シーンNo.5
■二月十四日 朝 岩国総合高校 二年一組〈シーンNO.5〉
【SE】教室の扉を開く音。
【SE】歩く音。
クラスメイト(女子) 「おはよう」
ネオ 「(くたびれたように)おはよー」
ネオ、席につく(【SE】席につく音)。
ネオ 「(疲れきったように)ふうう」
【SE】歩く音。
実緒 「ネオちゃん」
ネオ 「(疲れきったように)実緒、おはよー」
実緒 「(朝から疲れているネオに少々驚いて)どうしたの?」
ネオ 「どーしたもこーしたもないよ。ウチのうるさいナル男のおかげで、駐輪場の自転車をドミノ倒ししてしまったのよ。おまけに鞄を開けていたから、チョコも教科書もバラバラに落ちて、あー、しんど」
実緒 「(なぐさめるように)大丈夫?」
ネオ 「うん。チョコもつぶされてなかったからとりあえずひと安心だけど、ナル男のせいとはいえ、幸先悪いなー。はあ、慣れない事をやると、こーいう運命なのかな……」
実緒 「だ、大丈夫だよ。悪い方向に考えない方がいいよ」
ネオ 「(自信なさそうに)そーう?」
実緒 「そうだよ。だって、手作りなんだよ。ネオちゃんの気持ちが込められているんだよ。それで伝わらないはずはないよ。もし、ダメなら、私がやっつけてやる!」
ネオ 「(実緒の意外なせりふにジーンときて)おお、実緒、頼もしい。うん、そうだよ、そうだよね! 心のこもったものほど、叶わないものはないよね!」
実緒 「うん!」
ネオ 「よーし。なんか元気湧いてきた。ありがとう、実緒」
実緒 「どういたしまして。二人にも、お隣の彼にも、伝わるといいね」
ネオ 「おうよ! 絶対に伝えて……って、実緒」
実緒 「ん?」
ネオ 「一言、余計なのが入ってない?」
実緒 「(悪びれもなく)え? そうかなあ?」
ネオ 「そうよ。わたしはね、moment’sの男どもにしか渡さないのっ!」
実緒 「仲良いのに?」
ネオ 「クラスメイトで幼馴染みだから、仕方なくやってんの! まったく、あかりんも実緒も勘違いし過ぎよ。何度も言うけど、あーんなヤツに渡す価値なんか」
優太 「(ネオのセリフの最後にかぶせるように)あーんな奴とは、どんな奴なんだ?」
ネオ 「(びっくりして、裏声で)うわああああっ!?」
実緒 「小倉君」
優太 「おはよう、竹下さん」
【SE】席に座る音。
ネオ 「お、脅かさないでよ、バカ優太!」
優太 「バカなのは気づかないおまえだろ」
ネオ、優太の言葉にカチンとくる(【SE】立ち上がる音)。
ネオ 「なんだとー!」
実緒 「(食ってかかりそうなネオをなだめるように)まあまあ。(優太の方を向いて)小倉君は、今日も朝練だったの?」
優太 「ああ。大会がもうすぐだからな。(あくびをしながら)あー、ねみぃ」
ネオ 「(冷たい感じで)フン、せいぜい頑張ることね」
優太 「おーう。今回こそ、優勝してやるさ(机に突っ伏して)……ぐー……」
実緒 「あ、寝ちゃった」
ネオ 「寝つきのいいこと。ソフトテニスができて幸せー、みたいな顔しちゃって。(実緒にしか聞こえないくらいの声で)だから、ほっとけないのよ。バカ」
実緒 「(微笑ましそうに)ふふっ」
ネオ 「な、なによ、実緒」
実緒 「(にこにこと)小倉君が羨ましいな」
ネオ 「(照れるように)だから違うってば!」
優太 「(寝ている)ぐー……」
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