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「え?なんだって?」


「だから~僕達は・・・・」


36歳と28歳だよ・・・だよ・・・だよ・・・


「え?なんだって?」


「・・・イリス様~。」


難聴系やってる場合じゃねぇ!は!?おっさんじゃん!?

どう見ても二人共、15そこそこだろ!詐欺か!ロリBBAなのか!


「あなたたちが年上だった事に驚いているんです。エルフなのだから長寿に決まっているでしょうに。」


「リーンベルちゃん・・・いやリーンベルさんが年上・・・」


「もう!兄さん、余計な事を言わないでください!・・・お兄様?わたしはまだ18歳ですよ~。」


「見た目ではもう少し若く見えますわよ?」


「いいんです!イリスお姉様こそ!その身体で19歳ってなんですか!!いっそ190歳とかにしといてください!!」


「そう言われましても。」


「お兄様?リーンベルちゃんでいいんですよ?今のは聞き間違いです。わたしはまだ18歳。」


「リーンベルちゃんは18歳・・・」


「そうです!それこそ世界の真実です!」


世界の真実か・・・随分と規模のでかい話を持ってきたな、この子。


「了解了解。そういう事にしときます。」


「ふう・・・。(年上の妹なんてありえません!まったく、いきなり目標がなくなっちゃう所でした。)」


「あ!二人とも!森の入り口に着いたよ!」


お、結局ぎりぎり夕刻になっちまったな。


いや~、しかし、さっきはいきなりハヴァマールぶっ放すんだもんな・・・

マジで何事かと思ったわ。

合図ね、なんかもう色々と次から次へ衝撃的な事がありすぎて、最近物忘れが激しいですよ。


「あの、お兄様?本当に帰っちゃうの?なんとか里に入れるように頑張りますよ?」


「そう言ってもらえるのはすごく嬉しいし、興味もあるんだけどね。今回は帰る事にするよ。」


「アンデッドドラゴンの話をすれば、長老達も受け入れてくれそうなんだけどな。」


よくある掟ってヤツだよね。人間入るべからず!ってさ。


「またすぐに遊びにくれば良いのでなくて?しばらくは暇も出来そうですし。」


「ホント!?じゃあ、またあの槍であっちの方角めがけて光を飛ばしてください!すぐ迎えに行きますから!」


早くも慣れたか『ハヴァマール』・・・世界最強クラスの神器なのに・・・

「送ってくれてありがと!それじゃあまたな!」


「はい!またすぐに遊びにきてくださいね?」


「ええ、わかりましたわ。」


「気をつけて帰ってね!本当に色々とありがとう!」


この日、意図せずしてエルフの里を救ったのは天運のなせる所業だったのか・・・

後世には謎が残る、まさか・・・ただの金儲けのためだとは、誰にも予測がつかなかったのだから。

「お帰りなさいませ!よくぞご無事で!」


随分と久しぶりに感じるジャック君。


「いやもう本当に何をされていたんですか?音とか光とかすごくて、正直どれが合図かわかりませんでしたよ。」


大盤振る舞いでしたもんね。ハヴァマールさん超便利。


「とにかく、戻ってきていただいて安心しました。もう夜になってしまいましたから、出発は明朝にいたしましょう。」


「よろしく。グリュフォーンの件にしろ、色々あったから話すよ。」

