少女と影たちの漫画語り
寝る前の少しの時間、茜があたしに聞いてきた。
「なあ、“漫画みたいな恋”って、何だと思う?」
『さあねえ。あかり、漫画好きじゃないし』
なんで急にそんなこと聞いてきたのか、と一瞬思ってすぐに今日の漫研で“漫画みたいな恋”の話が出たことを思い出す。それがなければ茜だって気にしなかっただろうし。
『小説みたいな、なら沢山あるけどね。
ほら、もう寝ないと。明日は此瀬さんと遊びに行くんでしょ?』
「……別に此瀬さんだけじゃねえよ。漫研みんな一緒」
『ふふ、おやすみなさい、茜』
今夜はあたしも休みましょ。勝手なことして筋肉痛とかにしちゃったら可哀想だし。
次の日、朝の九時半。待ち合わせは十時なんだけど、早く待ち合わせ場所にやってきた。
「さすがに30分も早けりゃ、誰も来てねえよな」
茜は音楽聴きながら本を読んでた。なんとなく持ってきたらしい漫画。源氏物語がモチーフだ。
「初原さん、いた!おはよー!」
「おはようございます」
「やだなー、敬語無しでいいって!同い年なんだし」
この声は此瀬さんね……これは絶好のチャンスかもしれない。
『茜、ちょっと体貸して』
「あかり、なんでだよ。今じゃなきゃダメなのか?」
小声で帰ってくる返事。
『今。あの子、同族の匂いがするの。確かめたい』
「初原さん?」
「別にいい」と茜は答えた。申し訳なく思いつつも身体のコントロールを奪う。
ふらり、柱に体重を預けて、目を閉じた。
「初原さん!?大丈夫!?」
目を開ける。此瀬遥があたしの顔を心配そうに覗き込んでいた。
「……だいじょうぶよ」
そう答える。二、三秒遅れて、彼女の驚く顔。
「……もしかして初原さんも……」
ぶつぶつと、電話で話すような一方的な会話をする。これは当たりだな。
持ってた本を鞄に仕舞って、此瀬遥の様子を見る。
すう、と空気が変わる。あたしは彼女に声をかけた。
「ごきげんよう」
「お久しぶりですわね」
予想通りな反応。こいつもあたしと同じ一族だ。大当たり。
「サフォール、だったかしらぁ?イサンドラ様を裏切って破壊神についた」
「わたくしからすればイサンドラも貴女も異端ですわ、リリュエル。今度の身体も少女なんですのね」
それはお互い様じゃない、と笑う。あたし達はこうして人間の身体を借りなきゃ会話もできないただの精神体にすぎないのだ。
「それで、どうかしましたの?まさかここでやりあうおつもりで?」
「……ただのご挨拶。ま、いずれあんたの使ってる身体はもらうけどねぇ」
「あらあら、身体が二つも欲しいなんて欲張りですね」
此瀬遥も、茜もあたしの計画のために必要なだけ。欲張ってるつもりなんかない。
「ここで事を荒立てても、どちらにもメリットはないわよぉ?それに、たまにはこういうバトル漫画みたいなご挨拶だけもありじゃないかしらぁ?」
くすくす笑いながら、サフォールは言う。
「そうですわね、遥もこの手の漫画は大好きですもの。『異端狩りの魔女』は知っていて?」
「柚倶月美乃の漫画でしょう?茜もコミックス買って読んでたわぁ」
「明かされ出した黒幕も絵里香の恋も気になりますわ。文化祭では絵里香のコスプレするって言ってますの」
……あれ、なんであたしコイツと漫画の話してるんだろ……構わずにサフォールは続ける。
「雑誌は買っていて?今月号は絵里香と黒木先輩の文芸部活動多めでちょっとじれったかったですわ。早く想いを伝えてしまいなさい!とね」
ふと時計を見る。もうすぐ50分を指しそう。
「あー、貴女の異端狩り愛はわかったから、いい加減戻らないと。そろそろ待ち合わせの時間十分前よぉ?」
「あらまあ……残念ですわ。それでは、時間も時間ですし、この辺で遥に身体を返しますわ」
「そうね……では、ごきげんよう」
そうつぶやくと、あたしは目を閉じた。
「……もういいのか?あかり」
『人通りの多い場所でドンパチしたら、茜怒るでしょ』
「ま、そうだけどな」
意識を交換する。あたしが表に出てる間は茜は眠ってるみたいに何も知覚しない。だから、終わった時に教えてあげる。
『結論からいうと、あの子、あたしたちと同族よ。しかも厄介なことに、敵対する派閥』
遠くから、茜の同級生たちの声がする。
『彼女たちと一戦交えることもあり得るわ。覚悟しておきなさい』
「……覚悟、か……」
『戦いの光景は見ないとは思うけど……ほら、そんな顔しないの!』
「初原さん、みんな来たみたいよ」
「あ……はい!」
そう言って、茜は他のメンバー達の方に走っていった。
茜、貴女は真実を何も知らないまま。それでいいの。辛いことをあたしに押し付けて依存してくれるだけで。
あたしは茜を、茜の友達を、とことんまで利用させてもらうわ。
おひさしぶりです、雪野つぐみです。
今朝「エンドブレイカー!」のキャンペーン最終回やって全滅してきました(どうでもいい)。
今回はついにあかりが本性軽く表します!ただまあ、本筋漫画と関係なくね?っていうね、指摘が飛んできそう。
ただ彼女に関してはまだまだ明かせない部分が多い……ぐぬぬう。
もう少ししたら彼女たちの長編物語も書き出すと思います。
ではでは、今回のお話をここまで読んでくださった皆様、いつも迷惑かけっぱな相棒文群さん、キャンペーンでダメPC1に付き合ってくださった他のPLの方々、素晴らしきシナリオを披露してくださったキャンペーンGMさんに、感謝の言葉をささげます。




