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第007話「吸血鬼VSハンター その2」

「あがぁぁぁぁ!!」

「ふっ、づぅ!」


 二十八匹目の吸血鬼を殺すと同時にその死角から現れる新しい吸血鬼。

 それを懐から取り出した銀の杭を力任せに胴体に突き刺し、地面に固定させる。

 次の瞬間、弱点の銀の杭に貫かれた吸血鬼は叫び声をあげた。

 その姿に確実に死ぬことを察した吸血鬼たちは、そんな仲間を一瞥すらせずに、踏みつぶし、俺に襲い掛かる。

 吸血鬼の爪と牙の乱舞。そのどれもが軽く触れただけで、俺の血肉を容赦なく抉れるほどの威力と速度を放っていた。


「づっ、おらぁ!」


 そんな吸血鬼の攻撃の間を俺は縫うように進み、荒ぶる殺意のこもった連撃を躱しつつ、最高速度に達すると同時に地面のタイルが抉れるほどの力を入れ、その速度をそのままに一気に銀槌を振り回す。

 肉が潰れ、飛び散った骨が俺の頬を軽く引き裂くが、俺は一切止まる気は無い。

 ゆえに、更なる一撃を放とうと槌を持ち上げるが、しかし最期のあがきか、先ほど潰した吸血鬼が苦悶の表情を浮かべながら振り回させまいと、銀槌にしがみつき、そんな俺の隙を着くように更なる連撃が襲い掛かる。


「はぁっ!」

「あ、がぁぁぁ!!」


 こいつが完全に力尽きるまで槌は使えないことを判断した俺は、血肉がつき、銀が赤に変わった槌を手放し、懐にしまった銀の杭を掌打の形で眼前の吸血鬼の脳天と心臓に打ち込む。

