七話 変わらない意志
十歳も終わる頃、シヴィは領主の部屋に呼ばれていた。
「シルヴィ、今までよく頑張ったな。このままここに居てほしいくらいだ。だが、行くのだろう?」
「はい。多くのことを学ばせて頂きました。本当にありがとうございました。」
三年間、シヴィの意志は変わっていない。暇があれば勉強会を覗いていたくらいだ。それに毎日、帰りは寄り道をして誰も居ない場所で魔法か剣術の復習をしていた。
「寂しくなるな。リノアも暫くは拗ねるだろうな。」
「それはどうでしょう?」
シヴィ、笑顔だ。何を隠しているんだ?
「どういう意味だ?…まぁ、良いだろう。」
笑顔が崩れないシヴィを見て、領主が諦めた。
「失礼致します。」
そう言って頭を下げ、シヴィは部屋から出たのだった。すると、リノアが少し離れた場所、廊下の突き当たりでシヴィを待っていた。
「居なくなるのか?」
「この屋敷で働くことがなくなるだけで、ここに来なくなるわけではありません。」
「今までは毎日会えた。」
寂しそうだ。リノアはシヴィ大好きだな。
「そうですね。たまに会うこともまた楽しみの一つですよ?」
「何故そう言える?」
「守りたい人が出来たか、その人をどれだけ守れるようになったか、会わない間の自分の成長を色々と話すことが出来るではありませんか。」
「そうか。…そうだな。」
そう言って、自分の部屋に戻っていった。勉強があるのだろう。
「明日、話そうと思ってたんだけどな。」
「キュ?」
シヴィは笑っていた。なるほど。あの作り笑顔はこのことだったのか。
翌日、シヴィは領主の屋敷に居る人全員に見送られた。
「皆様、三年間ありがとうございました。」
「シルヴィ!俺、頑張るからな!」
「はい。私も負けないように多くのことを学んできます。…それでは、失礼致します。」
笑顔でリノアに言った後、みんなを見て綺麗に頭を下げると、領主の屋敷を後にした。




