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「突然の事が多すぎて、まだ理解が追いつけていないんだが、その・・イリスは、俺の嫁さんなんだよな?」


「えぇ、間違いありませんわ。あなたの願いによって選ばれたのが私。あなたの理想に沿う者のはずなのですけれど・・何か問題がありまして?」


「いやいや!何も問題ないよ!正直文句なしに最高の女の子だと思う!」


「あら、それなら良かったですわ。」


そう言ってイリスは微笑んでくれた。ヤバい、落ち着かない、なんだよこの究極の美女、嬉しいけど!最高だけど!もう今セカンドライフ終わってもいいかもしれないよ希望神!


「でも良かったのか?俺なんかの嫁になって・・・イリスの意思は・・」


「こちらも問題ありませんわ。実は私も転生者ですの。」


そうなのか・・・まあ絶対に同じ世界だったわけないだろうけど。


「私は最初、転生なんてするつもりはありませんでしたわ・・・」


「え・・・」


「私の身が滅びた時は、あなたが亡くなった少し後の事でした。その・・・色々とありまして、私はあのまま永久に眠りにつこうと思いました。そこでこちらの世界の神にこんな話を持ちかけられましたの。」


・・・とある男と愛を育んでみないかね?・・・


「少し・・・興味がわきましたわ、前世では私は、愛といわれるものがどんなものなのか、知らずに終わりましたら。」


「それで、失礼ながら、あなたの生い立ちを少し拝見させていただいて、あなたとなら共に歩んでいけるかもしれないと思いまして、私は転生の話を受ける事にしましたの。」


そっか・・・だからイリスは俺の事を最初から知ってて・・・てか人生見られたの?ちょっと恥ずかしいんですけど・・・何を見たんだろう?・・・


「そっか、何が良かったのかはわからないけれど、気に入ってくれたようでありがとう。俺も相手がイリスで良かったってなんとなく思うよ。」


「えぇ、だから安心して?私はあなたを裏切りませんから、一緒にこの世界で・・・幸せな人生を歩みましょうね。」


ッ・・・・可愛いッ!!なんて笑顔を向けるんだ!ありがとう神様!ありがとう!いままで恨みがちでごめんね!


「う、うん!俺もイリスを絶対に幸せにしてみせる!何があっても!!」


「ふふ・・嬉しいですわ。えぇ期待しています。」

「俺の生い立ちは見られちゃったから・・・イリスの事を教えてもらってもいいかな?」


ようやく道らしき物を発見し、あてもなく歩きながらそんな質問をしようとした時。


「ん・・・?」


「ツヨシ待って、何か現れましたわ・・・」


奇妙な生き物が目の前に現れた。緑色の肌をした小さい体躯、棍棒を持ったそれは・・・


「ゴブリン・・・?」


こちらに敵意をむき出しにしていまにも襲いかかりそうな様子だった。


ゴブリンか・・やっぱりここは異世界なんだな・・・


あまり危機感のない感想に耽っていると・・・


「最初の障害、ですか・・・弱そうには見えますが、旦那様の前で初仕事、多少本気を出しましょう。」


そう言ってイリスはどこからともなく槍を出現させた・・・槍?・・・


「イリス?それは?」


「これですか?私の神器ですが・・・」


神々しい、この世の物とは思えない程の圧倒的なプレッシャーを放つそれを手にイリスは応える。


「見ていて・・・これが・・・あなた守る力ですわ!」


『ハヴァマール!』


ドオオオオオオオンッ!!!


ビームです・・・槍から出たのは極太のビームでした・・・明らかにオーバーキルなソレはゴブリンを一瞬のうちに消滅させた。哀れゴブリン、本当にありがとうございました。


「ふう・・・少し不安でしたが、この世界でも力が通用するようで良かったですわ・・」


うん・・・僕も嬉しいよ・・・本当に素敵な奥様で・・・なるべく怒らせないように気をつけようと心に決めた。


「いかがでしたか?私の初陣。お気に召しまして?」


「う、うん!すごかった!ありがとう!助かったよ・・でも今のは今後なるべく使わないようにしようね?この世界でその力は危険そうだから・・・」


遥か先まで、神槍の一撃の痕跡は残っていた・・・


街が無くて良かった・・・本当に・・・


「そうですわね・・・少しやりすぎてしまったかしら。次は出力を抑える事にします。」


抑えられるんだね出力・・・さっき多少って言ってたけど、全力だとどうなっちゃうんだろう・・・・


「ともあれ、こと戦闘に関しては問題なさそうですわね。今のが最強の生物ではないでしょうけれど、少し安心しましたわ。」


「ゴブリンだったしね、異世界・・・本当に来ちゃったんだなぁ・・・・」


こうして、少し見通しが良くなった道へ、二人は再び歩みだすのだった。

「戦えるんだろうとは思ったけど・・・イリスは強いんだな。」


凄そうな鎧とか着てるしね。こっちは普段着で死んだ時の格好のままだから、傍から見ると場違い感半端無いな。せめてスーツとかなら・・・いや、現代服じゃどれも合わないか・・・


