第五話:仲を取り持つ存在
第五話
人気の少ないところで先ほどから氷の礫の応酬が続いている。着弾した礫は信じられない事に八方に飛び散ると言う炸裂付きだったりしてかなり怖い。
「くっ…」
応酬と言っても圧倒的に不利なのは助けた金髪の雪女さんだった。仕掛けても相手(間違いなく豪雪)の力に圧倒されて破片でダメージを負っている。
岩場に隠れながらの戦いも豪雪が徐々に近づいてきている為にこちら側の敗北での終わりが近いようだ。
「くそ…こうなったら仕方がない」
頬に横一閃走る赤い線を見ていた僕は突然首を掴まれて目を白黒させる。てっきりお前だけでも逃げろと言って来るのかと身構える。
「な、何…」
「これを飲みこめ」
そうして出されたのは四角い氷だった。先ほど形成させたのだろう、冷気を漂わせる靄のようなものが確認できる。こんな物直接食えるわけがない。
「む、無理っ」
「ええいっ手間のかかる…」
彼女はそういうと自身の口に氷を頬張り、幾度か租借。その後僕の口を塞いだのだった。
「んがっ」
口の中が北極か南極にでも連れて行かれたかと思った。
「んぷっ…よし、いいぞ」
「ひゃ、ひゃむい…」
唇は真っ青だっただろう。いや、紫に違いない。唇の感触なんて覚えてないし、正直死ぬかと思った。
そして再び始まる氷の応酬、先ほどと違って力を出し始めた金髪さんは豪雪に負けない礫を飛ばしている。
金髪さんとの応酬が再び始まり五分が経った。
「でりゃーっ」
豪雪はそんな応酬が嫌になったようで四角い氷を押しながらこっちへやってくる。
「氷柱ぁっ」
きっと鬼がいたらこんな顔をしていただろう。皮膚のいたる所に赤い線を引っ張りながら彼女は突っ込んできたのだ。奇跡的に水着の紐が切れていないのは運が言いだけなのだろうか。
「やはり貴様か。豪雪、お前の馬鹿力は相変わらず汚いな」
「はっ、非力なあんたに言われたくない」
「言っているがいいさ。今はお前と同等の力を手に入れている」
そして僕を見る氷柱と呼ばれた雪女さん。
「お前が襲って来なければこいつも平和な日々を送れていたと言うのにな。残念だ」
「え、よ、陽太?」
豪雪がまるで妖怪でも見るような目で僕を見ていた。
「い、いやー、この人が倒れてたから介抱したらこうなっちゃった」
出来るだけおちゃらけた風に言ってみるも、豪雪は顔を真っ青にして…普段から真っ青と言っていいほど白いが…僕の肩を掴んで揺さぶり始めた。
「だ、大丈夫なの?身体は?苦しいところとかない?」
「ちょ、ちょっと寒いだけであとは全然大丈夫だよ…急にどうしたのさ」
僕の問いには答えず、豪雪は氷柱に近づいた。
「どうした」
「このっ、馬鹿っ」
豪雪は氷柱さんの頬を思いっきり張ったのだった。きっと修羅場でもないと見れないだろう。
「陽太はあたしの相棒なのっ」
「知るかっ、お前が仕掛けてきたから悪いんだ」
「言ってもわからないようねぇ」
「お前が馬鹿だからだろう」
再び剣呑な雰囲気となったので、手をパンパンとたたく。
「はい、ちゅうもーく。何で豪雪がそんなに怒っているのか説明してよ」
「…わかった」
豪雪は僕の目の前に座るとこちらにも座るよう促した。氷柱さんは近くで立ったままバツの悪そうな顔をしている。
「雪女になるにあたって、人間の相棒がいれば能力が増します」
「なるほど…納得いかないけれど僕は豪雪の相棒だと?」
「その通り…相棒にするにあたって相手に体液を口にしてもらう必要があります」
珍しく恥ずかしそうにそう言う豪雪。
「は?」
「…恥ずかしい事を何度も言わせないでよっ」
肩をばしばし叩かれながらふと、頭にかき氷が浮かんだ。
「あんなに簡単な事で相棒にされたと…」
「んもぉ、そんなわけないでしょ」
「そ、そうだよね」
「あれすんごく大変なんだから。一定の力量、力の制御しておかないと弱ければ無効、力が強すぎれば相棒が内側から凍っちゃうんだから」
「はぁっ?凍るっ?」
豪雪ほどの力量の持ち主が本気出して失敗してたら僕、どうなってたんだろうか。かき氷食べて凍るとか洒落でも笑えない。
「ともかく、話を進めるとそう言うわけで陽太はあたしの相棒になったの」
雪女の一生モノなんだよって意味深に言わないでほしい。
「この馬鹿氷柱は陽太に同じような事したでしょ」
「同じようなこと…そう言えば氷食べさせられたかも」
口移しで…なんては言えなかった。
「あーもうっ、やっぱりだ。陽太、見てて」
それだけ言うと立ち上がり、右手を天にかざす。たったそれだけで馬鹿みたいに大きな氷塊が豪雪の右手に現れる。
「氷柱、あんたも」
「…仕方ない」
左手を同じようにかざすとこちらも同サイズの物が出来上がる。心臓を何かに掴まれたような気さえしつつそれを見比べる。
「遜色ないけどこれがどうかしたの?」
「…あたしは陽太と繋がってないとここまで綺麗に出来ない」
「私はこの馬鹿と違って大きな物は作らない主義だ」
「作れなかった、でしょ」
「ふんっ」
「つまり…どういうこと?」
わかっただろうか?僕にはわからなかったのでさらなる情報を要求したいと思う。
「上書きとか両方無効にならず、成立している…もしくは人間の身体が耐えられなくて今頃陽太は氷の像になってたと思う」
「それが成立している…いわば二股か。初対面の私に二股か、やってくれるじゃないか」
「あ、いや、初対面は誤解です。二股も誤解ですけど…えーと、実は以前会ってますよ」
林道で倒れていた事を説明すると相手の目がスッと細められる。
「…わざわざ私を助けてくれていたのか」
「あ、あれだけ雪女に会うといけないって言ってたのにっ」
「ご、ごめん。だって倒れてたんだもん」
それでこれからどうなるのだろう。さざ波を聞きながら豪雪の方へと顔を向けると実に難しそうな事を考えているようだった。
五話目と言う事であとがきです。あとがきあると次の話読むとき超面倒なんですけどーっと以前言われたこともあって出来るだけないようにしてるんですけどね。いや、これは仕方がない。出来るだけ短くまとめるために話を端折っていますが実はここまで来るだけに予定では十話程度でした。幾度かの豪雪と氷柱の邂逅、つっけんどんながらも豪雪とのふれあい…何より豪雪との出会いも端折ってますからね。でも終わりは端折らないよう注意したいと思います。今回で半分、いや、三分の一…たぶん四分の一かなと考えていますので読んでいる方は今後もよろしくお願いいたします。読者が増えれば作者のやる気もうなぎ昇りってやつですよ。しかし、そうなるにはやはり文才が必要になるわけでこれはお店には売っていないわけですね。今後もがんばりますのでよろしくお願いします。




