空原海風SF小説『ユングフラウに突き刺されよ』
空原海さんの作風を物真似したオリジナルのSF小説です。
登場するオシャレっぽい単語は大抵架空のものです。
空原さんからはハートマークいっぱいの許可を頂いております。
「船がこう沈み込む時にさ、ちょっとイきそうになるんだよね、俺。飛行機がエアポケットに入る時みたいな感じでさ。無重力空間でも同じだっての、不思議だよな」
窓の外を走るメリル色のストリープを眺めながら男はそう言った。
ユーライア製のヒープを着込み、気障なバチャラッティのクチャラッティ・ブランドの苔みたいな色のメガネを光らせてそんなことを言う男の、背の高いところにある薄い唇が動くのをじっと見つめていた。
男がこっちを向いた。
わたしはあなたになんか興味はないと素振りで伝える。
「そんなことよりもうすぐ地球に着くわよ。ユーキ・ランランのトリセツはちゃんと読んだ?」
「ああ、ちゃんと読んだよ。昔観た映画を思い出しちゃったな」
「あのトリセツを読んで? 映画のことを? なぜ? まったく関係ないはずよ」
するとジョー・マシュマロ・バーガーは、アメリカ人特有のわたしを支配したつもりでいて優しく包み込むような笑顔を浮かべた。
「昔観た日本の映画があってね。確かタイトルは『あんぱんまん』だったかな? その中にね、出て来たんだ。Teng Teng=Dong Dong,Teng=Dong Dongって歌。あれが耳に残っていてね」
「だから関係ないわ」
わたしはちょっと笑わされてしまう。
「日本人って、みんな君みたいに少女なの? YellowHatを被ったAutobacsみたいにさ。まるで昔流行ったVillage PeopleのYMCAみたいだ」
「なるほどね」
わたしはクスクスと笑ってしまった。
「わかるだろう? 君はいくつだ? 知らないけどもうとっくに大人の女性だ。それなのに頼もしいほどに僕の楽しみに付き合ってくれる。あ、もちろんFWBという意味でじゃないぜ? 結婚してくれないか?」
「あなたがユングフラウの雪を溶かせるのなら考えてみてもいいわ」
「そんなことをしたら世界が大洪水になる。モーゼの『十戒』をやり直したいとでも?」
「あら。出来ないの?」
「やってみせるさ。君の頼みとあれば」
「誰の頼みならって?」
「君だよ、ユーキ・リンリン」
わたしの名前はユーキ・ランラン。
ユーキ・リンリンなんて女のことは知らない。
それってもしかしてアニメ『あん○んまん』のED曲のタイトルじゃなかった?
まぁ、どうでもいいけど。
「おっと。噂をすればユングフラウが見えて来たぜ?」
窓の外を見ると彼の言うとおり、激しい揺れもなかったのに、いつの間にか大気圏を突破していて、懐かしい地球の景色が眼下に広がっていた。
船は自動操縦でスイス上空を急降下してユングフラウの高い峰をかすめ、宇宙空港のほうに向かっている。
「地上に帰ったら、結婚してくれよな。ユーキ・リンリン」
どうでもいいはずだったけど、なんだかイライラしたわたしは操縦桿を握ると、ユングフラウの雪の中へ機首を向けた。
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