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「・・・おはようイリス。」
「おはようございます。と言いましても、もうお昼は過ぎておりますけれど。」
「夜明けまでかかるとはね、さすがにまだ眠いよ・・・・。」
あれから、夜通し説明してなんとかご理解いただけたものの。また今日もお呼ばれされてしまった・・・
あのツンデレ領主・・・偉いからって、人遣い荒くありませんかね?こちとら一般市民だっての。
早朝に宿に帰ると、ウィルヘルムさんが温かく迎えてくれた。
だんだんこの街での癒しの存在になってるな、あの紳士。
「昼食を用意していただいてまいります。」
「ん、お願い・・・ふぁ~あっと。」
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遅めの朝食中・・・
「そういえばあなた?昨夜は何故、話の途中でお止めになりましたの?」
「ああ、うん。またいつもの勘で申し訳ないんだけどさ、なんかひっかかるんだよね。」
「そうですの?私は力を振るう分には問題ありませんけれど。」
「うん、そうなんだよね~。サクッと殲滅してもらっても良い気がするんだけど・・・」
「なんとなく、イリスはしばらくこの街にいてもらった方が良い気がしたんだ。まあ、言い方は悪いけど、イリスの力は決戦兵器みたいなトコあるし。」
「まあ、そうですわね。まだ、魔王方の意図が読めませんし、もう少し、状況を見てから動いても良いかしら。」
最強の嫁を持つと、飽きる事がないね。つまらないよりはいいけどさ。
「ご馳走様でした、うっし、じゃ、この後は、ご褒美を受け取りにいきますか!」
「ええ。」
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「あ!お帰りなさい!お二人共、すごすぎます!本当にドラゴン倒しちゃったんですね!」
「・・・・・((((マジかよッ!))))。」
もう周知済みか・・・領主様も仕事の早い事で。
「確かに「ドラゴンの黒鱗」です。あの!」
「ああ、テレーズ様から聞いてるよ。とりあえず、100万セル、よろしく。」
「はい!少々お待ちください!」
そうなのだ、昨夜・・・・
・・・「3000万セルなんて、今の状況じゃ無理!」・・・・
というテレーズ様の一喝により、分割にされた訳。
まぁ、大量の札束用意されても置場に困るから、ギルドを銀行扱いにできるのは便利なんだけどね。
「ところでイリス、今までツッコまなかったけど・・・なんでその恰好で来たの?」
盗賊風衣装!まさか、こんな普通に着てくるとは思わなかった!
意外と似合うけど!透けてる感じとか露出多すぎて、ものすっごい刺激的ですけど!
「今日は戦う事もないでしょう?旅を終え、私も少し疲れておりまして、服くらい楽な恰好をしたかったのですけれど。どこかおかしいかしら?」
全ッ然、変じゃないです。いつもの神聖さから、ワイルドなエロさに・・・
すごく・・・・暴力的です・・・・
おいコラ、そこのおっさん、人の嫁さんをエロい目で見るな、悪いのはイリスだけど。
「お待たせしました!どうぞお確かめください!」
「どうも、と。」
またお財布がパンパン、前世じゃ考えられんね。余裕があるって素晴らしい!
