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第八話:ゆきじょの問題と氷柱の問題

第八話

 いつもの光景に一人を追加した状態での朝食も終わり、月子も部活に行ってしまった。

「それで今日は二人で勉強かぁ」

「そだよー」

「…雪女の試験には実技と筆記があるから疎かに出来ないんだ」

 雪山通り出版と言うところが出している『合格間違いナシ!ゆきじょ試験突破』を二人して解いている。

「へー、こういうのあるんだ」

「どこの世界でも先人の知恵って言うのは活かされるからね」

「この本の著者はそれなりの雪女にしてきた実績がある方だ」

 人を褒めなさそうな氷柱さんまで褒めていると言う事は相当すごい雪女なのだろう。まぁ、当然ながらそう言った問題集にも興味がわくわけで聞いてみる。

「どういった問題が出るの?見ていい?」

「……」

「……」

 何と言う事だろうか。いがみ合っている(片付けも揉めて皿を割り月子に怒られていたチームワークだ)二人がお互いを見合って首を振った。

「…え、えーと陽太にも」

「…悪いが見せられないんだ」

「そっか、そうだよね」

 やはり問題があるのだろう。こちらが何かしら抵触してこの二人が雪女を名乗れなかったらそれはそれで辛いものがある。もしかしたら情報漏えいで何らかの罰も考えられる。

「あ、勘違いしてるみたいだけどそのー…あれだよ」

「あれ?」

「どっちかと言うと月子になら見せてもいいかな―っていう女の子の内容って言うか」

「乙女の秘密と言う物だ」

 氷柱さんの見た目から『乙女』なる言葉が出るとは思わなかった。まぁ、それはそれとして無理やり見て気まずくなるような内容なら見ないほうが賢明だろう。

「じゃあ僕は邪魔になるみたいだから部屋に戻ってるよ」

「ん、あー…そこで本でも読んでてよ」

 歯切れの悪い豪雪がそういって笑っている。

「此処に居たほうがいいの?」

「そりゃあ…ね、ほら、どんな影響が出るかわからないから近くに居てもらった方がこっちとしても心配しなくていいから」

 なるほど、一理あるなぁ。確かに海辺での豪雪の慌てようは珍しいものだったのでここは大人しく従って僕自身の宿題を解くことにした。

 氷柱さんの隣に座って夏休みの宿題を開始する。

「…んー」

「今度はどうしたの」

「べっつにー」

 豪雪は自身の隣の席を軽く叩いている。それがどういう意味なのか全く分からない為うるさいだけだった。

「うるさいぞ」

 氷柱さんも眉根を寄せて豪雪を睨んでいる。

「氷柱場所、代わろう」

「面倒だ」

「むー」

 結局豪雪は氷柱さんの隣の隣、つまりは僕の隣にやってきて腰掛ける。

「正面のシチュもいいけどやっぱり隣じゃない?」

「何が隣なのかよくわからないよ」

「隣のほうがちょっかい出しやすいもん」

 それから約一時間三人で黙々と筆を進める…と言うわけにもいかず、宣言通り豪雪は色々とちょっかいを出してきた。

 勉強に集中できるような状態ではなく、問題集もそんなに進める事が出来なかった僕はそろそろ出家でもして欲を捨てたほうがいいのかもしれない。

「いやー反応が最高だった」

「…」

 僕にいたずらすることによって肌の年齢が若くなったようで艶々している…反面、僕はげっそりとやつれていた。

 何があったかは御想像にお任せする。

「あのさ、豪雪」

「なぁに?」

「氷柱さんとはどういった関係?」

 氷柱さんは一生懸命問題を解いており、僕らとは違う頭の出来のようだ。

「…んー…一応、家族かな。あたしが姉で氷柱が…妹」

 ちらりと彼女の方を見て豪雪は呟くようにして言葉を出す。

「…一応、妹?」

「それ以上は氷柱に聞いてよ。もっとも、ベットの中で聞けるような関係じゃないと無理じゃあないの」

「…うち布団だ」

「あ、いや…そう言う意味じゃなくて」

 やりにくいなぁという顔をされても困る。

 この話はそうそう彼女から聞きだせそうにないと思っていた僕はその晩さっそくチャンスがやってきた事を知るのだった。


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