「・・・そんな事が、本当によくご無事でしたね。エルフにアンデッドドラゴン、ですか。しかもそれを片づけてくるなんて・・・、正直、僕には理解が追い付きませんよ。」


まあまあ濃かったからね。ちなみに俺が死にかけたのは内緒だ。


「生きたドラゴンの鱗は決して剥がせませんので、その黒鱗が事実を証明していますが。いやはや・・・」


「森から逃げた獣達も、ドラゴンが消えたとわかれば帰っていくと思うよ。」


「そうですね、これはかなりのお手柄ですよ!いやぁさすがです。明日は急いでエルロンドへ帰りましょう。急げば夜にはたどり着けるはずですので。」

「・・・・イリス、起きてる?」


「・・・・ええ、起きてますわ。」


「今日は、心配かけてごめんね?」


「いいえ、私もお傍を離れてごめんなさい。」


「はは、最初に誰か守るならイリスが良かったんだけどな。」


「まったくですわ。他の女性を庇って死ぬだなんて、私は絶対に、絶対に許しませんわよ?」


大事な事だから2回、ですね。


「肝に命じておきます。」


「・・・・・『スキールニル』を着けてもらおうかしら。」


「え?」


「いえ、こちらのお話ですわ。」


「そう?・・・ふああ、そろそろ寝ようか、移動も結構疲れるんだ。」


「はい。」


『スキールニル』聞き覚えのない神器。

果たして、この女神の所持する神器はあとどれ程にあるのであろうか。

それはこの世界における神でさえも見当がつかないのであった。

「クソ!クソ!ふざけんなよ!なんで僕達が!」


「兄さん・・・・」


「里から追い出されるなんて、こんな馬鹿な話はないよ!」




・・・・・「カイム、リーンベル。ぬしら、アンデッドドラゴンから呪いを受けたそうじゃな。」・・・・


・・・・・「それは間違いです長老!僕達は確かにヤツと遭遇はしましたが!攻撃を受けてはおりません!」・・・・


・・・・・「いずれであれ、もはや主らを里に入れる事は出来ぬ、愚かにも人間の手を借り、エルフ族を危険にさらすなど、長老としてワシはこのあやまちは見過ごせぬ。」・・・・


・・・・・「おじい様。」・・・・


・・・・・「去れ、我が孫といえど、ワシは、主らの祖父である前に族長なのじゃ。」・・・・


・・・・・「この!行こうリーンベル!ここはもう、僕達の居場所じゃない!」・・・・


・・・・・「・・・・・許せ・・・。」・・・・




「くそぉ・・・これからどうしたら・・・・」


妹は祖父を除けば唯一の肉親、兄である自分が守っていかなければならない。


だが、たった二人で生きてゆくには、この森はあまりに過酷な存在である。


「兄さん、森を出ましょう?エルロンド・・・お兄様達なら、もしかしたら・・・」


「人間の街だぞ?会えるかどうかもわからないのに・・・」


「それでも森で魔獣に襲われるのを待つよりはいいです。」


他に・・・僕達が、すがれる物はない・・・か。


「わかった、行こう・・・・エルロンドへ。」

「あ!お二人共!!街の明かりが見えてきましたよ!なんとか辿り着けました!!」


おお~、数日ぶりのエルロンド。やっと帰って来れたか。


「おや?こんな夜遅くまで城門に人が・・・・珍しいですね。」


「なんか騒がしそうだぜ?あれは・・・何してんだ?」


「工事、のように見えますわ。」


目いいね、それにしても工事?こんな時間に?


