三十六話 報告は大事
「して、お主はこの国を護ってくれるのか?」
場が落ち着くと、王様が俺に向かって言ってきた。これからエルフが攻めてくる可能性が高くなったんだ。当然の質問だ。
「護りますよ。シルヴィ・ランスが居ますので。」
「何故、そこまで彼に尽くそうとする?」
「今まで俺を護ってきてくれました。だからです。」
「恩返しか。まぁ、良い。それ以上は聞くまい。」
俺にとっては当たり前の答えしかしていない。以前、クロノアからも聞いたからだろう。答えたくないことを察してくれたようだ。
「ありがとうございます。」
俺達は謁見の間を出て、クロノアの執務室に戻っていた。二人は仕事に戻っている。
「ルヴィ、敬語使えるならクロノア様にも使わないと。」
困ったように言うシヴィ。
「クロノアはクロノアだろ?」
「そうだな。シルヴィは何時になったら敬語がなくなる?」
「え!?俺が責められるのですか!?」
シヴィは想定外だったらしい。クロノアも意地悪だな。笑っている。まぁ、そんな俺も笑っているんだが。
「それにしても、竜種を集めているとは聞いていなかったぞ。」
クロノアは落ち着くと、真面目な顔になって言った。
「推測で言ったんだ。エルフの多くは竜種と契約している。エルフを信頼していない竜種。そして、俺と契約しようとしてきた。何かあるだろ?」
「それもそうだが、竜種と契約しているエルフが多いということも初耳だぞ。」
あれ?そうだっけ?
「言ってなかったっけ?」
「聞いていない。」
怒っている。ちょっと怖い。
「ごめん。」
「まぁ、良い。だが、世界を支配か。」
許してくれた。心が広いな。
「言っとくけど、竜種がどのくらい居たかはわからないからな。会ったのはアイスドラゴン一体だけだ。」
「他に言っていない情報はあるか?」
他は…どうでも良さそうなんだけどな。一応言っとくか?
「ん~。俺が招待された家は他の家より大きかったから、偉いエルフじゃないかな?俺が助けたエルフはクロス・エト・ノワールっていうんだけど、クロス様って呼ばれてたし。このクロスって人はシャドウウルフと契約してた。俺が会った竜種の契約者はこの人のお爺さんっぽい人だ。あと、エルフは長寿でお爺さんは三百年くらい生きてるって言ってた。…これくらいかな。」
「ノワールはエルフの里の名前だ。そのお爺さんが里長だろうな。里長の竜種が中級なら、上級は少ないだろうな。だが、竜種でなくとも、上級の魔物と契約している者が居るのか。厄介だな。ルヴィリカ、お前、倒せるのか?」
どうでも良い情報じゃなかった。言って良かった。クロノアは複雑な顔をしていた。
「今のステータス的にはシャドウウルフは余裕。竜種相手は…俺みたいに二回進化してなければかな?竜種の鑑定もしてないし、戦ったこともないからわからないけど。」
「お前一人に任せはしないさ。援護は人間でも出来るだろう。」
任せてくれと言わんばかりの笑顔のクロノア。
「それは心強いな。」