「さて、ではテレーズ様の所へ参りましょうか。」
妻よ、イリス様よ、本当にいつもありがとうございます。
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コンコン・・・
「はい。来たわね、もう・・・余計な仕事を増やさないでほしいわ。」
ついこの間まで暇っつってたじゃん。
「情報が多すぎたけど、ようやくまとまってきたわ。今回の件、貴方達には心から感謝しています。」
文句言うか誉めるか、どっちかにしなよ。
「お構いなく、私達はただ依頼をこなしただけですわ。」
「いいえ、貴方達が来る前に考えていたのだけれど、件のアンデッドドラゴンは魔王の所為かもしれないわ。」
まぁ、そうなるだろうね。
あの後、イリスから聞いたが、「掃除」ってのは魔族の始末だったようだ。
グラスヘイム、悪夢の森、両方に手駒を進めてる。この2箇所が落ちれば・・・
「もし・・・悪夢の森まで魔王の手に落ちていたら、エルカは挟み撃ちにあってた。ドワーフ同様、エルフまで魔王の兵に加わっていたかもしれない。」
「いくら感謝しても足りないくらいだわ。」
ただ、うちの嫁が旅行ついでに、神槍ぶっ放してただけなんですがね。
「今日来てもらったのは、別に問い詰めるためじゃないのよ。待たせたわね、屋敷が用意できたわ。ちなみに今日からもう住めるわよ。」
へ?マジで?思ったより早かったな。
「あら、そうでしたの。ありがとうございます。」
「どういたしまして、そういえば貴方達、夫婦なのに、苗字が違うわよね?元の世界じゃ普通なの?」
あ~そういえばそうだな。キリウとリヒトリュンヌ・・・
「エルロンドの民として、登録がいるのだけれど、こちらの世界では家族の苗字は一つよ?どうするの?」
「ん~・・・どうするイリス?」
「私は特別、自分の苗字には思い入れはありませんけれど。」
イリス・キリウ・・・・合わん。
ツヨシ・リヒトリュンヌ・・・これも合わん。
「じゃあ、「イリス・キリウ・リヒトリュンヌ」、「ツヨシ・キリウ・リヒトリュンヌ」でお願いします。」
「わかったわ。それで登録しておきます。そのうちステータスカードも変わるから確認しておいてちょうだい。」
え、コレ勝手に変わるもんなの?地味だけど、魔法ってやっぱすげぇな。
「・・・イリス・キリウ・リヒトリュンヌ・・・・・ふふ。」
あ、ちょっと嬉しそう。興味なさそうだったのに、可愛いなぁ・・・
「さて、とりあえず用件は以上よ。ところでイリスさん?その・・・もうちょっと着込んだほうが良いと思うわ。同じ女として。」
ツッコみが我慢出来なかったんですね、わかります。
「とても楽なのですけれど・・・」
本人はいたってお気に入りのようである。
旦那としては・・・二人っきりの時は是非!という事で。
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「ここか・・・・」
「そうみたいですわね・・・」
うん、あんまり豪華じゃないって話じゃなかったっけ?
「普通に大きいんだけど・・・・」
あのさ、テレーズ様?確かにあなたのでっかいお屋敷と比べれば、そこまでではないですけどね・・・
「夫婦二人で住むには、少し・・・広いですわね。」
珍しくイリスさんも驚いておられます。
「ドラゴン倒す報酬より高そうなんだけど・・・」
「まあ、せっかくですもの。ありがたく頂戴しましょう。」
今日も順応が早いねイリスさん!
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「なかも広いな~・・・」
家具、浴室、寝室、台所、ひっろい居間、と・・・・・・・あと結構部屋がある。宿かよ。
「持て余しますわね。まあ、倉庫が大量にあると思いましょう。」
「前の家主は貴族かなんかかよ。この壺とか間違えて割ったらどうすんだ?」
「もう我が家なのですから、気にせずともよろしいのでなくて?」
そうしよう・・・もう色んな事にさっさと慣れるのが、この世界での生き方だな。
「さて、では一度宿に戻って夕食をいただいたら、荷物を運んでしまいましょう。」
「おっけ。」
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「左様でございますか、宿泊の予定日数はまだございますが。」
「申し訳ない。とても良くしていただきましたから、返金は結構ですので。」
マジでお世話になったからな。それくらいちゃんとお支払いしよう。
「かしこまりました。当宿をご利用いただき、誠にありがとうございました。」
「こちらこそ。あ!ウィルヘルムさん、ひとつお願いが・・・」
「はい、いいかがされましたか?」
「しばらくしたら、執事かメイドを雇おうかと思ってるんですが、もし心当たりの人材がいたら連絡してもらえませんか?」
当分は必要ないけど、あんな広い家、二人じゃ管理しきれないしな。
「使用人をお探しでございますか。かしこまりました。いずれご連絡差し上げましょう。」
「よろしくお願いします。」
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何はともあれ・・・・
「ついに我が家持ちかぁ・・・。」
広いお屋敷、最高の嫁さん、お金持ちとくりゃ、もう万事快調、言う事なしだわ。
魔王とかもう無視じゃダメなんでしょうか?
「本当に、私の前世であれば、軽い貴族のような物ですわ。あなたの幸運は怖いほどですわね。」
「いや、全部イリスのおかげだろ、俺なんて、ほぼ見てるだけじゃん。」
「そんな事ありませんわよ?少なくとも、私が戦っているのはあなただけのためです。この世界のためではありませんもの。」
「・・・・・イリスゥ!!」
「きゃ!」
思わず抱きしめてしまった。
「もうなんて可愛いんだ!世界一可愛いよ!俺もイリスさえいてくれればそれでいい!!」
「あなた・・・」
「イリス・・・」
ドンドンドンドン!
