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最後の夢の彼方へ ~for the light of tomorrow~  作者: edwin
第二章 雷火と硝煙
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第十五話  『大丈夫だよ』

「アスカさんアスカさん、起きてください」


 寝室に入って来たサリアは一瞬、隣ですやすや寝ている金髪ツインテールに視線を向けた。


「なんだ……何かあったの?」

「とにかく来てください。見たほうが早いです」


 サリアの表情は見たことないほど切羽詰まっている。


「……わかった。今行く」


 洋服を急いで着て、サリアの後をついていった。

 この世界の誰よりも深く信頼しているサリアだからこその素直な態度だ。


「ここ、城の地下牢なのか?」

「そうです。コルタルシ領の領主の『監獄』です」


 嫌な予感がした。

 なんでここに連れられているの? ここに一体誰がいるっていうのよ?


「まさか……」

「アスカさん、ごめんなさい。本当に、本当に、ごめんなさいです」

「まさかまさかまさかまさかっ!」


 その薄暗い檻の中に一人の()()の姿が微かに見えた。


「おい、ここを開けろ! 早く!」

「は……はいです!」


 サリアが慌てて鍵を差し込んで、回して。

 わたしが檻の扉を蹴飛ばして中に入り込んで


「いやああああああああああああああああ!」


 止まった。


「くるなくるなくるなくるなっ!」


 床に転がっているその赤髪ショートの女の子を見間違うはずがない。


「結衣……?」


「いや……いたいのはもういや……」


「結衣、わたしだよ飛鳥だよ――」


「ゆるしてください! いうことききますからなんでもしますからもうゆるしてよ!!」


「結衣っ……聞けよっ……」


「あたしなにもしらないよぜんぜんわるくないよしんじておねがいだからしんじてっ!」


「もう大丈夫だよわたしが救ったよ――」


「くるなああああぁぁぁっ」


「結衣……」


「っ、ぅ、ぅ、ぅぇぇぇぇ……っ」


「結衣結衣結衣結衣結衣っ!」


「ぅ、ぅぁぁ……ぁぁぁ……ぁぁあああああっ!!」


「大好きだよ結衣わたしが結衣を守るんだよ」


「ぅぇぇ……ぁぇ…………ぁ、あす……ちゃん?」


「そうそうわたしだ大丈夫だ」


「ぃ、いや、いや、いやああぁぁぁぁ」


「結衣!!」


「あたしはひとりだだれもたすけてくれないんだうそをつくなっ!」


「なんで、結衣……なんでっ」


「もういやもういやだいきたくないいきたくないんだっ」


「聞いて結衣……悪い人達は死んだの。もう結衣を傷つける奴はいないんだ!」


「うそだうそだうそだうそだ!! いやあああぁぁっ!」


「嘘じゃない! この城に、この領に残っている人はみんな優しいの! わたしが信頼できる、わたしの大好きな仲間だ!」


「おとこはいや! いたいのはいや! あたしのからだにさわらないで! なめないで! いれないで!」


「ぅぅ、結衣、ぁぁぁ、結衣、わたしが守るよ! 愛してるよ結衣!」


「……いやあぁぁ……いやっ」


「春乃は? 春乃は一緒じゃなかったよね? 春乃は()()に入らなかったよね!?」


「はる……の?」


「そうそう春乃だよはるはるだよ! お……覚えているよね? 春乃のこと?」


「はるはるはいないよあすちゃんもいないよあたしはひとりだったずっとひとりだったっ」


「よかっ……いや良くはないけど、春乃は無事か……」


「あすちゃんにあいたいよはるはるにもあいたいよ」


「うん……わたしも、春乃に会いたいよ! 一緒に探そう? ね?」


「だめだもうあえないあたしはずっとここにいるっ」


「結衣っ! 結衣…………」


「い……いやあああぁぁぁぁぁっ」


「わたしね、ダリアン領っていう場所に飛ばされたの。そこでね、サリアっていうかわいい頑張りやさんの女の子と、エルちゃんっていうかわいい生意気な女の子に出会ったよ」


「…………っ」


「わたしは運が良くてね、優しい人達に助けられて、そこでみんな力を合わせて悪い奴をやっつけたんだ」


「っ?」


「わたし達、火薬をいっぱい作ったの。あの時の花火よりずっとずっといっぱいの、だよ。連軍っていう軍隊を組んで、アルナリア帝国に戦争を挑んだよ」


「ぁぁ、ぁぁぁっ」


「すべては結衣と、春乃のためだったよ。わたし、結衣にもう一度会いたくて、会いたくて、夜で一人で結衣のことを考えながらいっぱいいっぱい泣いたよ」


「あす……ちゃんっ?」


「わたしが覚えてる限り、こんなに長い間結衣に会えなかったのは初めてだったよ……春乃にも、お母さんにも、お父さんにも、誰にも会えなくて、凄く、凄く、寂しかったよ」


「あすちゃん……」


「でも、やっと見つけたの、結衣のことを……わたしよりずっと辛かったけど、わたしが想像できるよりずっとずっとずっっっっっと苦しかったけど、結衣はここに、わたしの手の中にいる」


「ほんとうに、あすちゃんなの?」


「もう、どこにも行かないでね、結衣。わたしの側から離れないでね、結衣。危ないことはもうしないでね、結衣」


「あたしを、たすけてくれたの?」


「わたし、帝国を潰すよ。結衣を傷つける奴は一人残らずこの世から消してやる。安全な、平和な世界を作り上げるよ」


「あたしはもう、苦しまなくてもいいの?」


「だから笑ってもいいよ、結衣。わたしは結衣の凄く綺麗で、いつも元気で、キラキラな笑顔が好きだよ! わたしは結衣の笑い声を聞きたい、結衣の温もりを感じたい、結衣の手を繋ぎたい!」


「ありがとう……ぅ、ぅぅぇぇ……ありがとうあすちゃんっ」


「もう大丈夫だよ。もう、心配しなくてもいいよ。わたしがなんとかするよ」


「はるはるは……いないの?」


「まだ見つけてないけど、結衣はここにいるし、春乃もどこかで無事だきっと」


「みんな……ばらばらになったね」


「でも今は二人だ。ほら、立てる?」


「いたいぃぃぃいやいやいやあぁぁぁっ!」


「っ!」


「はぁはぁはぁはぁ……ごめん」


「謝らないでよわたしのせいだよごめんなさい!」


「ごめんね、あすちゃん……」


「結衣……」


「あたし、だめになったかも」


「そんなことないよきっとすぐ治るよっ!」


「あたし、いっしょにいけないかも」


「そんなこと言わないでよ……お願いだよ」


「あたし、こわれちゃったかも」


「結衣、結衣……ふえぇぇ、ぅぇぇぇぇぇぇ……」


「ごめんね」


「う、う、うわああ、うわあぁぁぁぁ~!」


「…………」


「ふえええぇぇぇぇぇぇ、うわああああああああぁぁぁぁ」

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