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しばらく泣き叫んだあと、ミネアは力尽きた様に意識を失った。床に倒れそうになった小さな体を抱き留め、ゼノはため息を吐く。
いくら王族とはいえ、ミネアはまだ庇護されるべき幼体だ。祖父の死はショックが大きすぎたのだろう。
ガシガシと金茶の髪を掻き回し、どうしたものかと思案する。流石に意識のないミネアを放置して帰るのは後が煩そうだから諦めるしかないが、意識を取り戻すまで待つのも面倒だ。
片腕でミネアを抱き上げ、オロオロとしている少年王に視線を戻す。
「で? その使者はどうした」
「えっ……? その、ミネア様を客間に案内したほうが良いのでは……?」
「あ? 別にコレでいいだろ」
「いや、でも。女の子にその扱いは……」
心配そうにミネアを見て話を進めようとしないマリスに、ゼノは思いっきり舌打ちをする。
「わざわざ俺を呼びに来ようとしてたってんだから、なんか急ぎの用があんだろ? さっさと要件を話せ」
「あ、う、えっと。その、要件の一つは姫君の捜索だったので……」
「じゃあミネア置いてくから俺はもう帰っていいか?」
「いや! あの、よ、要件は、もう一つありまして……」
マリスは、もはや泣きそうな声でゼノを呼び止めた。そして何回か深呼吸をして自身を落ち着かせると、使者がもたらした情報を説明する。
「5日ほど前、逆賊が皇帝を弑し、自身が皇帝であると名乗りを上げたそうです。しかしその男は獣王の系譜ではなく、ただの獅子族の者とのことで、自身の正当性を示すために姫君を伴侶にしようと血眼で探していると」
「はぁ? ソイツ、幼女趣味なのか?」
「ゼノさーん、ふざけてないで真面目に聞いてくださいよぉ」
思わず出た言葉に、カインが半笑いで突っ込みを入れた。馬鹿にされているようでかなりイラっとしたが、話が進まなくなるのでカインの存在は黙殺してマリスに続きを促す。
「えっと、現在伴侶を持たない獣王の系譜の方は、ミネア様だけだそうです。だから正当性を示すために、幼体でも伴侶にするつもりのようです」
「はっ、クソだな」
「本当ですよねぇ。だから、そんな男をさっさと引きずり下ろすためにー、ゼノさんにもご協力頂きたいなぁと」
「はぁ? 何でワザワザ首を突っ込まなきゃなんねーんだよ。そもそもアルジュマ国なら、そんな逆賊もさっさと排除出来るだろ」
獣人の国であるアルジュマ国は、ただの一般市民であっても非常に頑強だ。皇帝を殺したからといって、たった一人の逆賊がそのまま君臨することなど不可能なはずだ。
当の逆賊自身、それが分かっているから、獣王の系譜の伴侶という正当性を作ろうとしているのだろう。
「その、逆賊はアルジュマ国軍の将軍で、軍は掌握されているそうです……」
「皇帝殿が穏健派なおかげで近頃平和でしたけどー、獣人選民主義な方達からしたら、不満が沢山だったそうですよぉ。その逆賊は獣人選民主義の強硬派みたいですねー」
「使者が代表する穏健派の依頼もありますし、なにより、このままでは我が国にも危険が迫るので……。ど、どうか、ゼノ殿のお力をお貸しください」
少年王の言葉に合わせるように、いつも顔に張り付けている笑顔を消したカインもゼノに対して頭を下げる。さらに謁見の間に集まっている重臣たちも、ゼノに対する助力を口々に言いながら頭を下げていく。
とても断れる空気でないこの場に、ゼノは盛大にため息を吐きながら了承の言葉を口にするのだった。




