たらこくちびる毛風時代小説『印籠をなくしたばっかりに』
たらこくちびる毛さんの作風を物真似したオリジナルのパロディー短編です。
たらこ様からは快い許可を頂いております。
日が暮れて空がたらこ色に染まり出した頃、悪代官は悪代官らしく悪事を働いていた。どんな悪事かは省略させていただく。悪事なんてどうせ3パターンぐらいしかないのだから。
「ゲヘヘ! 悪いことは楽しいのう!」
「悪代官様、素敵な悪事でございます」
そこへちょうど通りかかった因幡のご老公御一行。
「待てっ! 悪いことはやめるんだ!」と、ヅケさん。
「大勢で寄ってたかって悪事を働くなんて、てめぇらゴミだな」と、ハムさん。
「ヅケさん、ハムさん……
懲らしめてやりなさい!」
ご老公のその一言でチャンバラが始まる。
悪代官の手下は47人。
ご老公の用心棒、ヅケさんとハムさんが2人だけでばっさばっさと斬り捨てて行く。
47人全員で斬りかかればいいのに、律儀に順番を待っているからだ。
偉そうにチャンバラを高座から観戦していたご老公が、満を持して言った。
「そろそろいいでしょう」
「はっ!」
「よし来た!」
ヅケさんとハムさんがご老公の前を守るように並ぶ。
ヅケさんが懐に手を入れ、叫んだ。
「鎮まれ! 鎮まれーい!
ここにおられるお方をどなたと心得る!
先の副将軍、あれ? ……あれえっ!?」
紹介を待ちながら偉そうにふんぞり返っていたご老公が、不安そうにヅケさんを見る。
「どした? ヅケさん」
「な、ないっ! 印籠が……ないっ!」
「何が言いたいんだ、お前ら?」
悪代官が首をひねる。
「誰だって言うんだ? そのジジイが?」
手下がバカにするように言う。
「あっ……! あれ、先の副将軍タラ・コクチ・ビルケ様ですよっ!
俺、見たことありますっ!
間違いありません、本人ですっ!」
手下の1人が言い出した。
悪代官は慌てながらも、ヒソヒソ話で叫んだ。
「なっ……何っ!? 本当か!?
いや……、しかし、証明するものがなければ……
信じるわけにはいかんなあ〜(ニヤリ)」
ご老公一行は慌てている。
「いっ、印籠を早く探せっ!」
「たっ、確かに懐に入れておいたはず!」
「早うせんか! わしをいつまでふんぞり返らせておくつもりじゃ!」
「あいつはニセのご老公だ! ただのコスプレジジイだ、斬れ!」
悪代官が命令し、再び47人が襲って来る。斬り倒したはずなのに皆なぜか元気ビンビンだ。
ご老公一行は話し合いの末、決めた。
「しっ……仕方ないっ!」
「みんな斬れ! 斬り殺せ!」
「ウム! 死人に口なしじゃ! 幸い全員クソ弱い! 片付けてしまいなさい、ヅケさん、ハムさん!」
ばっさり
ハムさんが斬られた。
相手はたらこ唇から長い長い一本の毛を生やした浪人だった。
「うぉい!? 主役を斬るなよ!?」
ヅケさんが叫ぶ。
浪人は名乗った。
「ソレガシの名は鱈子唇毛太郎。
この小説はたった今よりソレガシが主人公だ!」
悪代官が遮る。
「待て! 待てい!
この小説の主人公はワシじゃ!
女の着物の帯を引っ張ってくるくる回すエロ小説にしてやるわい!
ゲヘヘへへ!」
ヅケさんは助けを求めた。
「ご、ご隠居っ! どうしましょう!?」
ご隠居は答えた。
「へい。わしはしがない因幡の白ウサギ問屋でございますので……、
ちょっとどうしたらいいかわかりませんねえ……」
その頃、かおる由美は入浴していた。
身体を洗いながら、自分が持っている印籠を見て、声を上げた。
「これ、たわしじゃない!」
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