一話 死ぬ!?
もし転生するなら、ドラゴンが良い。俺、久木野 琉唯は転生ものの物語を読んだ時に思ったことがある。ドラゴンって最強じゃないか。そう簡単に死ぬようなことはないはず。それに、翼がある。移動が楽になる。恐れられるかもしれないが、そこは自分の行動次第なんだ。良いことしかない。
ここはどこだ? 凄く狭い。体勢を変えようとしたら、周りにあったものが割れた。不意に外に出て視界に入ったもの、それは俺の胴体らしきものがまだ入っている卵。そして、数個の卵とそれらを上から見ている爬虫類っぽい大きな顔。
ちょっと待て。状況を整理させてくれ。
病弱で抱き枕が友だった俺はいつ死んでもおかしくない日々を過ごしていた。遂に、死んでしまったのか? 今は爬虫類っぽい姿をしている。何かはよくわからない。つまり、俺は転生した。
そして、さっきから俺達を見ている大きな顔は親なのだろう。見ているだけで何もしてこない。多分、まだ生まれていない卵を見ている。
ここは、薄暗い。所々で下から光が漏れている。何かあるのか? 上手く動かせない体で頑張って卵から出る。
覗いてみると、人間がいた。声は聞こえるけど、言葉がわからない。貧しそうだ。服がボロボロで補修した跡がある。父、母、息子の三人暮らしかな。息子は幼い。一歳くらいだろう。
情報が少ないな。もっとこの世界のことがわかる情報が欲しい。そう思ったところで、お腹がすいた。親のところに戻ろう。何かくれるはずだ。
またぎこちない動きで歩く。ほとんど匍匐前進だ。ほんの少ししか動いていないのに遠い。最初から俺の卵が一番離れたところにあったんだ。
そして、俺は穴に挟まった。それも逆さまでだ。進んだ先の光が漏れているあたりが弱っていたのか、足を取られた。そのまま滑ったんだ。どうやって抜け出そう。もぞもぞと動いてみるが、抜け出せない。親よ、気付いて引っ張ってくれ。
そんな願いも虚しく、暫くするとパキッと音がした。待て待て待て待て。落ちる!
死ぬかと思った。気付いたら子どもの枕の上にいた。いや、待て。これも絶対死ぬ。
「あー」
あ、死んだ。
◇親日記◇
生まれた。一つ離れた。下見てる。
来る。動き、危ない。不安。
落ちた。一つ死んだ。