二話 親友
あれから俺は生きている。そう、生き延びたんだ。何故か。子どもが俺を大事に扱ってくれたんだ。片手で俺の腕を掴んで上に上げて、暫く見つめられた後、ベッドに下ろされた。その間、俺はぶらんぶらんしていたわけだが。その後、俺は子どもの親に見つかった。俺が取られそうになると、子どもが泣き出すもんだから、親は困っていた。それから俺はケージの中に入れられて、子どものベッドで飼われることになったんだ。
「ルヴィリカ、おいで。」
俺は六歳になった子ども、シルヴィに呼ばれた。だが、俺は振り向くだけ。黒に見える綺麗な深い青色の髪と目で微笑んでいるシルヴィと目が合った。ルヴィリカと名付けられた俺にはルヴィという愛称がある。こちらの方が好きだ。それをわかっているのだろうシルヴィは困り笑顔を作って再度呼んだ。因みに、シルヴィの愛称はシヴィだ。
「ルヴィ、おいで?」
「キュー。」
返事をしてシヴィのところに向かった。すると、手の上に乗せられた。俺はちょうどシヴィの片手サイズなんだ。初めて会った時からシヴィの片手サイズだから、俺も成長してるんだろう。
「母さん、行ってきます!」
「行ってらっしゃい。」
父親は仕事に行っていて居ない。警備の仕事でもしているのだろう。魔物がどうのという話をよくしている。
さて、買い物だ。俺は今、シヴィの胸ポケットに入っている。母親が俺専用に大きめに作ってくれたんだ。隠れることも出来るし、顔を出すことも出来る。
「おじさん!今日も買いに来たよ!」
「おぅ!シヴィ!今日は良い野菜が手に入ったぞ!」
いつも元気な八百屋のおじさん。気前がよくて、シヴィと仲良くしてくれてるんだ。
「やったぁ!これとそれと…これも下さい。」
「あいよ!…お、今日も相棒連れてるのか。仲良いなぁ。」
「キュー!」(友達だからな!)
「ありがとう!ルヴィは友達だからね。」
「大事にしとけよ?竜種は弱いが滅多に出会えない存在なんだからな。」
「もちろん!親友なんだ!ルヴィは僕にとって大切な存在だよ。」
俺は灰色のトカゲみたいな姿をしているが、竜種だったらしい。しかも何故か弱いらしい。実際、俺は攻撃をしたことがないから言えた義理ではないが、解せぬ。
◇シルヴィ日記◇
物心着いた頃にはルヴィリカと一緒に居た。その頃に両親から名前を付けるように言われた。それで僕の名前に似せてルヴィリカと名付けたんだ。幼いながらに悩んだのを覚えている。それともう一つ覚えていること。それは名付けた瞬間に「ルヴィリカ」の文字と「るい くきの」という文字がルヴィリカから見えたことだ。すぐに消えたし、両親も見えていないと言っていたから、何なのかわからないままだ。
ある時、それを考えていると、口からボソッと「ルヴィ」と言ってしまったんだ。「ルヴィリカ」と「るい」が混ざったんだと思う。すると、いつもの寝たような体勢をしていたルヴィリカが僕が驚くくらいの勢いで、バッとこっちを見たんだ。ルヴィリカも驚いていたように思う。そして、嬉しそうに鳴いた。もう一度「ルヴィ」と呼ぶと尻尾を振りながら寄ってきて、頬擦りをしてもっと呼んで欲しそうにしていた。それからだ。ルヴィリカがルヴィと呼ばないと反応が薄くなったのは。




