ひだまりのねこ風ラジオ投稿用短編小説『大雪崩のグワッシュ』
ひだまりのねこ様の『雪だるまのジョッシュ』をパクったオリジナル小説です。
ひだまりのねこさんの許可は頂いておりません。
俺は超売れっ子漫画家だ。
現在四つの連載を抱えているため、やむなく助手を雇うことにした。
どどど……
ん? なんか地鳴りみたいなのが遠くから聞こえて来たぞ?
ゴゴゴゴ……!
明らかにこちらへ向かって来ている! なんだ、これは!?
「どうもー! 雇われて来た助手でーす。ゴゴゴッパーん」
そう言いながら、玄関のドアをぶち破って白くて固いものが波のように入って来た。
「遅いよー。もう原稿出来上がったのあるんだから。急いで全部に背景描いてね……って、君、何?」
「何っていやだなぁー。助手ですよ、助手」
「どう見ても人間じゃないよね? 何?」
「いやだなぁー。見てわかりません? 雪崩ですよ。しかも大雪崩」
「名前は?」
「グワッシュです」
「『助手のジョッシュ』みたいに洒落てないなぁ」
「一人称が『助手』なんですよー」
「ま、いいや。じゃ、早速背景お願いね」
「その前に暖房消してもらえます? あと窓も開けて。この部屋、暑い」
「そんなわけないだろ! 君みたいな大雪崩を溶かせる暖房器具は存在しないよ! 大体……あれっ?」
俺は気づいた。
これだけの量の冷却物質が雪崩込んで来たというのに、ちっとも寒くないのだ。
むしろ暖かい。
どういうことなんだこれは?
「雪に埋まっちゃうと寒さすら感じないって言いますからねー」
グワッシュの言葉に納得してしまった。
そうか。俺は今、グワッシュに包まれているから、こんなに意識が遠く……
「眠るな! 眠ると死ぬぞー!!」
グワッシュの声も遠くなって行く。
あぁ……、父さん、母さん……、俺、今、幸せだ……にゃふふ……。
グワッシュがばしばし頬を張って来たが、俺はあまりの気持ちの良さに意識を失ってしまった。
目覚めると、天国だった。
何も悩みはなく、まるで聖属性エッセイストの懐の中のように、俺は満たされていた。
「あっ? 気がついたッスか? よかった」
どこかからグワッシュの声がする。
グワッシュは神だったのか?
身を起こすと、頭が雪の天井にぶつかった。
ここは鎌倉の中だった。
「鎌倉の中って意外にあったかいんすよー。よかったッスねー。おしるこ、飲みます?」
俺は笑顔でおしるこを頂いた。グワッシュと向かい合って、ふふふと笑い合いながら。こんなに平穏な時間を過ごすのはいつ振りだろう。ずっと仕事に追われていたから余裕なんてなかった。
ありがとう、グワッシュ。
ありがとう、おしるこ。
いや……待て。
「締め切り間に合わんだろー!!」
その後いつもの5倍仕事した。




