十五話 将来
「これはこれはクロノア殿下。ようこそおいで下さいました。此度はどのような御用でしょうか?」
スン侯爵庭に着くと、領主自ら笑顔で出迎えてくれた。リノアはその後ろでクロノアに頭を下げていた。
「いや何。友の故郷に遊びに来ただけだ。特に用があるわけではないが、泊まっても良いか?」
「とんでもございません!我が屋敷、ご自由にお使い下さい!」
「助かる。」
「シルヴィはお帰り。」
シルヴィには優しく微笑んで出迎えてくれた。
「ただいま戻りました。」
「シルヴィ!俺頑張ったんだ!」
誉めて!と言わんばかりのリノア。クロノアを無視して良いのか?それにまだ玄関だぞ?
「そうですか。リノア様には及ばないと思いますが、私も頑張りましたよ。それと、ここはまだ玄関ですので、クロノア殿下を中に案内しましょう?クロノア殿下、客室はこちらです。」
リノアに構わず、案内を始めたシヴィ。流石、慣れている。
「…シルヴィはクロノア殿下の下に行くのか?」
後ろからついてきながら、リノアが不安そうに聞いてきた。そういえば、学院卒業したらシヴィは仕事どうするのだろう?
「将来についてはまだ決めかねています。今は自分の学を上げること、ルヴィリカを知ることに重きを置いていますので。」
「そうか。シルヴィの目的はそうだったな。俺はいつでもお前を受け入れるからな!」
自慢気に言うリノアだが、シヴィは戻ってくるとも言っていないぞ。
「ありがとうございます。ですが、他の者も受け入れる心をお持ち下さい。」
「わかっている。」
笑顔で言うシヴィにリノアは拗ねた。
『上手くかわすのだな。だが、いずれは決めねばならぬことだぞ?彼の言う通り俺の下に来るか?』
『わかっていますが、考える時間を下さい。』
『お?冗談のつもりだったが。良い返事を期待しそうになるな。』
クロノアとシヴィは念話でそんな話をしていたらしい。一年間で念話まで習得したんだ。二人とも凄い!あ、俺も人間の念話習得したぞ!