十話 第一王子
「入学おめでとう!このクラスの担任を任されたキース・アロウだ。宜しく!さて、この学院には様々な身分の者が居る。それぞれのクラスも同様だ。身分は関係ない。この学院では二年生から成績と学びたい分野でクラスが変わる。各々頑張ってくれ。」
担任の自己紹介と激励が終わると、新入生の自己紹介が始まった。
「クロノア・リオ・アースだ。宜しく。」
銀髪で碧眼の少年の短い自己紹介で、皆固まった。この国の名前がアース王国だからだ。つまり王族。貴族と違って、王族は第一の名と第二の名がある。この人の場合は、「クロノア」が第一で「リオ」が第二だ。
「シルヴィ・ランスです。それから、親友のルヴィリカです。宜しくお願いします。」
「キュー。」(よ、宜しくお願いします。)
流石、シルヴィ。スン侯爵の下で働いていただけのことはある。気後れせずに王族の後に自己紹介をした。次いでに俺のも。
「シルヴィ、お前おもしろい奴だな。俺の後に堂々と親友の紹介までするとは。気に入った!俺は第一王子のクロノアだ。宜しく!」
自己紹介が終わって休憩時間になるとクロノアがシヴィに近付いて言った。王子だったのか。王子って偉そうな態度のイメージあるけど、そんなに偉そうにはしてないな。
「ありがとうございます、殿下。私はシルヴィと申します。そしてルヴィリカでございます。宜しくお願い致します。」
「そう畏まるな。寂しいだろ?俺のことはクロノアと呼んでくれ。やっぱり竜種だな。」
「キュ?」(宜しく?)
何だろう?先程と同じように掌に乗せて紹介された俺をクロノアは覗き込んできた。
「わかりました。では、クロノア様とお呼びします。あの、ルヴィリカが何か?」
「竜種は珍しいなと思っただけだ。弱いから相棒にしている者を見たことがない。」
これだけ弱いと言われてきたら、相棒にしている奴なんていないよなぁ。でも、まさか、王族まで弱いと言うとは。何か隠してると思っていたんだけど。いや、まだシヴィと同い年くらいだ。まだ何も知らない可能性もある。
「そうなのですね。ルヴィリカとは物心着く前から一緒に居るので、一緒でないことは考えられません。」
「キュ!」(俺もシヴィから離れるなんて考えられない!シヴィに護られて生きてきたんだ。いつか絶対弱いなんて言わせなくしてやる!)
「長い付き合いなのだな。…だが、そう簡単にはいかないか。まぁ、今はそれで良いだろう。いずれは素を出させてやる。」
俺を見て、優しく笑ったクロノアは、今度はシヴィを見て目標を言った。
「親しくなってもクロノア様に対して人前で素はよろしくないでしょう。」
「人前でなければ良いのだな?」
「親しくなったらです。」
「わかっている。」
可笑しくなったのか、シヴィは静かに笑った。つられて、クロノアも静かに笑った。仲良くなりそうな予感のする二人だ。