お腹が痛くてトイレに行って戻ってきたら、教室に誰もいなかった件
多少汚い表現が入ります。
また、稚拙な文章なのでご容赦ください。
(疲れた……)
俺は家に帰るやいなや、玄関を上がった先で倒れこんだ。
立て続けに起こる非日常に耐性がない俺の体はもうぼろぼろだ。
何でこんな目に…、そう思いながら俺は“あの日”のことを思い返した。
X月(Y-1)日、思えばこの日が全ての元凶かもしれない。
この日、俺は家族と一緒に親戚の叔父さんが送ってきた牡蠣を食べていた。
テレビで牡蠣や栄螺などの海産物を焼いて食べる場面をよく見たことがあるが、実際に食べるのは初めてだった。
美味しそうだなぁ…、って思ってたけどそれほど美味しいとは思わなかった。
多分好みの問題だと思う。
牡蠣を一つ分食って、しばらく経過した夜に俺はひどい腹痛に襲われた。
X月Y日、俺はトイレの中で夜を越した、ということはなく、午前零時までトイレに篭って後は就寝した。
翌朝、朝食とともに下痢止めを飲み、腹痛に苛まれながら電車に乗って一時間かけて学校に向かうという苦行を行う。
巡り巡ったトイレの数はもう覚えていない。
朝礼の十分前に着いた頃には腹痛は少し和らいでいた。
『おはよう智樹って、どうした!?』
『何が?』
『顔色悪いし、その隈はどうしたんだ』
『熊?いや、俺熊のキーホルダーなんて付けてねぇぞ。
生徒指導にバレたら怠いし』
『その熊じゃねぇよ。目の隈の話だよ』
『ああ、昨日から腹痛が酷くてね。それであまり眠れなかったんだよ』
『ノロか?』
『いや、食中毒かもしれない。昨日、□□県産の牡蠣食ったから』
『あー、ま、無理するなよ』
『もともとそのつもりだけどな、全く今日は意地でも学校に来なければよかったよ』
教室の入り口付近の席の友達と軽く話しした俺は自分の席に座った。
その後、五分も経たないうちに担任がやってきた。
本日の伝達事項と、現段階の配布物を配るとすぐに出て行った。
腹痛が治まっているうちに出来る事だけでも済ませておこうと思った俺は、珍しく教科担当の先生の元に赴き、提出物を出す。
行く先々で病院に行くことや、保健室に行くことを勧められたが、大丈夫だと言って退けた。
一時間目が始まり、いつもの英語の音読が始まる。
今日は俺がいる列が担当だったけど、俺をとばしてくれたのはありがたかった。
音読が終わって英文の和訳を始めたところで俺は手を挙げた。
『トイレか?行ってこい』
この時の俺はまだ、日常生活の枠組みに属していた。
“この時までは”
例え折れ線で表記したところでいう、谷の底のような部分に位置していても日常的に起こりうる範囲だった。
最寄りのトイレに駆け込み、腹痛の第n波が止むのを耐える。
非常に汚い話だが、もうこの頃には固体は出ずに液体を流しているような状態だった。
何度もトイレットペーパーで拭いた所為でとても、何処とは言わないけれども、痛く感じる。
一限目が終わる間際で、一旦切り上げるとて教室に戻ると事件”が起きていた。
教室に誰もいなくなっていたのだ。
途中まで黒板に書き記されたアルファベット、解きかけの問題集。
つい先ほどまで授業が行われている形跡だけが残っていた。
最初はもしかしたら、〈英語の先生に急用が出来て早めに休み時間になって、急な時間割変更で移動教室になった〉とか
〈誰かがあの赤いボタン(警報機)押しちゃって全校生徒避難した〉とか
〈気象庁が誤って地震の誤報でもして、皆んな避難した〉とか、考えたよ?
トイレに戻って、暫く時間が経った後戻れば皆んながいるとか、思ったよ?
でもね……。
三時間目にトイレを出て廊下を歩いていると、先生と出合い頭に「無事だったか!」とか、騒ぎを聞いたふざけた野次馬に「生存者一名!」とか言われるわけよ。
そのままその先生に職員室に連れられて何がったとか、聞かれるけど、それはこちらの台詞だし……。
その日は保護者が呼ばれて一緒に帰ったけど……。
次の日学校に行こうとすると、自称○○新聞や、◆◆宗教法人とかいう不審者に遭遇したり、追い掛けられたりと大変な目にあった。
学校でも、一部のイタイ連中が絡んできたり、何か悪さしたわけでもないのに、生徒指導室で課題やらされたり……。
その日の午後には何故か警察がやってきて数時間話をさせられたり……。
もう、だいたいこの頃には察してたよ。
これが『集団神隠し』って奴だよね。
小説だと、あれでしょ、異世界に召喚されて勇者やってるとか、そういうパターンの話だよね。
この騒動はSNSで全世界に拡散されちゃってるし、何か大きな騒動が起きてマスゴミの注意が逸れるのを待つか、人の噂は七十五日とか言うし、自然鎮火を待つか。
今日はあの日から一週間が経つけど、後二ヶ月以上この調子なのかな……。
本当、何で俺ばかりこんな目に会うのだか……。