「城壁の補修とかか?こんな時間までやるのかね。」

「やっと帰って来やがったか!お前ら、帰って早々悪いがよ、急いでテレーズ様の所へ行って来い!」


フリックさん、割と久しぶりなのに、随分な対応だなおい。


「何かありましたか?」


「んな呑気な事言ってる場合じゃねぇんだよ!ほら早く!」


そんなに慌てるとは、また魔王の軍勢でも攻めて来たんだろうか。


「何やらよくわかりませんけれど。あなた?ここはお言葉に従ったほうがよろしいのではなくて?」


「ふー・・・しょうがないな。領主様のお屋敷はどっちだっけ?」


早く風呂入りたかったんだけどね・・・・

「遅いわよ!1日で帰って来なさい!!」


無茶を言う・・・・


「帰還が遅れました事をお詫び申し上げますわ。何やら街が慌ただしいですけれど、何がありましたの?」


「イリスさん、それが・・・グラスヘイム山脈が魔王の手に落ちたの・・・・。」


たった数日離れただけで・・・そいつはちょいと、大事おおごとすぎやしませんかね?・・・・

「落ちた・・・というのは間違いありませんの?」


「ルルーイエで保護している、逃げてきたドワーフの情報よ。」


「テレーズ様、山脈とおっしゃってましたが、国がそう簡単に落ちる物なのですか?」


ハリボテの城じゃああるまいし・・・


「そんなわけない。本来ならね?・・・でも今回は勝手が違うわ。」


「まず、魔王はかなりの規模の軍を持って攻めてきた事、敵将にアスモディアがいた事、最後に、ダイヤモンドゴーレムの制御を奪われた事が原因ね。」


「アスモディア?ダイヤモンドゴーレム?」


「ああ、ごめんなさい。アスモディアは魔王の腹心よ。三魔神将と呼ばれている、幹部のような物ね。」


三魔・・・って事はあと二人くらいいるのかな、幹部とやら。


「ダイヤモンドゴーレムは、ドワーフの操る兵器、言わばグラスヘイム山脈の守護神のような物ね。」


「悪夢の森へは「龍海」を越えなければならないから、魔王も大軍は動かせない。必然的に攻めるならグラスヘイムになるのだけれど、今まではダイヤモンドゴーレムの守りで抑えられていたの。」


「それが魔王の手に堕ちた結果、その守護神と大軍勢に攻められてドワーフ勢は壊滅、山脈もろとも侵略されたって感じかな。」


「ええ、その通りよ。この状況は・・・かなり不味いわ。」


え?そうかな?


「この地図をからだと、逆に山脈は「ニブルへイル」「エルロンド」「ルルーイエ」に囲まれてるように見えます、「カプリコス」の援軍等があれば奪い返せるのでは?」


「確かにそうだけど、難しいわ。ダイヤモンドゴーレムが敵勢力になっているんだもの、今度はこちらが簡単には攻めれない。それにエルカはまだしも、ニブルへイルと連携となれば、すぐに、とはいかないの。」


「何故ですの?」


「ニブルへイルは王国の守りのかなめよ?それを動かすにはメルクリアス国王の勅命が必要なの。」


王の命令待ちかよ、こりゃあ・・・余裕こいて悩んでる間に負けるわ。時すでに遅しってさ。


「なるほど、わかりました。ではまずダイヤモンドゴーレムとやらを滅せばよろしいのね?」


まあ、この嫁がいなければ、の話だがな。


邪魔なヤツはとりあえずぶっ飛ばす!


でも、いつもちゃんとおうかがいを立ててる所が偉いだろ?その辺の脳筋と一緒にすんなよ?


「あのね、イリスさん、お話聞いててくれたかしら?倒せないから困ってるんじゃないの。」


「テレーズ様、ふたつよろしいかしら?グラスヘイム山脈とは、広大な土地ですの?あと、敵勢が大軍であるならば、火を放つ事は出来まして?」


お?火計か?戦争っぽいじゃん。


イリスらしくないけど・・・・ファイト一発、ハヴァマール!じゃねぇのかな?


「大陸一の鉱山だから、山脈自体はかなり荒れ果てているわ、多少の火なら問題無いと思うけど・・・ダイヤモンドゴーレムは燃えないわよ?単純な弱点は無いように造られたんだもの。」


ダイヤの癖に・・・てかそんだけ強くしても奪われてりゃ世話ねぇっつーの。


「そうですの・・・では、」


ん?なんか違和感が・・・・


「待ったイリス、一端落ち着こう。戦争はドラゴン倒すのと勝手が違うだろ?個の力がどれだけ通じるかわからないんだから、今は様子見しよう。テレーズ様?今は街の防備を固めてますよね?とりあえず俺達は、当面エルロンドの防衛に専念すればいいですか?」


「え?ええ、そうしてちょうだい。」


「・・・あなた?」


「ごめん、後で話す。」


何かがひっかかる・・・

このままイリスを投入して敵を殲滅しちゃえば終わる話のはずなんだけど・・・


「・・・わかりましたわ。」


「いずれにしても、しばらくグラスヘイムには手が出せないわ。今は可能な限り、街の防備と軍備を整えて魔王の進軍に備えつつ、王の命令を待つしかない。」


王の命令・・・聖騎士領ニブルヘイル・・・ダイヤモンドゴーレム・・・

ん~ダメだ、わからん。


「ねぇところで、さっきは聞き流しちゃったけど、貴方さっき「ドラゴン倒すのとわけが違う」って言った?」


言いました。


「まさか・・・倒してきたの?」


「ええ。」


「どういう事よッ!!」


ああ~・・もうホントいい加減帰らせてくれませんかねぇ・・・・


その日、このツンデレ領主様への納得のいくご説明は、朝まで終える事が出来なかった。

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