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第002話「500年ぶりの食事の味」

同居一日目であれをするライトの精神はかなり強いと思います。

■同居一日目


「はぁ」

「なんだ? こんな朝早くに深いため息を吐いて。

 もしかしてこれ食べたいのか?

 欲しいならやるぞ」

「……いらない」


 吸血鬼は日の光に弱く、準備なしに日の光に当たれば死ぬ可能性もあることから基本的には朝に行動することはない。

 そのため基本的には夕方になるまでは日が当たらない部屋で時間を潰すようにしている。

 なので同居一日目も同じようにしようとしたのだが……


「あなた何しているの?」

「何って、外で朝飯の鹿を解体しているんだが」


 流石に部屋からでも分かるほどの血の臭いを充満させていれば吸血鬼としては嫌でも気になってしまうのだ。


「それは分かっているけどそう言うのは出来ればもっと離れたところでしてくれない?

 血を吸いたくないのと血を吸えないのは違うのよ。

 流石の私でもこんな五匹の鹿の血の臭いを漂わせると気になるのよ」


 部屋の窓から言った私の講義に少し困った表情を浮かべるライト。

 その隣には五匹の鹿の血抜きの光景が広がっており、その光景に喉が乾くのを感じた。


「ああ、そうなのか。

 すまない。孤児院ではこうするとガキどもが来るからつい癖で」

「はぁ、まあ今度からは気を付けてね」


 そう言って、私は少し準備をすると外へ出てライトのもとへと向かい、吊るされた鹿を全て肩に担いだ。


「おお、なんだ。

 やっぱり欲しいのか。ならせめて一匹は残してほしいんだが……」

「そんな訳ないでしょ。

 良いから黙って付いてきなさい」

「お、おお」


 はぁ、何で私がこんなことをしなきゃいけないのよ。

 そんなことを思いながら私は足を森の中へと向けたのだった。


「それで? 何処に連れて行くんだ?」

「…………」


 なんで私がこんなことをしなければいけないのだろう。

 やはり多少の危険を払ってでも同居の提案は却下すればよかったかななんてことを思いながら昔の記憶をたどりながら歩くこと数分、私は川の近くにある小さな小屋の隣に立っている木の枝に鹿を吊るした。


「ここなら川が近くにあるし血もすぐに流れて処理も楽でしょ?」

「おお、そうだな。

 こんないい場所があったのか」

「まあ、昔ここでよく動物を解体していたからね。

 あと、血抜きと食事が終わったらここで体洗って、血の臭いをなくしてから帰ってね」

「分かった。

 レリック、気を利かせてくれてありがとうな。

 あと、逆に気が利かなくてすまなかった」

「良いのよ別に、今度から気を付けてくれれば」


 そう言って、私は手をひらひらと降って家路へと戻るのだった。


「はぁ、朝から疲れた」


 今日は本を読む予定だったが、もう疲れて何もする気が無いから夕方まで寝ようと決めた私はベッドに入り、瞳を閉じるのだった。


 私を殺した吸血鬼。それは始祖と呼ばれる吸血鬼で私はそんな彼が最初に作った女の吸血鬼だった。

 元々吸血鬼は始祖を頂点とする群れで行動する生物で、そんな吸血鬼達のなかで初めての女吸血鬼となった私は吸血鬼の中から姫のように扱われ、やがて吸血姫と呼ばれるようになった。

 そして吸血姫となった私は自分の住んでいた屋敷で多くの吸血鬼と過ごすようになった。

 しかし、それは生前の穏やかな生活とは違い、自分や村の人を殺した吸血鬼に口説かれ、息をするだけで鼻に着く血の充満した臭いを感じ、食事だと肉が混ざった血溜まりの器を差し出されその器の中身を飲むのを我慢し、そして人間の懇願や絶叫、死の直前の音を常に聞くという地獄のような日々だった。

 ただただひたすら心を無にする日々、そんな中で私はこんな目に合わせた始祖を殺したいほど憎むようになり、私が吸血鬼になってから一年後、始祖を殺し、群れのトップを失った吸血鬼は私の屋敷を離れ散じりになり、そして――――


