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最後の夢の彼方へ ~for the light of tomorrow~  作者: edwin
第一章 新世界へ
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プロローグ 『わたしには夢がある』

 わたしには夢がある。


 それは多くの人にとってはあまりにもちっぽけな夢かもしれない。

 あまりにも子供らしくて、あまりにも自分勝手で、あまりにも平凡な夢かもしれない。


 でもわたしにはそれでいい。

 人類なんて滅んでもいい。

 世界なんて救わなくてもいい。


 ただ、わたしの一番大事な人、わたしの誰よりも何よりも大切な人と一緒に生きたい。

 わたしのかけがえのない日々を取り戻したい。

 わたしの大好きな人にもう一度「大好き」って言いたい。


 そのためならなんだってする。

 帝国でも世界でも、人類でもエルフ類でも、地球でも神でも、わたしの邪魔をするなら潰してやる。

 お前達の光なんて知ったことか。


 だって、わたしには夢があるから。


   ※ ※ ※


「めっちゃ楽しみよね!」


 左の赤髪ショートの女の子はわたしの親友、東峰(とうみね)結衣(ゆい)


「そうそう~ もう待ちきれないよ~」


 右の茶色ポニーテールの女の子はわたしの親友、鳴瀬 (なるせ)春乃(はるの)


「ちょっと、二人とももうちょっと静かにして……目立ってるよ」


 そして真ん中にいるのはわたし、伊吹(いぶき)飛鳥(あすか)

 わたし達三人は桜ヶ丘女子高等学校二年生で制服を着てるんだけど、周りにはほとんどスーツしかいない。


「だってあすちゃん、今日は世界初めての実験なんだよ! 歴史に残る一日なんだよ!」

「結衣ちゃんの言う通りだよ飛鳥ちゃん~ 冷静でいられるほうがおかしいよ~」


 そう。今日は世界一の大企業であるアレナイトサイエンスがCERNや東京大学の協力を得て十年以上かけてやっと作り上げた世界最大の素粒子実験。

 本来なら普通の女子高生がいていい場所ではないけれど、わたしの両親が今日を可能にした科学者チームの重要メンバーで、友達を連れて見に行く許可が下りた。


「いいか結衣、春乃よく聞け。今日はそんなに重要だからこそ、わたし達には静かに見守る義務がある。わたしのお父さんとお母さんの人生の結晶だからね」

「わかったよわかりましたよ。あすちゃんは真面目だね」

「ごめんなさい~」


 言葉は厳しくても表情はキラキラな笑顔。わたし達は小1からの幼馴染で、いつもこんなふうに喧嘩してるけどみんな大好きで、これからもずっと一緒に大人になっていく。

 はず、だった。


「もうすぐ始まるって! ねぇ、もっと近くに行こうよ」

「そんなことしていいの?」

「だいじょーぶ、マスコミの人が言ってた! いい写真になるって! ほら、あすちゃんも」

「しょうがないなー」


 写真を撮らせるのはあまり乗り気ではないけど、今日の実験を間近で見たい気持ちのほうがずっと強かった。

 だって、わたしも本当は今日が楽しみで楽しみでしかたがなかった。


 ずっとお母さんに憧れた。綺麗だけじゃなくて賢くて努力家で、みんなから尊敬と羨望の目線を集めながらあまり気にせずに最先端の素粒子物理学に取り組んでいるお母さんはわたしのアイドルで、わたしのヒーローだった。

 だからわたしも一生懸命勉強してる。物理学も化学も、社会科学も経済学も、歴史も文学も。いつかアレナイトサイエンスに入って人類の未来を左右するために。

 もちろんわたしの大切な二人の親友と一緒に。


「ねぇ、手を繋ごうよ」

「こう?」

「意外と大胆だねあすちゃんは!」

「違うわ! だって、未来への第一歩だから、一緒がいいって思った」

「いいと思う~ 飛鳥ちゃん素敵~」

「もう、からかわないでよ春乃」


 もうすぐわたし達の世界、わたし達の運命が変わる。


「カメラマンだ! みんな笑顔、笑顔!」

「いや恥ずかしい~ わたしのポニーテール大丈夫かな~」

「っていうか実験撮ろうよ実験を」


 安全安心だったはずなんだけどなぁ。


「カウントダウン始まった! じゅう!」

「きゅう~」


 でもまさか今日の素粒子実験って……


「ろく!」

「ご~」


 みんな、大好きだよ。


「にー!」

「いち~」


 一瞬で部屋に、空に、東京に光が溢れ出した。


 その次の瞬間、強い風がわたし達の身体に衝突した。


 考える暇なんて、なかった。


 わたしの二つの手から、二人の手が消えた。

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