「ええ、私の世界はあなたの世界と違って、あまり平和ではありませんでしたので・・・」


少し悲しげな微笑みでイリスは答える。


「そっか・・じゃあまた戦うことになっちゃいそうな世界だな。なんか、ごめん・・・」


「いいえ、後悔などありませんわ、むしろ戦う力を・・・あなたを守れる力を持っていて、私は良かったと思います。」


イリス・・・ええコやね・・・おじさんは感激で泣きそうですよ・・・


「そういえば、先ほどのお話は?」


先ほど・・・?


「ああ・・・さっきの・・・いや、俺の事はいくらか知ってるみたいだし、イリスの事を教えてもらおうかと思ってさ。」


「そうでしたの、わかりました。お教えいたしますわ。」


こうしてイリス自身の事を話してくれた。


元は神々と人の住む世界で、イリスは神の一柱だった事。


神といっても幻想的な物ではなく、どちらかというと種族のような物だったようだが。


その世界でいつの時代からか神々と人とで戦争が起こり、イリスは・・・唯一、人に味方した神だった。本人の言によれば理由はわからず、守らなければならないと直感しての行動だったとの事。


そしてイリスは人を率いて神々に挑んだが、力及ばずに討たれたらしい。


話によれば、イリスは人からは兵器のような物として認識されていたらしく、利用されていただけにすぎなかった。しかし、それを知っていてもイリスは自身が敗れた後の人々を思い無念が拭えなかったそうだ。


「そうか・・・ありがとう、キツそうな話なのに話てくれて。」


「いいえ、所詮は前世の話ですもの、今の私にはもうあまり関係のないお話ですから。」


「うん、っていうか神様だったんだな、会った瞬間から人類とは思えなかったけど、悪い意味じゃなくて。」


「ふふ・・・あまり変わりませんのよ?少し不思議な能力を持っているだけで、寿命なども普通の人と一緒ですわ。」


少し・・・・?


「ふーん・・・なら良かったかな。こっちだけ年老いても悲しいし。」


「私一人を置いて先立つ旦那様なんて許しませんからね?」


「頑張ります。」

「ところでイリスは何歳くらいなんだ?外見からじゃ、ちょっとわからないんだけど・・・」


「私は19歳のはずですが・・・あなたはおいくつですの?」


「俺は20歳だったな。これからどう数えていけばいいかはわからないけど。」


なにせ異世界だ・・・1年365日かもわからない・・・


「そうですわね、まずはこの世界を知ることから始めましょう。あら?」


そんな話をしていると、ついに前方に人里のような明りが見えてきた。

あたりも薄暗くなってきたし、ラッキーだ。結構歩いたし、飲まず食わずも限界だったところだ。


「行ってみよう。」

「えぇ。」

「思ったより大きな街だな・・・・」


遠目からじゃわからなかったが、高い城壁に囲まれていてかなりの規模の街だという事がわかった。


「さて、こういう時のお約束は・・・・」


「お前たち!そこで何をしている!?」


来た!門番・・・ここの回答は間違えられない・・・・てか日本語?言葉は通じるのか・・


「すみません!俺たちは旅の者で・・・」


「いいから早くこっちに来い!モンスターに襲われてもかまわねぇのか!」

「なるほど、新婚旅行か・・・しかも異世界から・・・にわかには信じがたい話だが・・・ステータスカードも持っていないようだし・・・」


この門番はフリックさんという方らしい。普通もっと警戒されて荒い扱いを受けるもんだと思ったが、イリスの聖女っぷりにでもあてられたのだろうか、態度が優しくて助かった。


ステータスカード?・・・・


「えぇ、嘘偽り等ありませんわ、信じてくださらなくて構いませんが、私とツヨシが悪人に見えまして?」


堂々としすぎ、さすがです奥様・・・・


「まあな、お嬢ちゃんのナリは派手だが、二人とも武器を携帯していない、よくモンスターに襲われなかったもんだ。」


言えない・・・恐らく街道にまだいたかもしれないモンスターは全て消滅したであろう事に・・・


「なんにせよ、人間なら悪党でなければ問題ないし、兄ちゃんのほうはともかく、お嬢ちゃんのその鎧で盗賊って事はないだろう。ようこそ、「エルロンド」へ!新婚さんたち。」