「お~い!俺だ!フリックだ!ちょっといいかぁ!?」
んの野郎ぉぉおおお!!!!
お約束か!お約束なのか!!良い所で邪魔するんじゃねぇ!!!
「・・・・『ハヴァ・・・・」
「待てイリス!それだけはダメ!!」
居住初日に我が家がふっ飛んじゃうから!お願いだからそれはらめぇ!!!
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「いや~、夜分遅くにわりぃな。」
まったくだ、あやうく消滅の危機だったぞ、あんた。
「実はなぁ、お前らに会いたいってエルフがついさっきこの街に来てよ。エルフが街に来るなんざ、かなり珍しいもんで、とりあえず、テレーズ様んトコに預かってもらってんだ。」
「エルフ、ですの?」
「おう!これまたカッコいい兄ちゃんと可愛い嬢ちゃんでよぉ。「悪夢の森」から来たらしいんだが、結構ボロボロになっちまっててなぁ、手当がてらテレーズ様が保護したっつーわけよ。」
俺達にエルフの知り合いなんて、あの二人しかいない。何かあったのか?・・・・
「なるほど。それで今から引き取りに行け、と?」
「いや、さすがにもう時間が遅え、テレーズ様も話を聞くっつってたから明日会いに行ってやってくれや。」
「わかりました。」
「頼んだぜ!お、そうだ、新居祝いだ!適当に食え!がっはっは!」
大量の乾燥パスタ・・・いや意外と助かるけどさ・・・・
「ありがとうございます。」
「おう!じゃあまたな!!」
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「エルフ、と言えば、あの子達でしょうね。何かあったのかしら・・・」
「うん、ボロボロだったって話だし、遊びに来たわけじゃないだろうね。」
「そうね、まぁテレーズ様の所なら安全でしょう。私達もそろそろ休みませんこと?」
「そうしよっか。」
やれやれ、明日はゆっくり寝てたかったのに・・・休日・・・イリスとのイチャイチャ休日・・・
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「・・・・あなた?起きてます?」
「・・・・ん?ああ、起きてるよ。」
「その・・・私は・・・・自分より弱い人の嫁になるのは嫌ですわ!」
「ええ!?」
急に!?我が家が出来たと思ったらいきなり離婚の危機ですか!?
「えっと・・・だから・・・」
マジかよ、弱い人って・・・いやイリスより強いてそんなヤツいねぇだろうに・・・
「わ、私を・・・屈服させてみなさい!」
無理をおっしゃる・・・・ん?・・・ああ、そういう事・・・
さっきは邪魔されたもんな・・・・
「ぷ・・くく、あはは。」
「もう!笑うなんて失礼じゃありませんの!?」
「ごめんごめん、そうだね。わかったよ・・・・本当にいつも、苦労かけるね。」
イリスのこんな姿を見れるのは、この世でただ一人、俺だけだ。
「あなたは・・・優しすぎるんです。」
「イリス、大好きだよ。」
「あなた・・・・んっ・・・・。」
幾分と時間のかかった新婚初夜である。
ようやく二人は、その肌を重ねるのだった。
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「おはよう、さぁ交尾しますわよ下着脱ぎなさいあなた。」
「おは・・ええ!?」
目を覚ますと、既に全裸の女神が待ち構えていた。
いやいやいやいや・・・昨日、何回戦やったと思ってんですかね、この戦女神は・・・
お互い初陣だよ?初めてってこんな感じじゃないと思うんだけど。
「あら?あなたは準備万端のようですわよ?」
朝だからね・・・いや関係ないですね・・・・
「と、とりあえず顔だけ洗わせて・・・・はわぁ・・・・・」
俺が屈服させられてどうする。
加護のおかげか、お互い体力は申し分なし!・・・・戦だったよね?色欲じゃないよね?
この嫁は、いついかなる時も最強なのである・・・完。
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「イリス。さすがに腰痛い・・・あれお願い。」
「『ヴェルスパー』・・・さ、もう一度。」
気にいっちゃったのね、もう色欲の女神でいいよ・・・・
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