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マンガを描く男と漫画を描きたかった女

くだらないものですが読んでいただけたら幸いです。本当はマンガを描いてみたかったです。絵がかけない。

僕はササキノハラ

昔から漫画は書いてたまに読み切りとかが掲載されてたんだけどこの春からついに連載が開始されるんだ。だからついつい自己紹介のときペンネームで言っちゃうんだ、嬉しくてね!

まあいろいろ大変になるから喜んでばかりはいられないんだろうな。人気取り続けなきゃ打ち切り、締め切りに追われる毎日、過酷な未来が待っているんだろうな。でも今日までは浮かれてよし、と自分で決めたんだ。新しい、自分の、仕事場を見るこの日までは!


あるマンションの一室が僕の仕事場として与えられた。2LDKの割と新しめのマンションだ。僕がここを借りることにした理由はその破格な家賃だ。他の部屋の半額以下の家賃で3ヶ月は借りられるという驚異的な訳あり家賃に惹かれて即決。破格な理由も幽霊がでるとかいうありがちなやつだった。そんなもの少しも怖くない。なぜならここは仕事場、家ではない。僕はまだ実家に住んでいる。だから寝るのは家、寝るとしてもあくまで仮眠室、昼間は幽霊なんて出ないだろうしでたとしても怖くないどころかアシスタントさんもいるだろうから心配なんて少しもない。取り憑かれないかはちょっと心配だけど、まあ漫画やアニメではこういうところにでるのは大体地縛霊だから平気だろう。そんなこんな考えて歩いているともうマンションにたどり着いた。家から3分、近くて便利、なかは綺麗でいわくつき、漫画家には最高の条件ではないか!

さて本当に最高かは置いといてぼくはまず大家さんに挨拶に行かなきゃいけない。まだ鍵もらってないんで。確か101号室に住んでるって言ってた。どれどれ…?なんかおかしい

101号室だけやけに存在感がある。明らかに2LDKじゃない。一体どういうことだ?ぼくはそう思いながらもインターフォンを押す。

返事が帰ってきた。

「はーい、どちら様ですか?」

女性の声だ。優しそうだが独特の響きを持った、なんというかヴァイオリン?あのなんか頭に響き渡る感じ?そんな錯覚を覚えた。

て、そうじゃなくて。

「こ、こんにちは、き、今日からこちらの201号室を使わせていただきます、漫画家の…

「あ、はい、今開けまーす。」

やべ、女性だと思ったら緊張した。女の人と話したのはいつ以来かな。たしか大学生の時の漫画サークルの、て、あいつらは女性感零の腐敗賢者だったからな。ということは中学時代の隣の席の女子の落とした消しゴムを拾って渡してありがと、でも次からは触らないで、って言われたとき以来かな。

泣きたくなってきた。あの子可愛かったからなおさら…。

「どうも、こんにちは!…あの大丈夫ですか?」

「あっ、ずびばぜん、だいじょうぶです!」

知らない間に涙が、恥ずかしすぎる。


大家さんの部屋のなかに入るとなかはやはり2LDKではなかった。リビングに通されたがやはり広い。なぜここだけ。

「びっくりなさいましたか?この部屋だけ4LDKに建てた時にしてもらったんです。」

「はい、というか家の前ですでに。」

「ふふっ、そうですか。まあ普通にここだけ明らかに部屋の構造も違いますからね。」

「ははは、それで大家さんは?」

「私ですが?」

「えっ?、」

「私ですよ?」

なっ、なんだってー!

まさかの大家さんこの人、かなり若いから多分20くらい、おそらく年下、それで大家さんですとー!はっ!この展開漫画で読んだ!

