研究部
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「おーい!大丈夫か!?」
崇の声が響きわたる。
「あぁ。先に行っててくれ!」
拓斗が必死に返事をすると、崇の潔い声が再び響いた。
「ねぇ、もう帰らない?」
優花の声だ。そこには懸命な吐息が混じっていた。
「……そうだな」
流石の亮も疲れたかのように呟く。
「メールでもしておくか」
拓斗は崇に引き返すことを告げた。そして、許可が下りると、ゆっくりとその足を180度ひねり、軽快に身体の向きを変えた。
「もう、疲れた〜」
ワガママそうに大きな声で美花がわざとらしく呟く。一同は面倒なのか、疲れて声も出せないのか、返事をする者はいなかった。
「おい!」
拓斗が声を上げた。
「なんだ」
亮が、鬱陶しいかのように反応する。
「えっ…………?」
何とも間抜けな声だった。意図せず漏れた声はその場の空気に溶け込んだ。
「なにこれ……」
明らかにそれは死体だった。頭皮は引きちぎれ、鼻が取れ、一方の目玉は飛び出ていた。さらに、腕は捥げ、橈骨が突き出ている。腹は引き裂かれ、内臓がぶち撒かれていた。
「うっ……」
噎せるような感覚。余りの刺激から身体が強ばる。逃げ出したい衝動に駆られるが、1人で逃げたところで却って危険な状況に陥る。かといって、この場に留まる訳にもいかない。このジレンマに押し潰されそうになる4人は誰かの言葉を必死に待っていた。




