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最後の夢の彼方へ ~for the light of tomorrow~  作者: edwin
第二章 雷火と硝煙
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第十話   『科学への侮辱』

 一年前。


「ね、あすちゃんはさ、卒業したらお母さんみたいにアレナイトサイエンスで研究者になるよね」


「うん、そうだけど?」


「いいな……あたしも、将来の夢がほしいな」


「結衣も研究者になるんじゃなかったっけ?」


「あたしもそう思ったんだけどさ、最近あまり自信がなくて……ほら、あたしはあすちゃんみたいに成績トップじゃないし」


「それでも十分だと思うけどな結衣なら……じゃあ、なんでもいいなら結衣は何になりたいの?」


「なんでもいい?……えへへ~」


「なになに? 教えてよ!」


「いやちょっと恥ずかしいけどさ」


「大丈夫誰にも言わないから」


「本当に~?」


「本当本当約束するから親友として約束するから」


「あたし、恋愛がしたいな……素敵な嫁さんと一緒に暮らして、バカみたいに毎日イチャイチャして、それで仕事も一緒で、同じ目標に向かってめっちゃ頑張って、職場でも家でもお互いの側から一瞬も離れられなくて、最高に幸せな恋愛がしたいな」


「…………」


「その目で見ないでよ!」


「だって意外なんだもん」


「べ……別にいいだろう」


「それで相手はどんな人がいいの?」


「そうだね……あすちゃんみたいにかっこよくて、頭もよくて、自信に満ちて、でも同時にめっちゃ優しくて、いつもあたしに笑顔を向けて……」


「…………」


「~~」


「大丈夫、きっと結衣もアレナイトサイエンスに入れるから~」


「あすちゃんのバカ!!!」


   ※ ※ ※


 熟考した結果、我々ダリアン領の軍勢を『連軍』に名付けた。


 人間もエルフも、庶民も貴族も一緒に連盟を組んで、アルナリア帝国の圧政からみんなを解放する、という意味を込めて。


 連軍の最高上位は総統アスカ、つまりわたしに決めた。フィンラを人軍の総長にしたことで人間達もエルフ達も納得した。


「それにしてもいいのでしょうか?」


 サリアは不安そうにわたしの左隣に座っている。


「大丈夫だって。これだと逃げられないからむしろこっちのほうが安全だろう」


 わたしの右隣に拳を強く握っている下着姿の金髪ツインテールお姫様を見ながら。


「アスカさんがそう言うなら……でも二人っきりのほうがよかったかもです」


 連軍はコルタルシ領に侵攻するために出動準備中である。


「まぁ気にしなくてもいいんじゃない? ほら、ペットみたいなもんだし」


「……絶対殺す……」


「いやペットはそんな不穏なこと言いませんから!」

「こらっ、エルちゃん、サリアと仲良くしようね」

「……その名前で呼ぶな……」

「もう……」


「それにしてもアスカさんは本当に凄いです! 私達のお姫様をこんなふうに扱うなんて! さすが総統アスカです!」

「いやいやサリアだって凄く頑張ってるだろう? 偉いぞサリア」

「えへへ~ 私、アスカさんの補佐として頑張ります!」


 火照っている顔をわたしに近づけながら、サリアがわたしの手を明るく取った。


「まさかわたしなんかがアスカさんの恋人になるなんて……夢みたいです」

「こらっ、そういうこと言っちゃダメだろう。むしろわたしのほうが感謝したいぐらい」

「そんな! だって、アスカさんはこんなに綺麗で、こんなにかっこよくて、こんなに頼りになるんですよ」

「それを言うならサリアはこんなに可愛いじゃない? わたし、サリアの髪型も、サリアの小さな手も、サリアの柔らかい唇も、大好きだよ」

「アスカさん……」

「サリア……」


「……いつまで続くのよお前ら……」


 そういえばペットが一匹あったな。


「それじゃあ、いくつか質問させてもらおうか」

「私は何も言わないぞ」


「魔法について、知りたいのよ。どうやって魔法を使うの? その力はどこから来るの? 条件も、限界も、範囲も、種類も、教えてよ」


「何も言わないって言っただろう」


「だって、意味わかんないよ! エネルギー保存の法則だよ、その力は無から湧いてくるわけではないよね? だから自分の体を消費してるのか? それとも空気とか高次元とかからエネルギーを吸収してるのか? もしくは未来技術のナノマシンを操っているのか?」


「何言ってるのかわからないけど」


「いや魔法なんてあるわけないよね笑わせるなよ……科学が追いついてないだけ原理はまだ解明出来てないだけ……宇宙は物理法則に従って動いてるに違いないええそうだよわたしは騙されないよ」


「お前、サリアだっけ?……こいつ何言ってるのかわかるのか?」

「いいえ全然。アスカさんは時々こういうふうにおかしくなるんですね……」

「変な人……」

「でもそれも好きです!」

「お前も変だ……」


 周りがなんかうるさいけど気にする余裕はわたしにはなかった。


 だって魔法は科学への侮辱だけじゃなくて、我々の最大の敵でもある。


 銃や火薬さえあれば剣や鎧は相手にならないけど、魔法はまだ未知数で、明日の戦争に一人の強力な魔法使いに全滅される可能性だってまだ否定できない。


 でも『原理』を解明できればわたしも使えるようになるのか? わたしも、エルちゃんみたいに指先から炎を溢れさせて、敵や障害を燃えさせるのか? わたしも、かっこいい中二病っぽい名前を貰えるのか?


 他に、どんな可能性があるのだろう? 無限の電力供給源? 枯渇性資源の再生? 超光速航法? 他世界へのゲートの解放? タイムマシーンの開発?


 死者の蘇生?


 とにかく凹んでる場合ではない。科学者として、人間として、このミステリーに溢れている新世界の神秘を解き明かさなければならない。


 明日の戦争に敗北しなければ、だけど。

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