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そして彼らは話し合う

「何読んでんだ?」


 部長は机の上に古そうな本を読んでいた。表紙はボロボロに破れておりいかにも年代物のように見える。


「昨日部室で見つけた本だ。中世の魔女裁判について書かれている」

「魔女裁判って詳しくは知らないけどなんかやばそうだから処刑しますってアレ?」

「そうだ。生きたまま火あぶりにされたりしたそうだ。この本にはそういったことが書かれている。」

「うげぇ。よくそんなの読めるな」

「まあオカルト部だからな。参考にもなった。これを見てるうちに面白い仮説を思いついたんだ」

「仮説?」

「まず、その前に魔法使いについて話そうか。

 知ってるか?日本は魔法使い大国だ」

「はあ?……まさか!?」

「そう、ある条件を持った三十代男性はかなりの数いる。日本人は身持ちが堅いからな。

 そしてこの条件を持った三十越えの女性を魔女と呼ぶならつじつまが合う。つまり、」



「子孫繁栄に協力しないやつに生きてる権利はないから処刑したのではないか、と」



「な、なんだってー」

「ふふっ」

「っていうと思ったか!そんな理由で殺されたら死んでも死にきれねぇーよ!」

「なんだ。お気に召さなかったか。」

「召すも召さないもねーよ!それじゃ働き手も減ってデメリットしかねーしな!

 ……過去の女よりいま気にするべき女がいるだろうが?」

「誰のことだ?」

「灰森さんのことだよ。ほとんど接点ない人物が部室にいて疑問に思わねーのか?」」

「なくはないぞ。登校時に偶に出会うからな。」

「週何で?」

「6だな」

「……学校は週5だろ。そこで疑問を感じないお前を尊敬するよ」

「崇め奉るがいい」

「皮肉に決まってんだろ!!」







「それで長浜はどうしてこんなところに私を連れてきたの? 告白?」

「緑さんの冗談に乗りたいところだけど事態は一刻を争う。とにかく俺に協力してくれ、緑さん」

「う~ん。いじられ兼ツッコミ兼熱湯風呂担当の長浜がこんなにも真面目な口調しゃべるなんてノストラダムスレベルの異変?」

「俺の立ち位置ひどすぎじゃね!? その例えはガセって言いたいのか!?」

「協力するって意味だよ」


 クラス会長は邪気のない爽やかな笑顔を浮かべるのを見て思わず溜息をつく。これからすることは男の俺ひとりだけだと不審者扱いになってしまう。彼女の協力は必要不可欠だ。


「――なるほど。つまりナンパの手伝いをしろと」

「ちげーよ! どこどうしたらそうなるんだよ! 灰森さんの真意を聞くために話しかけるだけ! 女子が傍にいれば少しは安心して話してくれるかもって考えたんだよ!」

「最後の台詞は完全にナンパだけどね。……まあ部長さんのことなら同じクラスにいる者としては見逃せないし。友達想いの優しい野球少年に免じて改めて協力に応じるとしますか」

「……」

「おぉやぁ? 図星を突かれて押し黙るとはかわいらしいね。もしかして部長とデキ」

「部長さんってオカルト部の部長さんのことですか?」

「そうそう。その部長とここの男子がめくるめく禁だ……だれ?」

「こんにちは。一年生の灰森です。よろしくお願いします、せんぱい」






「で、どうしてこうなった?」

「女は二人だけでも姦しいということ。まして恋バナとあっては姦姦しいであっても足りないくらいでしょ」

「でも、私は告白できるほどの勇気なんて……」

「それでも好きなんでしょ?」

「それでもオカルト部の活動時間プラス週6の登校時間はストーキングしてんだろ?」

「はい……」

「ここ顔赤らめるところなの!? それともおグッホォ!」

「空気読めないひとは黙っててね~。

 困ってたところを助けてもらって惚れたまではわかるけどなんでオカルト部に入部しないの? 部長なら諸手を挙げて歓迎すると思うけど」

「そ、それは~ちょっと、はず…かしくて…」

(なんでそこ乙女なんだ? 下手したら刑事罰になりかねないことまでしてるのに。わからないのは俺がおかしいから? 女じゃないからか? それとも常識がないから?)

「まあ聞きなさい灰森さん。いまの部長にとってあなたは近所のひと程度にしか思われてない。でも、部活に入ればかわいい後輩として扱ってくれるし放課後以外の課外活動に連れてってもらえる。それにね」

「それに……?」

「オカルト部は毎年夏に肝試しをやっているわ」

「っ!?」

「もう言わなくてもわかるわね? 下手な鉄砲を打つより自動照準付きライフルの近距離狙撃、末永く続くご近所関係ではなく一度きりの甘酸っぱい思い出。恋愛を成就させるのにこれ以上のものがある?」


 灰森は緑ヶ丘の両手をガッと掴んだ。熱意に溢れた眼は夏の日差しよりも輝いていた。

 次の日、オカルト部に今年初の新入部員が入部した。



 それから灰森は緑ヶ丘のことを師匠と呼び、登校時は週5で部長に会っているそうだ。


「ほとんど変わってねーじゃねーか!!」


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