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 その夜。ゼノはミネアと共に城内の会議室に呼び出された。

 絶対に面倒な話だと嫌々ながら会議室に入ると、少年王マリスを始め、カインや軍の将軍といったヒュメール国の上層部と、隼獣人のファーズが既に集まっていた。


「こ、このような遅い時間にお呼び出しして、申し訳、ありません」

「……構わねぇよ。明日のことだろ?」


 相変わらずゼノに怯えた様子で声を掛けるマリスは、眠気を隠そうともしないミネアとは違い、疲れた様子ながらも仕事を進めようとしている。そんな彼を見ては、協力してさっさと会議を終わらせてやらなければならない気になる。

 そんなゼノの様子をおもしろそうに眺めていたカインが、真っ先に口を開く。


「今回こちらからは、約千人の兵を送りますがぁ、侵略ではなく援助のためだということを明確に示すために、ファーズさんやミネアさん、あとゼノさんにも一緒に移動して頂きたいんですけどぉ……」

「ぬ? ゼノが共に居れば妾では何でも良いぞ」

「あー。まぁ、俺もアルジュマの転移陣の座標とかは知らねぇからな。一緒で構わねぇよ」

「ゼノさーん、座標知ってても、他国の転移陣に勝手に行かないでくださいよぉ!」


 転移する際、行き先を指定するために座標が必要となる。その辺の公園などに転移する場合は、大体の座標さえ知っていれば、多少位置はズレることはあるが転移が出来る。

 しかし大抵の城では防衛のために、転移無効の結界が張られているものだ。そして唯一転移可能な場所である城内の転移陣を使用するためには、正確な座標と使用許可の鍵が必要となるのだ。許可なく転移してこようとしても、結界に弾かれて侵入できない仕組みだ。


 勿論、城の転移陣の座標や使用許可の鍵は重要機密だ。通常は自国の転移魔術が使える上位の魔術師くらいしか知らないものだ。

 しかし、『賢者』であるゼノであれば幾つかの国の座標を知ってても不思議ではない。

 だが、現在ゼノはヒュメール国と契約関係にあるので、ゼノが変な動きをすればそれはヒュメール国の動きと取られかねないのだ。

「そんなことはしねぇよ。それより、明日の転移先はどうすんだ? 千人一気に転移させるなら、それなりの広さがなきゃ事故るぞ」

「それについては、ご安心ください。帝都近くに広野があるので、そこであれば問題ないかと」


 そう言いながらファーズが帝都周辺の簡易地図を広げ、帝都南部を指し示す。


「帝都からは少々離れていますが、街道からも外れているので人が居ることは恐らくないと思います。それに、魔獣討伐に出ておられる獣王の系譜の方々は、さらに南方の森に向かわれましたので、うまくゆけば合流も出来るかと」

「城が敵方に抑えられてて、他の獣王の系譜の方と連絡が取れないのが痛いですねぇ」

「それは仕方ねぇだろ」


 ため息を吐くカインにゼノも肩を竦める。

 王城であれば、国同士で連絡が取り合えるように魔道具を設置してある。しかし今回敵が籠っているのが王城であるおかげで、連絡を取ることもできず、アルジュマ国の今の状況が分からないのだ。


「結局、明日アルジュマに転移するだけ転移して、後は現地の状況次第、だろ?」

「そうなりますねぇ。陛下も、それで良いでしょうか?」

「それしか、ないと思います。現地での指揮は、このハルド騎士団長に任せています」


 そう言ってマリスが壮年の騎士を紹介する。

 穏やかに笑って礼をするその男は、人当たりが良く、仮に獣人たちと合流してもうまく連携を取れるだろう。連携などするつもりもないゼノまで含めて、うまく作戦を遂行するための人選だ。


「座標計算はカインたちに任せるぞ? お前らどうせ送るだけだろ」

「そうですけどぉ、千人も送るのは前例ないんですよぉ」

「知ってる。転移の時の座標指定とかの制御は俺がやってやるから、事前準備と魔力供給くらい、死ぬ気でやれ」

「も~、ゼノさんったら、冷たいんだか優しいんだかぁ」


 いつも以上に緩んだ笑顔を浮かべたカインに、ゼノは盛大に舌打ちをする。


「気持ち悪っ。もう用がないなら帰っていいか?」

「あ、は、はい! 夜遅くまで申し訳ありません」

「いい。おら、ミネアここで寝んな」

「んぬ~、寝ては、おらぬ」


 そう言いながらも半分目が閉じているミネアをため息を吐いて抱き上げ、さっさと会議室から退出する。

 そして部屋へ戻る道すがら、アルジュマ国に行った後を考えてゼノは金茶の髪をガリガリと掻く。


「さて、どーしたもんかねぇ。破壊すんなら簡単なんだけどなぁ……」


 物騒なゼノの呟きは誰に聞かれることもなく、静かな夜に溶けていった。

侵略じゃない云々言いつつ、他国の首都近くに直接1,000人も兵隊転移で送り込んだらアウトだと思いますが、ツッコまない方向でお願いします。

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