三十話 投薬の後
「エルフの里、ガイスの迷宮の向こう側に行ったと。」
王立薬学研究所から戻って、クロノアの執務室に入ると、開口一番にそう言われた。
「最初は迷宮内で大怪我を負っているエルフが居たから、助けたんだ。」
「で、お礼をしたいとでも言われて付いていったと。」
「あぁ。」
「知らなかったんだ。仕方ない。それで?ルヴィリカ、お前から見てエルフはどうだった?」
腕を組んで、唸るように言ったクロノア。
「何百年も生きているだけある。竜種に詳しかった。だが、竜種はエルフを信頼していなかった。あと、帰る時、俺を追ってくる奴が居た。」
「撒いたのか?」
驚いた後、納得した表情をしたクロノアは、わかってはいるが確認の為というように聞いてきた。
「あぁ。撒いた後に転移したんだ。追ってくるにしても、暫くはこの国に辿り着けないよ。」
「そうだな。暫くはだな。父上に報告して、警備を強化する必要があるな。シルヴィも忙しくなるぞ。」
「はい。」
シヴィは不安そうに俺を見て返事をした。俺はシヴィから離れていかないからな。安心させるように俺は久しぶりにシヴィに頬擦りをした。
「人に化けれないかな。」
「!?難しいんじゃないかな。」
夜、俺の呟きにシヴィが驚いた。この世界で人化した魔物が居るなんて聞いたことがない。驚くのも当然か。
「難しいと思うから出来なくなると思うんだ。」
元は人間だ。大体の体の構成は知っている。出来るはずだ。
「それでも、今はしたら駄目だよ。暫くは安静にって言われたんだから。」
「そうだな。治ったら挑戦してみる。」
「俺の居ないところでしないでね。」
俺を大事に抱えながら、ベッドに向かい始めたシヴィ。
「何故?」
必然的に上目遣いで聞くことになった。
「何処で誰に見られるかわからないからだよ。夜、この部屋でだけにして。」
「わかった。」
シヴィが不安そうに言うから、そう言うしかないじゃないか。




