六話 スン侯爵庭にて
「シルヴィ・ランスです。宜しくお願いします。」
まずは掃除。それから厨房の雑用。というように簡単な仕事から始まった。俺はそれを応援する。一息ついたところでシヴィの頬に頭スリスリをしている。シヴィは慣れない仕事で汗をかいていた。
「ルヴィありがとう。」
「キュー。」(どういたしまして。)
お互い小さな声だった。
一年経つ頃には、シヴィも言葉が丁寧になった。もう領主の子どもの世話役兼遊び相手もしている。子ども、リノアはシヴィの二歳年下だ。
「シルヴィ!魔法を使えるのだろう?見せてくれ!」
リノアがシヴィを庭に連れてきて振り返ったかと思うと、目を輝かせながら言った。
「リノア様、大変申し訳ありませんが、見せることは出来ません。」
「何だ?使えるというのははったりか?」
魔法を見せてもらえるのが当たり前と思っていたであろうリノアは、誰が見てもわかる程、不機嫌になった。
「違います。リノア様、力とは見せる為にあるのではありません。守る為にあるのです。ですので、私は使わないのです。」
八歳とは思えない程、大人なことを言っている。俺なんて見せるくらいならと思ってしまった。でも、よくよく考えると、リノアが真似して魔法を使おうとしたら危険なんだよな。
「守る為?」
「そうです。大切な人を守る為に力は使うものなのです。いつかリノア様にも守りたいと思える人が出来るはずです。その為に学ばれて下さい。」
「わかった。シルヴィにはその守りたい人がいるのか?」
「います。」
俺の頭を撫でながら言った。
「誰だ?」
「内緒です。」
シヴィの笑顔が眩しい。誰だろう。ずっと一緒にいるけど、そんな人、家族くらいしか思い付かないのだが。