「ふふっ、よく驚かれるんです。ここは私の父のものなんですけど、社会勉強だとか言って私にここの管理を押し付けてきたんです。自分がマンションのオーナーやって見たいっていって建てたのに。」

とんでもないブルジョワだな、その親父。

「そ、そうなんですか、お若いのに立派ですよ。」

「いえいえ、それほど大変なわけでは、清掃や警備はちゃんとしたところに任せていますし、あくまでも形だけのオーナーって感じです。」

「そうですか…」

この瞬間耐え難い沈黙がエンカウントした。ヤベェ、会話をどうやって続けたらいいかわかんねぇ、自分の会話能力の限界を感じざるを得ない展開だ。まあ、女性との会話とか数年ぶりだからな、しょうがない、って大家さんむっちゃ気まずそうな顔してるー、はいやめてーそんな目で見られると余計話が思い浮かばなくなるよー、思考停止だよー。

「あのっ、そろそろ本題に入りましょうか。」

「そっ、そうですね、お願いします。」

むっちゃ気を使わせてしまったきがする。

申し訳ない。

「では改めまして、この度はご契約ありがとうございます。私はこのマンションのオーナー、祢咲 理子と申します。」

「どうも、ご丁寧に。」

「えっと、この度ご契約いただいた部屋は201号室で間違いありませんか?」

そんな感じでいろいろと話は進み、鍵を受けとった。

「こちらからは以上です。何か質問はございますか?」

「そうですねー、まあたいしてきにはしてないんですけど、一つだけ、201号室って格安でしょ?軽くは聞いてるんですけど、できるだけ詳しく理由を知りたいなー、と思いまして。」

「ああ、そのことですか、実はあの部屋は私が出版社の方に紹介した部屋なんです。」

「へっ?」

「いや、なんていうか、私は昔漫画家さんに憧れていて、でも残念ながら絵が上手く書けなくてですね。でもなんらかの形で漫画家さんの力になれたらっておもって、それで出版社に知り合いがいたので、格安で仕事場として一部屋貸すことにしたんです。」

「あの?失礼ですけど幽霊とかそういう話は?」

「別にありませんよ?このマンションまだ新築ですし、土地柄もお化けとかには縁がなさそうですし、建ててからずっと空き部屋でしたから。編集さんたちの間ではそういう噂もあるってお話は聞いたことありますけど、とくになにもありませんよ。」

「そうですかー、安心しました。」

おれのドキドキ返せー、あのクソ編集!実はちょっとだけ楽しみにしてたのにー。

「それでは、なにか困ったことが会ったら相談してくださいね。あと漫画、楽しみにしています!」

そういって彼女は笑顔を向けてきた。天使のようだ。あの中学の時の隣の子とは大違いだ。次からは触らないで、の時の笑顔、怖かったなー。

「はい、頑張ってできるだけ長続きさせます!」

「ふふっ、頑張ってください。」

少々後ろ向きなコメントにも優しく対応してくれた大家さんだった。


幽霊疑惑もはれたこのマンション。もはや怖いものはない、ただしスリルもないが、もうここに住もうかな。うちより綺麗だし、なにやら家具も買い揃えてあるらしいし、大家さんかわいいし。

そんなことを思いながらぼくは念願の仕事場でくつろいでいた。リビングには幾つかの仕事用の机、資料用の棚、テレビと今座っているソファがあった。さっき確認したところ2部屋のうち片方はカーペットにベッド、もう片方は和室で押し入れに布団が入っていた。それ意外にも一通りの家具家電は揃っている。どうやら本格的に漫画家を応援したいらしい。ちょうどいい時に連載決まったもんだ。こんなに至れり尽くせりでいいのだろうか。いや、いい、少しくらいご褒美があったって、連載決まったし、これから大変なわけだし、そのお祝いだと思おう。

やる気が今まで以上に出てきた。ぼくは明日から漫画家、最高のマンガをつくってやるぞ!


夕方までくつろいで彼は自宅へ帰った。その後その部屋でなにが起こったかは誰も知らない。ただ一つなにかあった痕跡だけは残っていた。それに彼は気がつくのだろうか。


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