5-4 反発する女
「どういいことですか?隙はないというのは」
「この方にあなたの心は届いていないということですよ。ただの便利な女だとしか思われていないのです」
瑠美は日頃からなんとなく感じていたことを、今日会ったばかりの梢女という女性に言い当てられ、真っ赤な顔をして立ち上がった。
「そんなこと……そんなこと言われなくても……あなたに……分かってますよ」
「もうこんな所に居られないわ」
小走りに出口に向かう瑠美を、仕方ないという目つきで追いながら、梢女も立ち上がった。
「帰ります。速く会計してちょうだい」
会計の店員がモタモタしているのにしびれを切らした瑠美は、肩を震わせながら、スリッパのまま出口に向かった。
これに動揺したのは受付の店員だった。
「梢女さん!お客様が!」
梢女はキッと瑠美に目をやった。
出口の前に立つ瑠美がドアを開けると、その先に漆黒の闇が現れた。
「!」
瑠美は一歩踏み出した弾みで、その闇に引きずり込まれそうになった。
瑠美が絶望と恐怖で体を強張らせた時、黒い縄のような物が腰に巻きついた。
瑠美の体は宙に浮き、次の瞬間、強い力で那楽華の玄関に引きずり込まれた。
「世話の焼けるお客様ですね」
床に倒れた瑠美が見上げると、縄を持った梢女が立っていた。