二十七話 竜種の強さ
いくつもある道を迷うことなく進むクロスに少し警戒しながら付いていくと、出口が見えてきた。出るとそこは森の中。俺が入口から見た時は森なんて何処にもなかった。上昇して森の上から見てみると、出てきた方角には、今いる場所から少し離れて海がある。更にその先に崖がかろうじて見えた。下ったり上ったりしたが、海の中を通っていたのか。
迷宮の出口に戻ると、クロスとグロウが待っていた。更に付いていくと、集落に着いた。大木の途中だったり、根元だったりに木の家がある。自然に溶け込んだ集落だ。
「クロス様、お帰りなさいませ。」
他より一際大きな家に入ると、女性のエルフが出迎えた。
「食事を用意してくれ。竜種を連れてきた。彼は客だ。」
「かしこまりました。」
エルフの食事か。ちょっと気になるな。
俺の前に出された料理。森から採ってきましたと言わんばかりの木の実ばかりだ。グロウの前にも同じものが出されている。クロス達の前には同じものと、スープが並んでいる。
鑑定の結果、特に麻痺とか睡眠とかを促すようなものはなかった。だけど、見たことない木の実ばかりで、本当に安全なものなのか疑ってしまう。
「何も入っておらぬよ。そうだ、話でもしながら食べようじゃぁないか。賢き竜よ、念話が出来るのであろう?」
エルフのお爺さんが話しかけてきた。クロスにでも聞いたか?
「何故、わかる?俺を連れてきた男にでも聞いたか?」
「聞いてはおらぬよ。先程、食べ物を鑑定していたであろう?目が文字を追っておったではないか。つまり賢いということ。竜種の中でも賢き竜は念話が出来るのだ。」
鑑定していたのがばれている。
「俺は賢いのか?」
「賢いぞ。この里には竜と契約している者が多くいるが、そなたほど賢き竜は居ない。念話を使える竜でも、かろうじて会話が出来る程度なのだ。」
このお爺さんが料理を食べ始めると、他のエルフも食べ始めた。グロウは既に食べている。俺も食べるか。それにしても、エルフは皆、金髪碧眼なのかな。
「何故、竜種と契約している者が多い?俺の住む国では、竜種は弱いと言われていて、契約している者を見たことがないが?」
「昔は全ての人間の国で竜と契約している者が多く居たのだがな…そうか。竜種が弱いは正しいとは言えぬ。竜種は人と一緒に居ることで強くなるのだ。進化前は弱いのだから、人と一緒でなければ、危険と隣り合わせの魔物の世界では生き延びても二、三年程で死ぬであろう。」
「何故、昔は多く契約者がいたのに今は居ない?」
「五百年程前は戦争が多く、進化した竜種が戦争に駆り出されていた。わしも戦争に出ておったなぁ。だが、ここ四百年程は戦争が起こっておらん。その間に戦争以外で駆り出されなかった竜種はいらなくなった。他の竜種はそなたのように小さくはない。食べ物や場所の問題があったのだろう。殺されたのだよ。そして、人間の王でも考えたのであろう。竜種を進化させるのは苦労する。他の魔物が十や二十で進化するところを竜種は五十なのだ。弱い期間が長い。ならば、竜種は弱いと思わせれば良いとな。」
「それで竜種は弱いと嘘の知識を植え込まれた人間は、竜種と契約しなくなったと。」
頷くエルフのお爺さん。それにしても、やっぱりエルフの寿命は長いな。だから、レベルの最大値も五百なのか。