 手に感じる銀と血肉を抉った感覚に嫌悪感を抱きつつも、俺は次の吸血鬼の腕を掴みそのまま地面に倒した後、先と同じように銀の杭を打ち込む。

 普通の吸血鬼ならこれで確実に死ぬその一撃。

 しかし、相手はかなりの上位の吸血鬼らしく、即死せずに俺の左腕を掴んだ。


 不味い! そう思った時には既に遅く――――


「う、ぐぅっ!」


 腕から頭まで鳴り響く木が折れたような音。

 それが俺の左腕が折れた音だと知った俺は、残った右手で吸血鬼の肩を小刀で切り裂き、そのまま距離をとる。

 ぽたぽたと指先から垂れる血と、肉から少し飛び出た骨。それは俺の左腕が使えなくなったことを暗に語っていた。


「ほお、左手が潰れてしまいましたね。

 まだ私たちの戦いは折り返し地点なのに、こんな調子で大丈夫ですか?」


 そんな俺の姿をはるか先の安全地域でケラケラと笑う神父。

 そんな奴の言葉を無視した俺は、飛び出した骨を残った右手で飛び出した骨を元の場所に戻し、先ほど作った薬を体に打ち込む。


「づぅ!」


 瞬間、心臓が一気に動き出し、心臓麻痺を起こした時のような痛みが走る。

 爆発するかのような心臓の音が鳴り響き、全身に痛み、かゆみ、空腹感、虚脱感が体を満たし、俺は思わず膝をつく。

 そんな俺の姿を見て、絶好の好機と思ったのか、一気に襲い掛かる吸血鬼たち。


「さ、せるか。おらぁっ!」


 しかし、その全てを避けた俺は、折れた左手を使い、銀槌で周囲の吸血鬼をまとめて潰した。

 べちゃべちゃと潰れた吸血鬼の死体の山。

 その中に埋もれながらも、俺は死体を踏みながら山から出てくる。


「はぁー、はぁー、はぁー。

 残念だったな。お仲間さんは全員地獄域になったぜ」


 薬を打った副作用で、息が荒くなるのを感じながら、俺は返り血と自分の血で濡れた顔面を拭う。

 そんな俺の姿を見て、眼前の神父は驚愕の色を顔ににじませる。

 それもそうだろう。先まで絶対的優に立っていた自分たちの状況が一気に変わり、加えて本来なら骨折でも相当な時間がかかる人間の手が一瞬で元に戻ったのだから。


「そうか。その薬、肉体の新陳代謝を無理矢理上げて体を治療する薬か」

「……おい、さっきまでの余裕そうな口調は何処に行ったんだよ」

「図星か。とはいえ、それ程の効力、よほど強い副作用があると見た」

「…………」


 確かにこの薬は肉体をすぐに回復できる効力だある。

 しかし、その代償に異常なほどの体力と臓器の低下、心拍数の増加、空腹感を感じさせ、数分後に肉体に激痛を上げる副作用が存在する。

 つまり……


「あと数分を耐えれば、私の勝ちと言う事か」

「はっ、お前程度の吸血鬼、数分で殺せないなら俺はとっくに死んでるよ」


 だから四の五の言わずにさっさと来いと挑発する。

 神父などと言う職業についておきながら、相当なプライドの高さを持っていたのだろう。

 そんな俺のしょうもない挑発にも関わらずに、神父の顔に青筋が浮かんでいき、それに合わせるように奴は先ほどまで持っていた燭台を捨て、構えを取る。

 恐らく燭台を使っていたのは奴にとってはただのお遊戯の戦闘なのだろう。その構えには燭台を捨てる前に見えていた隙が一切無く、体から溢れ出る殺意と強者特有のプレッシャーから奴が本気になったのを感じた。

 そんな奴の姿に倣うように、俺もまた背中から冷や汗を流しながらも、銀槌を構える。


「よく言った若造。貴様は、副作用で倒れるなど許さない。

 私がその心臓を貫き、血の一片も残さず吸い殺してやる!」

「こっちの台詞を奪うんじゃねえよ!

 それは俺の台詞だ。吸血鬼!」


 そして、互いの殺意の宣言をすると同時に俺たちは拳と槌をぶつけるのだった。


「ふっ、はぁっ!」

「う、ちぃ!!」


 体に走る死の気配を避けるように槌を操り、四方八方から放たれた剛拳を防ぐ。

 元々吸血鬼と言う種族によって強化され空気を文字通り切ったその一撃は目で視認できる速度を超えていた。

 加えて、夜と言う暗闇では更にその隠蔽の練度は上昇し、俺はこんな状態にも関わらず防戦一方だった。


「先ほどまでの威勢はどうした小僧!

 この私を殺すんだろう!?」

「ああ、そうだよっ!」


 声と共に振り下ろした槌の一撃。

 奴と同じく空気を切った槌の一撃だが、奴はそれをいとも容易く避け、横から俺の頭を潰そうと拳を放つ。


「死――――」

「死ぬかよ!」


 しかし、その拳雷が俺に落ちる前に、意趣返しと言うかのように暗闇と俺の体で隠蔽された銀の小刀で奴の右手首を切り裂いた。

 ぼとりと、落ちていく奴の手首。

 しかし、その拳は止まりはせず、切断面から見える骨を武器にするかのように、俺の頬を突き刺した。

 無論、ただの人間なら頬を突き刺された程度は軽症のたぐいだが、奴は吸血鬼。

 頬が突き刺されたこの状態で手が蘇生された場合、この頭が次の手でどうなるかは言わずもがなと言うものだ。


「離せ! このやろう!」

「なっ! ちっ!」


 ゆえに、俺は自分の負傷など意図もせずに、俺と奴の間に爆弾を投げた。

 人間には軽傷しか与えない程度の小規模の爆発だが、中に込められた銀が互いの体を突き刺し、傷を増やす。

 教会の中に広がる土と火薬の煙。

 互いの位置は完全に不明だが――――


「そこかっ!」

「ちっ!」


 先ほどまでの互いの位置と煙の動きから奴の位置を察した俺は槌を放つが、奴はそれを復活した右手首で防ぐ。

 銀によって焼けるような音が奴の右手首から聞こえてくる。

 ここが絶好の好機と、俺はそのまま右手首を潰し、奴の頭を潰さんと力を更に込める。


「俺は気絶するまでの間にレリックを救わなきゃいけないんだ。

 お前とこんなところで遊んでいる暇はないんだよ。

 だから……さっさと死ねぇぇええ!!」

「させるかぁあああ!!

