第15話 博士と数学クイズ [ABCD×4=DCBA]
今回、参考にさせていただいた動画です。
問題の詳しい解法は以下の動画にて説明されています。
https://www.youtube.com/watch?v=HEqP9HdT0fM
「ABCD×4になるDCBAを求めよ」
「は?」
部室にて。
博士が思いついたように、変なことを呟いだ。
「あー、なんです?」
「仕方ない。文字に書き直そう」
そう言って、博士は紙とペンを出し、筆を走らせる。
ただプリコネをしていた俺は、困惑する他ない。
「これだ」
※以下は解法になります。
※自力で解きたい方は、下からネタバレになると思います。
博士がそう書き起こして、図示したものをみる。
「数学の問題ですか?」
「うむ。この前、動画サイトを眺めていたら、面白い問題を見てな。助手に解いてもらいたい」
「あー……」
俺も単純な性格をしている。
一見、筆算の基本さえ出来ていれば、解けそうな問題だ。高度な数学的知識も必要なさそうだし、俺でもできそうと思ったら、俄然やる気が出てくる。
「えっと、DCBAは4桁の数字ですよね」
「ああ」
「なら、Aは絞り込めますね。1か2です」
3以上になると、繰り上がるから条件を満たさない。だから、Aが1か2なのは自明。ついでに、ABCDは2500より小さい数字だな。
「ええっと、4Aが1だとDが4。4Dが16になる。逆に2だと4Aは8。4Dが32……Aは2でDは8かな?」
「その方法でも導けるが、もっとスマートに考えたまえ」
「スマートに?」
「下1桁が1になる4の倍数は存在するか?」
「……そういえばそうですね」
奇数偶数、と言うよりも4の倍数って考えが重要臭いな。
「とりあえず、ADはそれでおいて……あー、この条件だと、Bが繰り上がらないって考えないと駄目ですね。Bが繰り上がると、Aが破綻して、Dもおかしくなる。でも、Aは絶対1ではないから……」
「しまった、余計な助言をしたか」
「あ、ホントですね。Bが繰り上がらないことに気づいたのは博士のおかげです」
「しばらく黙っておく」
「そうしてください」
まぁ、何にせよ繰り上がらないって前提で解くつもりだったけどね。答え出ればいいや、という気持ちもあるし。
「まぁ、Bは4Cに、Dが8だから繰り上がりの3を加えた、4C+3の1桁がBか。えっと、Bは繰り上がらないから、1か2として……」
「……」
またも、博士からなにか言いたげな視線が飛んでいる。
構うもんか。詰まったらまた考え直せば良い。
さて、4C+3の1の桁が1か2がBなんだから……。
あ、そっか。
例えば、4C+3が12だとしたら、Bの1の桁は9。4Cが4の倍数にならない。というか、Bはマイナス3されるんだから、奇数じゃないといけない。
「Bは1か」
そうなると、Cの候補もすぐに割り出せる。1~9の範囲で、4の倍数は1~36まで。その中でBが1ならば、4C+1の候補は11,21,31……。てことは4Cの候補はそれにマイナス3した8,18,28。
Cは2か7だ。
「あー、後は当てはめていくだけでいいか」
2128×4=8512。
2178×4=8712。
「Cは7。ABCDは2178ですね」
「うむ。正解」
「よし」
答えが導けると、パズルの最後のピースをハメたように気持ちいい。
小学生でも解ける数学クイズだが、中々に考えさせられたな。
「さて、少し添削だ」
「添削、ですか。どこか間違ってましたか?」
「いや、答えはあってるがな。少々、この解き方に問題がある」
「はて……」
もう一度、回答用紙とにらめっこしてみる。
何か、重要な思い違いをしていたか……?
「まず、Bが繰り上がらないという条件で、Bを1か2と考えたな」
「はい」
「0は?」
「あー」
すっかり忘れていた。
そうだ、Aに0が入ることは無いが、Bは0の可能性もあった。
確かに、どちらにせよBは奇数じゃないといけないから考慮する必要はなかったが、しかし見落としていたのには変わりない。もしも答えが0だったら、詰んでいたかもな。
「加えて、4の倍数は下二桁が00もしくは4の倍数になるという性質を知っているか?」
「え、知らないです。そうなんですね」
「その法則を知っていれば、Bは1だとすぐ分かる。ちなみに、その証明だが……」
そう言って、博士はつらつらとペンを走らせ、証明を説明していく。
※少し冗長になるため省略しますが、前書き記載のURLの動画では説明されています。
「という訳で、こう言った小ネタを知っているだけで導出は楽になる。私は暗算ですぐに導けた」
「まぁ、博士はそうでしょうね」
常に数式が頭を支配している天才博士と凡人を比較されてもなぁ。
「しかし、そこそこ粗があってもちゃんと解けたのは偉いぞ助手」
「へへっ」
「笑い方キモ……」
「グーで行きますよ」
褒められてちょっと心を許したら、すぐこれだ。
「しかし、この問題に一時間は使うだろうと考えていたから、少し時間を余してしまったな」
「それは流石に俺を舐めすぎでしょう」
そもそも、一時間も悩んでいたら、もう一生閃かないだろう。
「そうだ! 助手、少し目を瞑れ」
「はぁ……」
言われたとおり、俺は目を瞑って博士を待つ。
すると、俺の視界にない場所で、博士はドサドサと音を立てながら、何かを準備し始める。
「もう開けていいぞ」
「分かりました」
目を開けると、目の前に逆さになった3つの紙コップが並べてあった。
俺が訳もわからず、博士の顔を伺っていると、博士はニヤニヤしながら言った。
「この中に1つ、百円玉が入った紙コップがある。当ててみたまえ」
「え、じゃあこれで」
どうせ当たるもんじゃない。
適当に、真ん中の紙コップを選んだ。
「よし。ならば左端のコップだか、これはハズレだ。さて、助手。もう一回選び直しても良い。選び直すか? それともそのままにするか?」
「……あー、選び直します」
「その理由は?」
「……えっと、確か選び直した方が確率が2倍になるって話らどこかで聞いて……」
「モンティホール問題のことは知っていたか。では、なぜ確率は2倍になる?」
「ええっと、うーん」
そういえば、何故だ?
朧気な記憶で、2倍になるって事は知っている。けど、理由はうまく説明できない。
てか、よく考えたら、これって単に二分の一じゃねぇの?
答えは確かに『選び直す』が正解だ。でも、うーん? 何というか、答えだけ記載されているが、解法が説明されていない参考書を眺めている気分だ。
「え〜⁉ 助手は理由は分からないけどとりあえずこういう法則あるからって決めちゃうのぉ〜⁉ もしかしたら『選び直さない』方が確率2倍かもしれないのにぃ〜⁉」
ムカつく。
滅茶苦茶ムカつく煽り顔をしながら博士は俺を責める。
「……明日までに考えてきていいですか」
「仕方ないなぁ〜。まぁ明日まで頭を抱えてきたまえぇ〜」
「はい、小学生にも説明できるよう理解してきますねぇ〜」
「殺すぞ」
急に声色変えるなよ。
怖いわ。