どうやらすんなり事が運んだようだ、フリックさんが理解ある人で良かった。


「ところでフリックさん、この街、宿とかってあります?」


「あぁ、旅人用に宿屋はあるが・・・金は持ってるのか?」


金か・・・


「いや、持ってませんね・・・」


「そうか・・・よし、一晩の宿代は貸してやる、明日ギルドに行って仕事をこなして色でもつけて返してくれりゃいい。ついでにステータスカードも作ってこい。身分証明にもなる。」


「いいんですか?親切にしてもらってありがたい話ですが・・・」


「おう!俺のとこ、この前ガキが生まれてよ。家族ってのは良いもんだぜ?こんな美人な嫁さんなんだ、大事にしてやれよ?」


新婚だったからか・・・俺一人だったら・・・つくづくイリスに感謝だな。


「だそうですわよ?」

イリスもにこやかだった。順風満帆だな異世界ライフ!

「では大人2名で1泊、お食事はどうなされますか?」


「夕食と朝食を頼みます。」


「かしこまりました、では15000セル頂戴いたします。」

フリックさんに2万セル(通貨の単位)借りて、宿へとやってきた。


「普通に良い部屋だな。」


「えぇ、思ったよりも発展しておりますのね、お風呂もトイレも完備されておりますわ。電気だけは無いようですけれど・・・」


中世風だったからなぁ・・・ホント、ここまで苦労という苦労をしてないけど大丈夫なんだろうか?


「では、冷めてしまいますし先に食事にしましょうか。」


そういってイリスは部屋に運ばれてきた皿をテーブルに並べた。


メニューは・・・・・・ピザ?・・・・いくら中世風とはいえこれは・・・・


「不思議な食べ物ですわね・・・あなたはご存知でして?」


「あ、ああ、多分知ってる。美味しいと思うよ。」


「そうですの・・・ではいただきましょう。」


はむ・・・・うん・・・ピザだね・・・なんの肉が乗っているかはわからないけど、普通に美味しかった。慣れ親しんだ味が出てきて嬉しいような・・・期待を裏切られたような・・・


「あら、美味しい!あなたの世界にはこんな料理があったなんて、少し羨ましいですわね。」


「そう?イリスの世界の料理はどんなのだったの?」


「私の世界では・・・基本的には野菜や動物性脂肪で変わりませんが、焼いたり煮たりで工夫をこらした料理などはあまりありませんでしたわね。」


そっか・・・戦争中だったんだもんな。いつかイリスの世界を見てみたい気もするけど・・・


「そうですわ!私は妻なのですから、いつか手料理をふるまいたいです。よろしいかしら?」


「うん!楽しみにしてるよ!」


イリスの手料理・・・俺の理想の嫁が、メシマズなんてありえない・・・!

そんなこんなでお互い風呂にもはいり床につこうとした・・・


「ツヨシ?先ほどから何故こちらを見ないのかしら?昼間はずっと私を見ていたのに。」


見れない・・・見れるわけないだろッ・・・うすうすは気づいていたけど、イリスの身体はなんというか・・・・すんごい!・・・


鎧とその下の白いドレス?を脱ぎ棄て、バスローブを羽織っただけの美しき裸体は、童貞にとって致命的な刺激であった・・・


大き目なサイズとはいえベットは一つ・・・背中を向けて対抗するしかなかったのである。


「悪い、なんつーかイリスが綺麗すぎて恥ずかしいというか・・その・・照れてるんだ・・・と思う。」


「そうでしたの、あなたは私と交尾したいのではと思ったのですけれど・・・」


こッ!!!!交尾ッッ!?


「すこし安心してしまいました、ごめんなさい・・・私もまだ、その決心は・・・・もう少し時間が欲しいですわ。」


「いやいやいや!今すぐなんかじゃなくていい!!待つよ!!それに俺だっていきなりは・・・心の準備とか・・・」


「ふふ・・・えぇ、わかっています。そんなあなただからこそ私は・・・」


スッ・・・・


「こちらを向いて?」


頭のすぐ後ろで声がしたので寝返りをうつと・・・イリスの顔がすぐ目の前にあった。


「ッ・・・!」


目をそらそうとしたが・・・


「ツヨシ・・・あなたは、その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、私に尽くし、私を敬い、私を慰め、私を助け、その命ある限り、真心を尽くす事を誓いますか?」


これは・・・・


「誓います・・・」


「新婦となる私は、新郎となるあなたを夫とし、良きときも悪しきときも、富めるときも貧しきときも、病めるときも、健やかなるときも、死が二人を分かつまで、愛し慈しみ貞節を守ることをここに誓います。」


「イリス・・・」


「言葉はもう、いりませんわよ?・・・」


この日、後に「戦女神」「天運皇」と呼ばれる者たちの、誰も知らない二人だけの婚儀が行われた。

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