第24話 博士と鷹匠③
生徒会たちとの打合せから3日後。
部室にタカがいた。
「来たか助手よ。こちらは生後1年のオオタカだ。失礼がないようにな」
「あ、どーも」
とりあえず俺は一礼しておく。
パーチ(止まり木のこと)にいるオオタカの彼は、俺の挨拶に対して、挙動不審に「キェッキェッキェッキェッ!」と鳴き声を返した。
威嚇してねーか? これ。
「えっと、マジにタカを呼んだんですか?」
「マジも何も、この子がすべてを証明してるだろう」
マジかよ。
タカジョウなんてよく分からないことを
最後に行っていたのは覚えているが、なるほど、これは鷹の匠と書いた鷹匠のことか。
ふーん。
へー。
なるほどな。
いやちょっと待てよ!
「いやいやいや! ちょっと分んないんですけど、この子がゴミ箱の近くにいれば勝手にカラス殺してくれるとか、そういう簡単な話だったりします!?」
「んなわけないだろう。訓練をした鷹匠が、鷹から信頼を獲得し、調教をしなければ鷹狩りは無理だろう」
「で、その訓練した鷹匠とやらは?」
「私だ」
えぇ……?
博士、鷹匠としての腕も持ち合わせてるのかよ。
天才博士として名高い彼女だが、たかを自由自在に操るとでも言うのか。
すげーなこの人。
「けっこう苦労して買ってきたんだ。本体価格は100万を超えたかな」
「100万円!?」
この鳥畜生一匹が100万円!?
中古の自動車が買えるぞ。
「ふむ。と言っても、この子が生きてくための環境を整えるだけでも、それ以上の出費が出てしまった。部室を整えるための環境作りで大分トンだな」
「いくらくらいなんです?」
「この部室ならそれほどだが、飼育小屋を立てるために200万は超えた。そして、この子にあげる餌を考えると、向こう一年は100万くらいの備蓄はほしい。だからこの子には300万くらいの金がかかっている」
「サンビャ……」
流石に言葉を失う。
そこにいる猛禽類とやら、新卒1年目の年間勤労分くらいの価値があるらしい。
300といえば、どれくらいの価値だろ。
少なくとも、俺の家のトイレにウォシュレットを付けるくらい訳ない値段だ。
ウォシュレットをつけて、ついでに電灯に人感センサーを付けたい。
「で、そのオオタカちゃんと博士に懐いてるんですか?」
「ふっ、この間の私を見て、なぜそんな疑問が湧いてしまうのか」
「この間?」
「カラスとのコミュニケーションを図ったときさ」
「……あれを見て?」
「ふっ、私の動物への愛情と理解、その上で適切な行動。それを遵守すれば、動物はすぐに心を開いてくれる」
「いや駄目だったじゃん」
「カラスは害鳥だから動物ではない」
どんなカテゴライズだ。
「ほら、オオタカくん。君はあんな焦げ鳥類などと違い、誇り高き猛禽類であるよな?」
そう言って、博士が振り返った瞬間。
オオタカは、「キェーッ!」と威嚇した。
「……ははは。照れおって。まぁ最初はこんなものだ。しかし、ちゃんと接すれば次第に心を開いてくれるさ」
「ほんとかなぁ。カラスにも弄ばれてたのに」
「バカいえ。オオタカくんはカラス謎と違って賢く、気高く、従うべき人物の分別くらいある。ついでに言えば、ウンコもしない」
いつぞやの時代観のアイドルかよ。
「キェッ!」
そう鳴いて、オオタカは勢いよく前傾姿勢を取り、尻から何かを飛ばした。
オオタカの後ろにあった窓ガラスに糞が付着した。
「思っきり糞を飛ばしましたけど」
「動物である限り、ウンコくらいするだろう。当然だ、助手は少しくらい生物学を習ったらどうかね? ちなみに、オオタカは後ろに糞を飛ばす習性がある。ハリスホークなら横方向だが」
なんだコイツ。
お前がアイドルはウンコしないって言ったんだろう見てろ。
「ふっ、まぁ見てろ。この子は300万もかけた誇り高きオオタカ。見る目くらいはあるだろう。才色兼備、博覧強記のダイナマイトボディの私を尊重し、すぐに懐いてくれるだろう」
そう言って、博士はオオタカの頭を撫でようとして手を伸ばすと、オオタカは血相を変えて、博士の指を噛んだ。
「イッたァァ!?」
ほら言わんこっちゃない。
「……」
「……あの、博士。どうでもええんですけど、窓に付いた糞を掃除してくれません? 管理者は博士でしょう? だったら飼い主としての責任を取ってください。動物を飼うっていうのは、そういう地道な世話を惜しまないことが大事ですよね」
「……」
「博士?」
博士は噛まれた指を抑えながら、無言だった。
あ、何か血が出てる。まぁ無闇に動物に触ろうとしたから当然だが。
「哺乳類にもなれなかった鳥類ごときが……舐めてると潰すぞ……」
「ちょっと博士!?」
博士は突然、懐から拳銃を取り出した。
「止めてください! 動物愛護法的にまずいでしょう!」
「知らん、どうせ器物損害程度だろつ。こいつは法的に生物では無く、モノなのだ。言ってしまえば助手より程度の低い下賤な生物なのだ。中世の奴隷みたいなものだ」
俺は拳銃を取り出す博士を抑えた。
こいつ冷静じゃなくなると、倫理観が死ぬな。
「助手よ、今回の害鳥駆除の件、少しばかり、私の負担が大きいと感じる」
「は? てかあんたが勝手に鷹を買ってきたんでしょうが」
「そうだな……だからこそ、正当たる科学部部部長、癒音康彦くんにしてみれば。少し退屈な思いをしているんじゃないかな?」
「いえ。ぜんぜん」
「はっはっは! まぁそう遠慮するな」
「何が?」
「助手。貴様が鷹匠をやれ」
「……は?」
鷹匠が気になったのが1,2ヶ月前で、シナリオのプロット作ったのが一月前なのでモチベが薄れていました
水族館の二の鉄踏まないようにと思っていますが、そろそろモチベーションの維持がキツくなったので無理にでも最終回作るか検討してます。
うん。まぁ。
色々やりたい話はあったけど、そろそろおしまいにしたほうが良いなこれ




