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第七話:受け止められない心構え

第七話

「うわっ」

「ん~…」

 朝起きると目の前に豪雪の寝顔があった。黙っていれば、つまり眠っていれば可愛いもので意地悪したくなるような可愛さである。

 しかし、豪雪相手にそういった気持ちになるのも癪だったので反対側へと寝返りを打つ。

「うおっ」

「…ぐぅ…」

 かなり緩んだ寝顔が今度はそこにあった。豪雪を凌駕する胸なんて僕の胸に当たって柔らかそうにつぶれている。

「そういえばそうだったなー…」

 昨晩、もう部屋がないと言う事で僕の部屋で寝ることになった氷柱さんはさっさと寝てしまった。

「疲れてたんだろうね」

「うっわ、優しさ差別だ。あたしにはそんなこと言ったことないじゃんっ…ぐすっ」

 酒が入っていつもより傷つきやすくなった豪雪は目に涙を浮かべている。調子に乗りやすく、傷つきやすい性格ほど厄介なものはないだろう。

「うんうん、豪雪も疲れてるって言うのはわかってるから早く寝ようか」

「やだ」

「やだじゃないよ」

 もう完全に駄々っ子をあやす感じだ。娘が出来たらこんな風にしてあやすのだろうか。

「じゃあ手を握ってよ」

「手?」

 なんで?嫌だよ、暑いから…などと言ったら本気で泣き出すだろう。初日に『一目ぼれしちゃったーえへ』という豪雪お酒入りにそう言われて『僕は…いや、ちょっと…』と言っただけでマジで泣き始めたのだ。

「えへへ~」

 一発で超ご機嫌になった豪雪はそのまま布団に入りさっさと寝息をたてはじめる。この人僕より少し年上って言ってたけどなぁ…年下みたい。

 そして気付けば僕も寝ており、氷柱さんの隣で寝れるかなーという初日は豪雪のおかげで何とかなったのである。

 とりあえず回想を中断し、起き上がる。

「いっちゃやー」

「ぬおっ」

 しかし、寝ぼけた豪雪がいきなり僕の足を掴む。よろけた僕はお約束のように氷柱さんに覆いかぶさろうとして…

「う、運命は変えられるぅっ…んぬぅっ」

 某エクソシスト映画もびっくりの人生初のUの字ブリッジを達成。今自分の身体がどうなっているのか絶対に見たくない。

 何とか体を起こし、豪雪の手を外そうと四苦八苦。

「くそ、ちょっと豪雪起きてよっ」

「んーっ」

「うわあああああっ」

 唇を突き出して襲いかかってきた豪雪を偶然としか言えないタイミングで避ける。豪雪の事を考えていたらきっと受け止めていたであろう渾身の一撃は僕を逸れて氷柱さんへ。

「んーっ、ちゅーっ」

「むむむ……」

「危なかった…」

 色々と。

 ともかく、氷柱さんには手を合わせておいて目に毒の光景からさっさと逃げ出す。

「あ、おはようお兄ちゃん」

「おはよう月子」

 二階の自室からどたんばたんと言う音が聞こえてくる。

「…どうかしたの?」

「さぁ?喧嘩じゃないのかな」

 きっと目が覚めた氷柱さんは大変な物を目にした事だろう。そして寝ぼけた豪雪を蹴っ飛ばしたに違いない。

「……おはよぅ…」

「…おはよう」

 お互いげっそりとやつれた顔で降りてきた。

「陽太酷くない?ちゃんと朝起こしてよー」

 右頬に赤い紅葉を作った豪雪が不満そうにアヒル口。

「…ご、豪雪がよく眠ってたから起こさないでいたんだけど……まずかったのかな」

「今日に限ってはねっ」

 そういって氷柱さんを睨みつける。

「全く、酷い目にあった」

 氷柱さんもそれだけいって朝食の席に着く。敢えて何があったのかは聞かないでおいた。

「何かあったの?」

 しかし、月子が興味を持ったようで聞いてしまった。心の中であちゃーと言っておいた。

「…豪雪に純潔を奪われた」

「えっ、豪ちゃん…」

 そっちの趣味だったのっという顔をしている。

「ち、違うってばっ」

「ま、まぁ、愛の形は人それぞれだと僕は思う…よ」

「ち、違うっ。本当に違うのっ」

 朝から険悪なムードにならないよりはマシだったのかも知れない。でも、素割が悪かったのは事実である。


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