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本日2話投稿してます。こちらは2話目になります。

 その日は晴天に恵まれた、とても良い日だった。アルジュマ国の帝都は朝からお祝いムードで盛り上がり、活気に溢れていた。

 今日は、ミネアの誕生日であると共に、成年の儀と(つがい)の儀を執り行う日なのだ。


 初めはミネアの番となるのが人間で、しかも『賢者』ということで反対する人も多かった。しかし、ミネアの懐きっぷりや何だかんだと仲の良い様子に、次第に周りも何も言わなくなっていったのだった。

 そしてミネアが成年になる今となっては、皆が祝福している。


 宮殿付近の大通りは勿論、小さな裏道までお祝いの飾りが付けられ、綺麗に装飾されている。また、街中を出歩く人々もお祝いの意味を込めた装飾で身を飾り、見た目からとても賑やかな状態だ。

 そしてこの華やかな装飾は、勿論宮殿内のあちこちにも飾られている。荘厳な白亜の宮殿は、これ以上ないほどに美しく飾り立てられて、最早落ち着かないレベルだ。


 今日の主役の片割れとも言えるゼノは、そんな煌煌(きらきら)しい宮殿の片隅、比較的落ち着いた雰囲気の部屋で時間を潰していた。

 本当は、ミネアの成年の儀にも出席して欲しいと乞われていたのだ。しかしアルジュマ国の人間ではないし、何よりそういった儀式は柄じゃない。

 全力で出席を拒否し、番の儀まで一人静かに待つことを選んだ。


「ほんっと、柄じゃねぇよ……」


 今日のために用意された盛装の首元を緩めながら小さく呟く。

 はるか昔、生まれ故郷で着ていた服装を除いては、いつもラフで普通の平民な格好なのだ。こんなに金糸や宝石でふんだんに飾られた服なんて、着心地が悪くて仕方ない。

 とはいっても今の格好は魔術師の盛装風で、シンプルな服の上に飾り立てられた丈の長いコートを羽織るだけで済んでいるから、まだマシだ。最初はミネアのドレス姿に合わせ、貴族の礼装のような服を用意されかけたのだ。しかも、その礼装は白ベースのものだったので、全力で抵抗したものだ。


 遠い昔のようにも感じる最近の攻防を思い出していると、軽やかな足音が向かってくるのが聞こえてきた。どうやら成年の儀が終わったようだ。

 扉の方へ視線を向けると、美しく着飾ったミネアが入って来る。


「ゼノ!」

「おー。ミネア、お疲れさん」


 金糸と翡翠で飾られた白いドレスを身に(まと)ったスラリとした姿は、少女から女性へと移り変わろうとしている。化粧を施された顔も、澄ましていれば幼さが抜けた美しい娘のものだが、今はぶっくりと頰を膨らませていて台無しだ。

 余りにも格好と似合わない表情に、思わずゼノは笑いを零す。


「笑うなんて、酷いのじゃ」

「悪い、悪い。そんな顔すんなって」


 背が伸びたおかげで昔より近くなった頰をそっと撫でる。金色の髪は美しく結い上げられているので、頭は撫でられないのだ。

 まだ少し不服そうな表情ではあるが、嬉しそうに笑ったミネアは、ゼノをまじまじと見つめる。


「…………何だ?」

「ゼノ、格好良いのじゃ」

「柄じゃねぇよ」

「じゃが、似合っておる。自慢の伴侶じゃ!」


 するり、と腕に抱き着いたミネアは、ゼノの顔を見上げる。

 その瞳には、不安の色が浮かんでいる。


「ゼノ、本当に、妾の番になってくれるかえ?」

「どっちかっつーと、それは俺の言葉だな」

「どういうことじゃ?」


 首を傾げるミネアに、ゼノは苦く笑う。


「この20年で、お前は成長した。でも、俺は変わらない。この先も、ずっとだ。多分、番の契りを交わしてもそれは変わらない。最後もどうなるかは分からない。それでも、お前は良いのか? こんな、一緒に歩いていけない存在を、唯一の伴侶に選んで良いのか?」


 もう長いこと、ゼノは今の姿のままだ。

 獣王の系譜の番となることで、この果てのない生を終わらせることが出来るかもしれない。でもきっと、老いることはないだろう。

 『賢者』の呪縛はとても強力なのだ。


 こんな存在とずっと共に()り続けることは、辛いはずだ。

 ミネアは聡いから、きっと既に気付いている。だから、取り返しがつかなくなる前に、引き返すべきなのだ。


 そう思って問いかけたが、ミネアは呆れたようにゼノを見つめるのだった。


「ゼノ。妾の番はゼノでいい、じゃないのじゃ。ゼノ()いい、のじゃ。ゼノでなくては嫌じゃ」


 そして少し背伸びをしてゼノの頰を両手で包んだミネアは、花のような美しい笑顔を向ける。


「じゃから、つまらぬ事は考えないで、妾と共に生きて、共に死んでおくれ?」

「っ……。はは……、すげぇ言葉だな」

「妾の本心じゃ!」


 ゼノから離れ、胸を張るミネアに思わず笑いが零れた。

 そしてミネアの左手を取り、手首に着けている誓いの円環に口付ける。


「分かった、誓う。二人の最後の日まで、共にいよう」

「ゼノ!」


 感極まって飛び付いたミネアを優しく抱き締め、ゼノは笑う。


「そろそろ時間だろ。儀式の間に行かなくていいのか?」

「まだもう少し大丈夫じゃ。だから、しばらくこのまま」

「はいはい、仰せのままに」


 くすくすと笑い合いながら、迎えの者が来るまで二人は寄り添い続けたのだった。

ここで本編は最後となります。

二人のさいごについては決めてありますが、やはりこの物語の最後に投稿したいと思ってるので、一旦本編としてはここまで。

番外編として、20年の間のこととか、昔のこととか、本編に入れ損ねたものとかを書きたいと思ってます。

もしよろしければもう少しお付き合い下さい。

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