二十八話 体の異変
俺はお爺さんの竜に会わせてもらっていた。アイスドラゴンだ。馬と同じくらいの大きさだ。だからだろうか、竜舎に居る。首輪を付けて、繋がれている。まるで犬だ。
「クークー。」(初めまして。初めて竜に会った。)
「グオ、グオォォ。」(警告、人間、気を付けろ。)
「クー。」(ありがとう。)
契約しているのは何故だろう。人を信頼していなさそうな言葉だ。信頼しないのも無理はないか。さっきから魔力と体力が少しずつ減ってきているんだ。何もしていないのに。やっぱり料理に鑑定でもわからない効果のあるものが隠されていたんだ。帰ろう。
「竜にも会えたから、帰る。」
「まだゆっくりして良いのだぞ?」
お爺さんの笑顔が胡散臭い。
「主との契約があるのでな。」
約束だけど。
「それは仕方ない。送ろう。」
悲しい顔も胡散臭くなってきた。
「必要ない。道はわかる。」
そう言って俺はガイスの迷宮に向かった。すると、三人のエルフがこっそり付いてくるではないか。俺は速度を上げて、迷宮に入って、適当にくねくねと道を曲がっていく。見失ったのか、遠くで慌てた声がする。俺は直ぐに転移して、シヴィの部屋に戻ってきた。
「ルヴィお帰り。」
「ただいま。」
「見させてね。…鑑定。」
シヴィは俺が戻ってくる度に鑑定をするようになっていた。俺が頷くと、シヴィは鑑定した。すると、怪しむ表情になった。多分、体力と魔力の減りに気付いたんだろう。
「どうして、今、体力と魔力が減っていくの?」
「エルフに何か食べさせられた。鑑定でも効果がわからないもの。」
「エルフに会ったんだね。…取り敢えず、減ってる間は俺と一緒に居よう?心配だよ。」
複雑な表情をしたシヴィ。エルフに何かあるのか?いや、あんな奴らだ、何かあるのだろう。
「心配してくれてありがとう。そうする。」
「明日、クロノア様に、エルフのことを報告しておこうか。」
「やっぱりエルフと何かあるのか?」
「エルフは人間を見下していて、人間と仲が悪いらしい。今、勉強中だから、詳しくは知らないんだ。ごめんね。」
「俺もエルフの勉強しようかな。」
申し訳なさそうに言うシヴィに笑って言ってやった。
~クロスのお爺さん視点~
「申し訳ございません、ノトス様。」
追手に出した三人が戻ってくるなり、謝罪の言葉を口にしてきおった。
「見失ったか。賢き竜だ。追手に気付いておったのだろう。」
迷宮に入れば、見失うのも無理はない。だが適当に進めば道に迷うものだ。何処かで休んでおるやもしれぬ。
「迷宮の他の出入口に近い国に行くのでは?」
クロスの考えも一理あるな。「俺の国」と言っておったし。
「そうであるな。クロスの出会った場所が近かろう。何処で出会ったのだ?」
「比較的この里に近い場所で出会ったもので…。申し訳ありません。」
クロスもまだ若いの。迷宮と出入口のそれぞれに里の者を捜索に当たらせようか。
「良き。他を当たろうて。」




