Gなお姉さん
「出ていけ、クズ!」
「あんたなんか勘当よ!」
そう言われて家を追い出された。
僕の居場所はもうない。親は僕のことを周囲にあることないこと言いたい放題言ってダメ人間だとずっと愚痴ってるし、みんなからも当然だと思われているだろう。学校でも魔法もろくに使えず勉強もできない僕は除け者にされている。
「はぁ………」
これからどうしようか。もう僕には何もない。これからの行くあても金も職も寝る場所も今日食べるものすらない。
とりあえず草原に寝っ転がり考えてみる。お腹が空いたので隣に生えてる草に手を伸ばそうとした。その時、唐突にお姉さんに話しかけられた。
「ねぇ、Gなお姉さんと一緒に冒険してみない?」
知らないお姉さんから声をかけられる。誰だ、この人は。羽があるから天使だな。
「なぜですか?」
「それは退屈だから〜。あなたも暇そうだし、どこか一緒に出かけない?」
「嫌です。めんどくさい」
「そんなこと言わずに。ほら、お姉さんが作る暖かい手料理を夕食に用意してあげるから」
「夕食か……」
猛烈に腹が減っている俺にはパワーワードすぎて欲望に逆らえなかった。
「じゃあ一緒にいきますよ。めんどくさいけど」
「ええ、お願いね。貴方には私の護衛をして欲しいのだけれど…」
「天使なら人間より強いからこの辺なら楽勝だと思いますよ。もしそれ以上なら俺に護衛なんてできません」
「いいえ、私にも戦えない事情があるのよ。見て、このステータス」
そこには見たことないほどGが連なっていた。
「お姉さんも大変ですね」
「そうなのよ〜、こんなのだから全然契約してもらえなくて………。そのせいで、今人々を守るために神様から受けるクエストっていうのをやってるんだけど全然進まなくて………。ついに天使界をクエストクリアするまで永久追放されちゃったのよ」
「それはご愁傷様。で、どんなクエストなんですか」
「これなの。『ゴブリンを一匹退治する』」
「退治すりゃ良いじゃないですか」
「でもでも、お姉さん戦闘したことないしGランだし…これまでこなしたクエストも全部戦闘以外だったのよ。そしたらある日長老様に『お前は体を鍛えい!人間を守るのが我々の使命。まずはこのクエストをクリアするまで戻ってきてはならん』って言われちゃって」
「ふーん、これまで何のクエストをやったことがあるんですか?」
「街中で巨大なシチュー作ってみんなに分けたり、迷子の子を家へ連れ戻したり、猫舌の子供の所に行ってフーフーしてあげたり…」
「そんな仕事あるんですね」
めんどくさがり屋更正クエストとかないのか?とか思いながらテキトーに会話を流す。
「Fランから階級が出てきてレベルにあったクエストが出るから、Gランは戦力外ってことなの」
「じゃあさっさと倒しますよ」
「あ、その前に契約してくれない?う〜ん、姉弟がいいかな。仮契約だけでもしておかないとクエスト達成したことにならないから」
「わかりましたよ。やりゃ良いんでしょう」
「私が唱え終わったら私のことをお姉ちゃんって呼んで。お願いね。ゴニョゴニョ」
お姉さんは詠唱を始める。
「お姉ちゃんって呼んで?」
「お姉ちゃん」
「タクト君」
そう言いながらお姉さんは俺の手をとった。すると手が暖かい光に包まれる。光が消えると、仮契約としてお姉さんは義姉になっていた。
「これからはG姉って呼びなさい?いい?」
「はいはい。あ、ゴブリン見つけた」
「ああ、でもゴブリンさんにはゴブリンさんの生活が…ああ、なんて酷いことをしようとしているのかしら。ダメ、私には攻撃できないわ」
ゴブリンはにじみ寄ってくる。
「ああ、こんなことならいっそ私のことを殺して!」
G姉は無防備な体をさらけ出す。するとゴブリンは武器を片手に突進してきた。
「ちょっ、何やってんだ!」
ーーズバッ
横からG姉を襲う前にゴブリンを切った。俺はG姉の方を見ないようにしながら言う。
「はい、クエスト完了です。敵の前で武装解除とか自殺行為ですよ」
「脱いだら私のGの威力にやられるんじゃないかと思って。でも助けられちゃった。ありがと」
「次回から気をつけてください」
「ともかくこれで天使界に戻れるわ!ありがとう。夕食、後で作るから、18時に街中広場にいらっしゃい。とびっきり美味しいのを作るわ!」
「俺の好みに合う味をつくれるかな」
「大丈夫、お姉ちゃんに任せなさい!」
「ええ。まあ食えりゃなんでも良いですけど」
「んもう、素直じゃないんだから〜。そんな子には……ギューーッ!」
唐突に抱きしめられる。
「うわっ!」
なんだこの弾力は!こっこれはGカップというやつだ!
「うふふ、Gの威力、堪能してもらえたかしら。じゃまた後でね。バイバイ」
そう言って天使界へ飛び立っていった。ぐうぅと俺の腹が鳴る。夕飯が待ち遠しい。先に広場に移動しとくか。