 その後、夕方になり、目覚めた私は水が入ったバケツとほうきに雑巾を持つと、家を掃除し始めるのだった。

 自室、廊下、客室と掃除をし続け、食堂に入った時、そこにはハンターに送る手紙だろうか、何かを書いているライトの姿があり、私はそんな彼を無視するかのように掃除を始めたのだった。


「吸血姫なんてお嬢様みたいな呼ばれ方している割には掃除だなんてメイドみたいなことをしているんだな。あんた」

「……何? 悪い?」

「別に悪いとは言ってないだろ。

 それくらいこの家を大事にしているってことだろ? ならむしろ良いことじゃないか」

「……そんなんじゃないわよ。

 この家広いから、毎日掃除しないと埃だらけになって過ごしづらくなるからそのためにしているだけよ。

 あとこう見えても私の家は名家だったのよ。だからお嬢様みたいじゃなくてお嬢様そのものよ。

 まぁ、この家が滅ぶ前の話だけどね」

「……ああ、そうだったのか。

 なんかすまんな」

「別に気にしてないからいいわよ。

 もう五百年前のことだもの。家が滅んだことなんてとっくの昔になれ――――」

「慣れるわけないだろ。嘘つくんじゃねえよ」


 私が言うその言葉をライトは無理矢理否定した。


「俺も十の頃に家族、友人含めて全員吸血鬼に殺され、俺だけが生き残った。

 それから二十年。まだあの時の怒りも憎しみも恐怖も慣れたことなんてないよ。

 五百と二十じゃ違うかもしれないが、俺ならきっと五百でも慣れないと思っている。

 だから、君もきっと慣れてないと俺は思うよ」

「……そうでも、それはあなたの理屈でしょ?

 五百年経たないとそれが本当かどうかは分からないわよ」

「あははは、そうかもな。

 でも、俺は吸血鬼になる気は無いからきっと最後までたらればで終わるだろうな」


 私の言葉に豪快に笑うとライトは私から雑巾の一つを奪い、同居しているから俺も手伝うと言い、私の隣で掃除を始めたのだった。

 そのやり方は結構乱暴だが、まあ、掃除が早く終わる分には問題ないかと思った私は、適度に指摘しつつ、掃除を行うのだった。


「それで、あなたがハンターになったのはやはり家族殺された復讐から?」

「あー、その……まあそれはそうなんだが……それだけじゃないと言うか……何というか……」


 私の顔を合わせずに何かを誤魔化すような曖昧な返事をするライト。

 どうやら何か隠したいことがあるみたいだけど、まあ知られたくないなら無理矢理聞く必要ないか。


「ちょっと気になったから聞いただけだから別に言いたくないのなら言わなくて良いわよ。

 はい、食堂の掃除は終わったし、これで掃除は全部終わったから雑巾を返して、私が洗っておくから」

「ああ、ありがとうな」


 そう言って、ライトに雑巾を返してもらった私は、そのまま雑巾を洗いに井戸へと向かった。

 その後、雑巾を洗い、干し終えた私は食堂へと戻る。

 恐らくもう眠ったのだろう。そこには既にライトの姿はなく食堂はいつも通りの静寂に包まれていた。


「ま、居られても困るから私としては助かるけど」


 そんなことを思いながら自分も部屋に戻ろうかなと考えていると不意に食堂に何かがおいてあることに気付いた。


「なにこれ」


 そこには手紙と何かの肉の塊が乗っている皿が置いてあり、私はその手紙を開き内容を見た。


『今日取った鹿だが、予想よりも多くとれたからもし良かったら食べてくれ。

 もし食べられないのなら明日俺の朝食にするからそのままにしておいてくれ』


 はぁ、吸血鬼に食事は必要ないことを知らないのかしらあの男は。

 そんなことを思いながら、食べずに部屋を出ようとするが、不意に昔母様の『他人の好意を無為にするな。出されたものはきちんと食べろ』と言う言葉を思い出した私は、更なる深いため息を吐いて、埃にまみれたフォークとナイフを洗い、その肉を食べ始めるのだった。


 そんな500年ぶりの食事の感想は、ちょっと焦げて、しょっぱいと言うちょっとあれなものだった。

500年ぶりの食事、自分だったら何を食べるかなと思いながら書きました。

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