三十三話 人化の結果
数日間、人化の練習をした俺は、シヴィから貰った服に自分の魔力を馴染ませた。こうすることで、人化した時も服を着た状態になれるようになった。
「クロノア、見てろよ。」
クロノアの執務室では三人になることが多い。だから、シヴィがクロノアの前での人化を許してくれた。人化した俺をクロノアが言葉を忘れて驚いている。
「どうだ!」
どや顔で胸を張る俺。
「いやいやいやいや。人に化ける魔物なんて聞いたことがない!」
ここに居るんだけど。現実逃避かな。頭を悩ませている。
「竜種だから、ルヴィリカだから、では通じないレベルだぞ。」
暫くしてそう言ったクロノアは「父上に報告だ。」と言いながら、仕事に戻った。
「仕事手伝おうか?」
クロノアが王様に報告したのかしてないのかわからないまま何日か経って、暇な俺は忙しそうなシヴィとクロノアに言った。
「手伝ってもらうわけにはいかない。これらは俺達が把握しておかなければならない仕事だ。」
そうか。それは残念だ。手伝えないな。
「じゃあ、城下町に行ってくる。シヴィ、ほんの少しお金貸して。」
そう言うと、二人ともガバッと顔をあげて俺をガン見した。そんなに驚くことないじゃないか。
「何だよ。」
「お前一人で?大丈夫か?」
シヴィもクロノアの言葉に凄く頷いている。
「お金くらい使える。俺がどれだけシヴィと一緒に居たと思ってるんだ。」
「違うんだ…ルヴィは童顔でどちらかと言うと可愛い系の顔なんだ。女性に間違えられて連れ去られそうで心配…。」
今度はクロノアが頷いている。確かに日本人は童顔が多いとは聞いたことがあるけど。
「フード被れば問題ないだろ。それにいざとなれば、戦えるんだ。大丈夫だろ。」
その為のフードだったのかは知らないが、俺の上着にはフードが付いている。
ということで、心配する二人を置いてやって来た城下町。頑張る二人に何か差し入れ出来ないかなぁ。そんなことを思って歩いていると、焦げ茶色のフードを被った怪しげに歩く男を見かけた。そのフードの中には長い耳。エルフだ。俺を探してるんだ。俺がこの国に居るのがばれるのも時間の問題だな。




