を出て町の中心部へ向かう。この町ではそれほど多くない外食チェーンに行くわけだが、俺は朝飯をしっかり食べていた。茜が予想外の提案をしたので食べきれるかどうかは怪しいものだ。


 店に入ると券売機が置いてある。そこに茜は迷うことなく二千円を挿入して『大』のボタンを押した。


「お兄ちゃんはサイズどうしますか?」


「『小』で頼む。多いのは食べきれる自信が無い」


 そして茜は小のボタンを押し食券を二枚持ち堂々とカウンターに座って俺を引っ張って隣に座らせた。


「なあ茜、この店慣れてるのか? 迷いが全く無かったんだが……」


「私は自慢じゃないですけど何でも好き嫌いはしませんからね」


 そして運ばれてきた大のどんぶりを平気な顔でつついている。こってりスープもまったく気にした様子がない。俺はなんとか上に乗った野菜を食べているときに茜の方はもうすでに半分を切っていた。


 そしてしばらくしてようやく俺が食べきったころにはとっくに食べ終わった茜が烏龍茶を飲んでいた。明らかに常連の仕草だった。


「じゃあ帰りましょうか! お兄ちゃんと私の家に!」


 家族の家だろうとは思ったが、奢ってもらった身なので自宅の私物化に突っ込むことはしなかった。


 帰宅後、茜は俺と一定の距離を置いていた。曰く『お兄ちゃんに私のニンニク臭い息をかがれるわけにはいかないので』だそうだ。


 その晩、茜はじっくりと洗面所を占拠し、熱心に歯磨きをしていたのだった。

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