 彼女は私たち吸血鬼の光なんだ。

 そんな彼女を渡すかぁぁあああ!!」

「う、ぐっ!」


 互いに全力を込めて押し込めあう俺たち。

 しかし、そこに意識が行き過ぎたのか、俺は奴の蹴りに反応できず、吹き飛ばされる。

 地面を回転し、柱にぶつかることで停止する俺の体。

 そんな俺の体を狙うように奴の追撃の一撃が俺の顔面を狙った。


「貴様こそ、彼女を吸血鬼にする我らの邪魔をするな!」


 怒気と意味不明な決意感のこもったその一撃。

 その一撃を、俺は自身の槌で防いだ。

 俺が奴の拳を防ぎ、奴が俺の頭を潰さんと力を更に込めると言う先ほどとは完全に真逆の構図になり、俺は自身の死の感覚を感じ始めた。


「お前たちハンターはいつだって俺たちの邪魔をする!

 始祖が死んだ今、私には彼女しかいないのだ!!

 彼女以外私たちを導ける者はいないんだ!

 彼女に血を飲まして、真なる吸血鬼にして、我らの長にする。

 一体何の権利があって彼女が唯一幸せになれる我らの崇高な計画を邪魔するんだ!!」

「そんなのあいつが本物の吸血鬼になりたくないと思っているからに決まっているからだろうが!!」


 あまりにも身勝手な奴の言葉に思わず、瞬間的に脳が沸騰した俺は防御をやめ、顔面を潰されるほどの拳を真正面から受けながらも、俺は血が滲むほどの力を込めた拳を叩き下ろした。


「あっ、がっ!」

「はぁ、はぁ、ぺっ」


 人間の俺に殴られ、更に吹き飛ばされたことに自分の自尊心を傷つけられたのか、奴は憎しみの色を瞳に更に込める。

 対して、俺は顔面が軽く潰れ、左目も潰れているのか見えずらくなっている中、血の混じった痰を吐き出しつつも、槌を捨て一歩ずつ前に歩き出した。


「お前はあいつが寝るとき苦しんで寝ているのを知らないのか?

 お前はあいつが他の人間を羨ましそうに見ているのを知らないのか?

 お前はあいつが毎日何かを思い出しては苦しそうに唇を噛んでいるのを知らないのか?

 お前はあいつがどれだけ自分と他人を誤魔化してまで、未だに人として生きようとしているのを知らないのか?

 そんなあいつを本当の吸血鬼にしたいなんて、良く言えたな!

 第一、あいつを本当の吸血鬼にするなんてそんな権利お前にあると思っているのかよ!

 なあっ、答えろよクソ神父ッ!」

「くっ!」


 俺の絶叫と放たれた拳を奴は避ける。

 恐らく、ここまでくれば下手に戦闘するよりも俺が力尽きるまで、逃げたほうが得策と考えたのだろう。

 だが――――


「うおらあっ!!」


 もう体の痛みも、肉体の限界も何もかもがどうでも良い。

 命の雑巾の最期の一滴まで、俺は動き続けると覚悟を決めた俺は、拳や蹴りを更に叩き込む。


「何があいつの幸せになれるだ!

 あいつの何が幸せで、不幸せなのか決めるのは俺たちじゃねえだろうがッ!

 他人の心を読むなんてな……神様じゃなけや無理なんだよ!

 長年生きてながらそんなことも分からねえのかこのクソ老害!!」


 一撃、二撃、三撃と放つ攻撃。その全てが全力で放った結果か、俺の足の指は骨折し、手は皮膚と肉が破れ、骨まで見えかけていた。

 だが、これで終わるわけにはいかない。レリックのためにこいつはここで必ず殺す。

 ゆえに、俺は更にその拳を高く振り上げるのだった。

始めて本格的なバトルシーンを書きましたが、楽しいけど結構難しいですね。

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