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第三話:金のつらら

第三話

 豪雪の体を散々もてあそんだと言う罪でかき氷を買いに行かされることになった。かき氷なんざ自分で出せるだろうに…くそぅ。

 まぁ、今更言っても始まらない。自転車にまたがって坂道下れば目的地のスーパー早高につけば用事なんて一発である。このクソ暑い夏の日には当然冷房の効いた店内、そして売れると予測されるアイス類は沢山仕入れられていたりしてこっちに居たほうが涼めそうだ

 しかし、約束は守らねばならない為にさっさと品を手にとり籠に放り込む。

「よしよし…っと、ついでに豪雪用にこれも買っておくか」

 目的の物を買って帰りは直接帰るのではなく日陰のルートを通って帰ることにする。林道を通る為に三分ほど遅くなるが、木々の効果なのかそちらの方がかなり涼しい。

 林道を通ること数分、もう少しで家に続く通りに出るはずだった。

「…熱中症かな」

 人が倒れていた。金髪である。そして真白な着物を着ている女性だ。

「大丈夫ですか」

「はぁ…はぁ…」

 呼吸は荒く、彼女の体からは点滅を繰り返す白い何かが抜け出ている。それが何なのか、豪雪で一度見たことあった僕はピンときた。

 持っていたかき氷を相手の頭の上からぶっかけたり着物の中に放り込む。そして林道近くを流れている川からスーパーの袋に水を入れて辺り一面にぶちまけることにした。

 温度を下げ、雪女に過ごしやすい空間にしてやればいいのだ。

「……ふぅ」

 しかし、これもあくまで応急措置。一刻も早く冷たいところに連れて行かねば消滅しかねない。

「背負いますよ」

「……はぁ…はぁ…」

 首にかかる息は冷たい…それも一瞬だけ。すぐに熱くなって変に耳に吹きかかるので気持ちが悪い。

 ここから最も近いのは図書館。人一人を背負って歩いても二分程度で着く。周りの人が信じてくれるかは分からないけれど、見た目は人なんだから熱中症で倒れたと言えばクーラー前に座らせてくれるだろう。

 雪女を一人背負ってやってきた図書館。夏休みと言う事もあってそれなりに人はいたけれど、尋常じゃない僕の顔を見てかクーラーが良く当たる場所をどけてくれた。

「ふー…」

 ソファーに寝かせて様子をうかがう。

「…すぅ…」

「大丈夫そうだ」

 先ほどのように白い何かが身体から出てきて消えることもなく、顔色も真っ白になりつつあるから大丈夫……だよね。

 このまま放置して帰ってしまうのもどうかと思えるけど、救急車は呼ばないほうがいいだろうしみているだけじゃ駄目だろう。念のためにおいしい水でも自販機で買ってきてみるとしよう。

 二本買ってきたペットボトルに入った水を一本は近くに置いてもう一本は相手の額に乗せてみる。

「うんうん、よさそうだ」

 近くに置いたペットボトルは徐々に凍り始めており、額に置いたペットボトルには影響がない。力が弱っていたりすると両方とも歪に凍り始める為安定してきたという事なんだろう。

「そういえば豪雪から言われてた事があったなぁ」

 雪女の修行に来ているのは当然一人ではない、決して多くはないが…他の雪女と思われる人物にあったら逃げる事と言われている。

「…命にかかわるから絶対に約束してって言われたもんなぁ」

 顔を見られちゃいけないと言われている。嘘をついているようには見えなかったから本当の事なのだろう。そもそも、雪女の中には人間を嫌っている人もいるようだし、まぁ、この人は普通に人間の居るところに出てきているから大丈夫だろうけど念には念を押して逃げておいた方がよさそうだ。

 最後に相手のおでこに熱を取るシートを貼って完了である。険しい表情に熊の模様がなんともミスマッチだった。

 かき氷は彼女の着物の中で変な液体になってしまっている為に(今では色つきの氷になっているだろうが)もう一度買いなおす羽目になった。

「ぱしりもまともに出来んのかっあたしが直々に教えてやるわっ」

「さすが豪ちゃんっ下っ端が染み付いてるね」

「うぐっ…」

 そんなやり取りがあったのはそれから数十分後である。


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