二十九話 薬
翌日、体力と魔力はまだ元に戻っていない。回復しては減るを繰り返している。俺は仕事をしているシヴィの肩で大人しくしていた。シヴィって人気があるのかな。たまにすれ違う同い年くらいの女性が振り返ってシヴィを見ている。
「お、ルヴィリカではないか。久しぶりに会ったな。」
相変わらずのクロノアだ。
「久しぶりだな。」
「なんだ、元気がないな。」
久しぶりに会ったのによくわかったな。そう、少しだけど、だるいんだ。
「体力と魔力に異常が起きているのです。」
シヴィが代わりに答えてくれた。
「鑑定。…これ、体内の魔力の流れが不安定になっているのではないか?薬師に頼めば治るかもしれないぞ。一緒に行くか?」
「今からですか!?」
仕事中のシヴィ。驚くのも無理はない。
「そうだが。早い方が良いだろう。仕事は後だ。俺が許可する。」
流石、クロノアだな。シヴィが俺を心配しているのをわかっている。
「ありがとうございます。」
そうして、やって来た王立薬学研究所。薬師が多く居る。ミントグリーンの髪色の男性が気付いて近付いてきた。
「クロノア殿下!本日はどうかなさいましたか?」
「俺の騎士の相棒の様態が悪くてな。治してやって欲しい。」
「かしこまりました。この私、王立薬学研究所局長リトア・ノブル・ラインにお任せ下さい。こちらです。」
案内された部屋に入ると、俺は机の上に降ろされた。
「鑑定させて頂きますね。鑑定。…なるほど。魔力の流れが不安定になっている。回復する時に体力を使ってしまうと。他に気になることはありましたか?」
「エルフの料理を食べたそうです。」
「エルフ…。この国にエルフは居ませんが。」
言いにくそうに言ったシヴィを訝しむリトア。シヴィは悪くない。悪いのは俺だ。
「俺がエルフの里に勝手に行った。」
「!?…魔物の管理はしっかりするのが基本ですが、反省しているなら良いでしょう。彼は賢いようなので今回は多目に見ます。それに、クロノア殿下のお願いでもありますし。」
俺が答えると驚かれた。そして、仕方ないといった様子で多目に見てくれたが、厳しいな。次はないと言っている。
「ありがとうございます。」
「エルフの出すものは簡単に食べないことです。鑑定でもわからない成分が含まれていますので。エルフは食べ慣れているから問題ありませんが、そうでない者が食べると身体に異変が起こります。今回のように。今の症状にはヨギの葉が効くでしょう。煎じますのでお待ち下さい。」
すると、よもぎに似た葉っぱを持ってきて煎じ始めた。そして、出来上がった薬を飲んだ。もの凄く苦い。
「暫く安静にしていれば治るでしょう。では、お大事にされて下さい。」
「ありがとうございました。」




