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最後の方、グロめな描写があります。

苦手な方はご注意ください。

 光が落ち着いて目を開くと、その場所は広い草原だった。無事、転移は出来たようだ。

 軽く息を吐いて右手を振り、持っていた杖を亜空間へ格納する。


 ざわざわしている兵の間をぬって進み、ミネアとファーズを連れてハルド騎士団長の元へ行く。


「ゼノ殿。お疲れ様です」

「ああ。で、どうするんだ?」

「まずは、情報を収集したいと思っています。ファーズ殿、魔獣討伐に向かわれた獣王の系譜の方々と合流することは可能でしょうか?」

「そうですね……。先方が今どの辺りにいらっしゃるか分からないので、少々時間がかかるかと。恐らく近くにはいらっしゃると思います」


 ファーズが悩みながら答えると、ハルド騎士団長はしばらく考え込む。それから身をかがめ、ミネアへ視線を合わせる。


「ミネア様。ファーズ殿を少々お借りしても良いでしょうか?」

「ファーズに伯父上たちを探させるのかえ?」

「はい。何よりも優先すべきは獣王の系譜の方々と合流することと考えておりますので、翼を持つファーズ殿の力を借りれればとても助かります」


 この作戦の指揮官として選ばれたハルド騎士団長は、幼い見た目のミネアを決して軽んじることなく、真摯に対応している。それに対するミネアも、いつもの自由奔放な振舞いは鳴りを潜め、泰然としていた。

 小さな顎に手を当てて少し考え込んだ後、ハルド騎士団長の申し出に応える。


「構わないのじゃ。ファーズ、早々に伯父上たちへこの状況を伝えるのじゃ」

「分かりました……。どうか姫様は『賢者』殿からお離れにならないように」

「当り前じゃ!」


 幼体である自国の姫を人間の中にたった一人残すことに非常に抵抗があるのだろう。ミネアの命令に対しても、ファーズはかなり渋々といった様子で了承した。

 そしていささか不満げな様子ながら、ハルド騎士団長に方針の確認を行って飛び立っていった。


「で、俺たちはどうすんだ? このまま待機ってわけじゃねぇだろ」

「ええ。少し、帝都の近くへ兵を進めます。それと共に、使者も派遣します」

「使者……? 殺されるんじゃねぇか?」

「その可能性は重々承知しております。しかし、ヒュメール国の立ち位置を宣言する必要もありますから」


 そう言うハルド騎士団長の顔は、冷徹な指揮官のものであった。ゼノは嫌そうに顔を顰(しか)めると、あっさりと身を翻す。


「そういうのは任せる。とりあえず進軍には付いてくけど、交渉には関与しねぇ。いいな?」

「はい。重々承知しております」


 そうにこやかに応えるハルド騎士団長に肩を竦(すく)め、ゼノはミネアと共に兵たちから離れるのだった。


   § § § § §


 そしてその日は転移した広野から少し帝都よりに移動しただけで、野営となった。

 日暮れ前に一度戻ったファーズは、無事魔獣討伐に向かった面々から合流する旨の返答を貰ってきていた。しかし、もっと南方で機を伺っていたらしく、ここまで追いつくのに少し時間が掛かりそうだった。


 ゼノはミネアと共に、兵たちとは少し離れた場所で野営の準備をしていた。ヒュメール国側からは、ハルド騎士団長などと同様の天幕へと誘われたのだが、冗談じゃないと断ったのだ。

 ただでさえ野営などという状況にイライラしているのに、親しくもない人間と一緒に居ては息抜きもできない。

 そう考え、いつの間にかミネアが一緒に居ることは当たり前のように考えている状況に愕然とする。


「いやいや、んな訳ねぇ。単に、護衛として一緒に居なきゃいけないと思っただけだ……」

「ゼノ? どうしたのじゃ?」


 焚火で料理を作りつつブツブツと一人で呟いていると、離れた場所に居たはずのミネアが近寄って来る。

 本当に小さな声で呟いていたはずなのに、獣人の聴覚は優秀すぎる。


「何でもねぇ。それより……」

「ゼノッ!!!!」


 ミネアを追い払うために適当な用事を言いつけようとした時、背後にぶわりと風を感じた。それと同時に、尻尾をピンと立てたミネアが金色の瞳を大きく見開き、ゼノの名を叫ぶ。


 何だ、と思った時には背後から強烈な衝撃を受け、ぞぶり、と身を貫く音を聞いた気がした。


「……っ、かはっ……!」


 何が起きたのか理解するよりも先に、せり上がってきた血を口から吐き出していた。

 腹部に広がる熱に視線を下すと、自分の腹から、鋭い爪を備えた太い腕が生えている。


 ああ、この熱は痛みなのだ。何者かに、腹を刺し貫かれたのだ。


 そう理解した時には、腹から太い腕が乱暴に引き抜かれていた。

 既に自分の力で立つことが出来ず、身を貫く腕に支えられた状態であったゼノは成す術もなく、地面へ倒れ伏すのだった。

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