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赤い少年  作者: はるさめ
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昔の自分を見つめ直すとき

  その少年は赤い色の付くものが好きだった。赤い模様の服、赤色の箸、赤色の帽子、靴持つもの全てに共通して赤色が付いていた。そして色の割合のほとんどが赤色のものほど良く少年は好んで持っていた。少年がそこまで執着して赤色のつくものを好むのに特に理由はなかった。赤色といっても色々な赤色がこの世に存在するが少年が好む赤の色は唐紅の色に近いほど好む傾向があった。少年にとっては直感として好きだったのだろう。だった、とあるように今の彼は赤色が好きではない。いや、この表現には少々、語弊が生じる。今の彼にとっては色の好き嫌いなどはどうでも良いことの一つとなってしまった。

 なぜならば彼はもう四十を越えたいい大人になっていたからだ。全ての大人が色の好き嫌いなどどうでもいいというわけではない。だが殆どの大人がそうであろう。だが彼は自分が子どもの頃に赤色が好きだったことは良く覚えていた。何かしら持っているものには赤色が含まれていたし、彼の母親や、古くの友人からも自分が赤色の付いたものが好きだったと聞かされていた。だから彼も自分は赤色が昔好きだったと思い込んでいる。

 いつから赤色のことを気にしなくなったのだろうか。そう思うと彼は深く考え込んでしまった。幸いにも今は深く考えても周りにも彼にも支障は出ない。彼がいる場所は自分の家である。家といっても築40年経ったボロアパートの一室なのだが。6畳1Kの部屋の中、彼は自分自身の記憶を探っていた。

 一番古い記憶では彼がランドセルを買いに母親と祖父と一緒に雑貨店に買い物に行った時のことだ。当時は小学生の持つランドセルは男の子なら黒色、女の子なら赤色のランドセルが普通だ。だが当時の少年には女の子の使う赤色のランドセルがえらく輝いて見えていた。どうしても赤色のランドセルが欲しく、少年は当時自分で出来る最善の行動をした。ランドセルの特設売り場の近くの床に寝転がり、暴れ出したのだ。これは某国民的アニメの5歳児と同じ手法だ。これには母親と祖父も根負けし、赤いランドセルを購入した。

 彼がそこまで思い出して満足したのかこの前購入した本を読むことにした。彼の輝かしい赤い少年の心はもう彼の中には存在しない。今の彼はその日の仕事をこなすことだけで1日が終わってしまうこともしばしばあった。なので本をゆっくり読むことも昔のことを思い出すことすらあまり出来なかった。忙しいさの中で彼は身体を壊してしまった。そのため仕事を休み、身体を休めていた。その中で読みたかった本を読み、昔を思い出していたのだ。

 

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